【雑誌】『デジタル・ミュージック・マガジン』(リットーミュージック発行)[1985~86年]
2018/11/26
今回ご紹介するのは、『デジタル・ミュージック・マガジン【DIGITAL MUSIC MAGAZINE】』というムック形式の雑誌です。発行はキーボード・マガジンでおなじみのリットーミュージックであり、本雑誌もキーボード・マガジンの別冊として不定期に刊行されたものです。1985~86年にかけて計4冊(NO.1~NO.4)発行されました。
まあこの雑誌(ムック)はマニアにとっては有名?なので知っている人もいるかもしれません。VOL.1の表紙は向谷実氏(当時CASIOPEA)が飾っており、その時のキャッチコピーは『キーボーディストのためのMIDI活用法フル・パッケージ』と銘打たれていました。
内容は?
当時の最新鋭MIDI機器の使いこなし方について詳細に記述されています。VOL.1ではYAMAHAのDX7、RolandのJX-8P、JUNO-106、KORGのPOLY-800、CASIOのCZ-1000などですね。
これら機材を実際に手に入れた人にとっては、月刊キーボード・マガジンの情報とは別に「機種ごとの詳細な使いこなしノウハウ」が補えるので、より使い方の理解を深めることができたかと思います。
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(当時の)月刊キーボード・マガジンとの違いは?
本誌VOL.1では『キーボーディストのための…』というコピー通り、あくまでも(MIDI対応の)キーボード/シンセサイザーを主体とした内容になっています。キーボード・マガジンでも機材に関する記事が書かれていますが、この機材の部分だけをクローズアップしたようなイメージですね。そのためスコアはありませんしインタビュー記事もごくわずかです。
その他、当時の月刊キーボード・マガジンとは違って本誌の製本は背表紙があるタイプですし、価格も1,800円(VOL.4の場合)と月刊誌よりも倍以上の定価となっています。
VOL.4の印象
さて僕はVOL.4(小室哲哉氏表紙)が今手元にある状態なのですが、さらに内容に若干の変化が見られますね。誌名が『DMM(DIGITAL MUSIC MAGAZINE)』と略されていますし、キャッチコピーも『デジタル時代のクリエイティブ・ミュージックを追求するニュー・マガジン』となっています。そう、表紙から「キーボード」「キーボーディスト」というワードが消え、MIDIによるデジタルなミュージックのクリエーションというコンセプトにシフトしている印象を受けます。
実際VOL.4は、発行時(1986年末頃)の流行機種であるDX7II FDなどのシンセ記事がトップから始まるものの、「コンピューター・ミュージック用ソフト」や「MIDIギター(ギターシンセ)」、「MIDIドラム(エレドラ)」などについての記事にも結構なページ数が割かれています。
個人的つぶやき
リットーミュージックからの不定期刊行のムックということで、個人的には以前本ブログでも紹介した「キーボード・マガジン・プロフェッショナル」と近い印象を持ちました。ただしデジタル・ミュージック・マガジンでは、機材(楽器)の垣根を越えて “デジタル時代のMIDI機材をトータルに使いこなしたい人向け”という性格がより強くなっている感じです。
実際1986年当時は、MSX2など比較的手に入れやすいパソコンで気軽に作曲の世界に入ることもできましたし、PC-9801用の「ダイナウェア PRELUDE」やマッキントッシュ用の「Performer」など本格的なシーケンス・ソフトも台頭してきていました。実際本誌でもPCソフト向け記事がいくつか紹介されていますね。
というわけで本誌デジタル・ミュージック・マガジンは、個人がパソコンを中心としたデジタル音楽制作を気軽に行えるようになるという新時代を見据えた、言わば「DTM系雑誌の源流」と言っていいのかもしれません。