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ピアノ 音楽

ピアノ演奏に88鍵は必須なのか? ~73鍵でも弾ける曲がどれだけあるかを本気で検証

2019/03/10

 

 

 ピアノという楽器は、1700年前後にイタリアのクリストフォリさんによって発明されたとされていて、その頃は54鍵しかなかったそうです。現在のような88鍵に定着したのは1890年代と言われています(※他説あり)
 
 関連記事:「イタリア・ローマで世界最古のピアノと対面す ~ローマ楽器博物館
 
 
 アコースティックピアノとは別に、近年のいわゆる「電子ピアノ」が出回ってきたのは1980年代頃であり、「76鍵や73鍵」といったショートスケールの家庭用電子ピアノも発売されてきました。88鍵と比べたら、当然横幅はコンパクトであり軽量というメリットがありますよね。さらに昨今では、鍵盤タッチも88鍵のそれと遜色がない、リアルなウェイトを備えたモデルも数多く販売されています。
 
 
 そこで僕がふと思ったのが、「市販のピアノ向け雑誌に掲載されている楽譜は、全て88鍵のピアノじゃないと弾けない(→鍵盤が足りない)のだろうか?」という疑問。体感上、曲によっては「73鍵でも十分足りるものもあるのではないか?」と前々から感じていたので、ちょっと調べてみることにしました。おまけですが、61鍵も集計してみましたよ。

 

 ※今回集計対象にした雑誌の(ごく)一部
 
 
 
 なお雑誌から集計しようと思ったのは、幅広いジャンル(クラシック、ジャズ、ロック、ポップス、童謡など)から、現代の人向けの人気の高い曲がまんべんなく収録されているのではないか?という個人的推測からです。あしからず。
 
 
 

本検証における鍵域の定義

 73鍵ピアノの鍵域は、多くの機種で採用されている「E1~E7」で検証。以下画像のような鍵盤のイメージです(写真のnord electro HPシリーズは一例)。なお当然、キー・トランスポーズやオクターブ・シフトなどの電子的機能は使わないものとします。
 


 
 
 

本検証の方法

 以下雑誌に掲載されている楽譜において、「88鍵必須」「73鍵でも弾ける」「さらに61鍵でも弾ける」かどうか、印刷されている譜面の鍵域にて判断。

●『月刊ピアノ』 2015年1月号~2016年12月号 までの全24冊・326曲
●『キーボードマガジン』 2007年1月号~2016年Autumn号 までの全41冊・98曲

 総対象曲数:326+98=424曲

 
 
 月刊ピアノは2016年末からさかのぼって過去2年分、キーボードマガジンは同じく2016年末から過去10年分を対象としました。なおキーボードマガジンに収録されている楽譜は様々なものがあるので、一応以下のように線引きしました。
 
 
集計対象にしたもの
・ピアノスコアという形態をとっているもの全て
・バンドスコアでは、明確にピアノパートが記載されているもの(※エレピも含める)

集計対象から外したもの
・バンドスコアで、ピアノ(エレピ)パートが全く入っていないもの
・打ち込み中心の楽曲であり、ピアノ音色が入っている部分もあるがごく部分的に使われているもの(例:TM NETWORKの一部の楽曲)

 

 

 

検証結果

     
88鍵必須  57/424曲 13.4%
73鍵でも弾ける 367曲/424曲 86.6%
     
 さらに61鍵でも弾ける  194曲/424曲 45.8%

(独自調べ)

 

 

個人的所感

 「88鍵必須」の曲がわずか13.4%、73鍵でも弾ける曲が実に86.6%にのぼるという結果になりました。さらに61鍵でも約半分の曲が弾けるという結果に(まあ61鍵はほぼおまけですが。。)
 
 
 逆に88鍵が必須となる曲は、クラシック曲(の割と本格的なアレンジ)の比率が高かったですね。ロックやポップス曲では、曲のシメとなる最後の一音で「ゴーン」と最低音域を鳴らすというパターンが多く、必ずしもその一音がないと曲が成立しないという感じでもないと思いました。なので、一部の高難度なクラシック/ジャズ以外は、73鍵でも割とどうにでもなるのではないか? という個人的所感です。
 
 
 日本人には、「ピアノ・タッチなら絶対88鍵!」という先入観に取りつかれている人が多いように感じます。今回の検証結果を踏まえ、ピアノ・タッチ73鍵の演奏性の高さ・取り扱いやすさ(小ささ/軽さ)は、もっと一般に認識されていいのかもと感じました。
 
 
 

補足

 今回の全対象曲のうち「連弾曲」は24曲含まれているのですが、73鍵でも弾けるものは14曲ありました。若干窮屈になりそうですが(笑)、73鍵の連弾でもいけなくはないという感じでしょうか。
 
 
 ちなみに各ジャンルの割合としては、7割がポップス/ロック系、残りがクラシック、ジャズ、童謡などといった感じでした。あくまで結果としてですが、若干J-POPびいきの比率になってしまった感は否めないですね。。
 
 
 もちろんクラシック曲だけを集めた音大生(プロ)向けの楽譜だけを対象にすれば、73鍵で弾ける曲の比率はぐっと下がったことでしょう。今回は雑誌だけに絞ったので、あくまで参考までにということで。。

 

 

 

76鍵についての補足

 88鍵よりも1ランク鍵盤数の少ない電子ピアノといえば、以前は「76鍵」が圧倒的に多かったでした。ただし昨今では、NordElectro HPシリーズやKORG SV-1などに代表される「73鍵」も少なからず普及しています。家庭向けモデルでも、コルグなどで73鍵を採用するモデルが登場しています。そういえばエレクトリックピアノのRhodesも(70鍵台は)「73鍵」ですよね。
 
 
 というわけで、もし「76鍵」で検証したならば多少の違いが出てくるかもしれないことをご承知おきして頂きつつ、参考にしていただければ幸いに思います。ちなみに76鍵の場合は、一般的に高音の3音が追加されます(つまり E1~E7 → E1~G7
 
 

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 本格ピアノタッチ鍵盤を採用しているわけではありませんが、2万円台から手に入るお手頃感が魅力のYAMAHA ピアジェーロ NP-32B。こちらは76鍵モデルです。

 

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 73鍵ステージピアノ(デジタルピアノ)の代表格であるKORG SV-1 73。ブラックの他にもメタリック・レッドのカラーもスタンバイ。

 

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 決して安価ではありませんがバンド・キーボーディストの所有率が高いNord Electroの、「HP(ハンマーポータブル)」73鍵シリーズの現行モデル。ピアノのみならず、エレピ、オルガンの音も使えます。

 

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 2019年初頭に発売されたヤマハデジタルピアノ・CPシリーズの現行機種(73鍵)。88鍵バージョンのCP88も同時発売されました。

 

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