【Vol.320】KORG SG-Rack ~デジタルピアノSG proXが1Uラックになったよ[1997年]
2018/11/28
今回は、コルグが1997年に発売した「SG-Rack」という機種を紹介してみたいと思います。当時の定価は75,000円。ひとことで言うと同社のステージピアノ「SG proX」の1U音源モジュール版です。中身(音源仕様)はSG proXとほぼ同じと言ってよいです。
SG proXといえば本ブログの立ち上げ当初に記事をアップしているのですが、単なる個人的回顧録的な内容に終始してしまっているので(汗)、今回は数字(→スペック)も織り交ぜて話を進めてみたいと思います。
関連記事:「KORG SGproX ~イコライザー付ステージ・ピアノ[1997年頃]」
概要
SG proXのサウンドを1Uラックに収めた音源モジュール。SG proXと同様、大容量波形メモリーによる高品質なサウンドを実現し、ピアノ音源を中心に全64種のサウンド・プログラムを内蔵。リバーブやコーラスを始めとする2系統(Max12種)のエフェクターも搭載していました。
SG proXとの互換性も確保しており、それぞれの機種で作成した音色をMIDIを介して再現可能となっています。
演奏モードについて
本機には大きく分けて2つの演奏モードがあります。
・PROGRAMモード
・PERFORMANCEモード
PROGRAMモードは1つのプログラム(=音色)を単体で鳴らすモードであり、PERFORMANCEモードは2つのプログラムを組み合わせて鳴らすモードのこと。プログラムおよびパフォーマンスは、それぞれバンクA、B、C、Dに16個ずつ、合計64個搭載されています。
プログラム/パフォーマンス・モード共に、音の立ち上がりや音色のニュアンスを変える「エディット・モード」を装備。またパフォーマンス・モードではレイヤー/スプリット等により、2音色を自在に重ねることができます。同時発音数も64音と、80年代のSG-1D(同時発音数12)と比べると大幅に進化を遂げたといったところ。
以下は一例として、PROGRAMのAバンクに収められている全音色です。
A01 Concert
A02 Studio
A03 DancePiano
A04 Dyna-Stage
A05 Wurly EP
A06 FM EP 1
A07 Piano & EP
A08 Funkamatic
A09 SGX Organ
A10 R&B Organ
A11 Clav
A12 Vibraphone
A13 TheStrings
A14 WhisperVox
A15 SynthFlute
A16 Acoustic
「バンクAはピアノ音色のみ」といった感じで固定されているわけではなく、各バンクごとに様々な音色がまんべんなく収められているといった感じですね。番号の若い順からピアノ→エレピ→オルガン→その他 みたいな感じの並びになっていて、これは他バンクでも大体同じです。
まあそうやって考えると、SGproX(鍵盤付)および本機を「デジタルピアノ/ピアノ音源機」と言うには、生ピアノの比重が若干低いといった個人的印象ですね。特にSG-Rackでは(当たり前だけど)鍵盤が付いていないため、ほぼ同時期に発売されデザインも近かった「TR-Rack」(※Trinityのラック版)の実質的な廉価版と捉えられる向きもあったかと思います。
こちらはTR-Rack(発売時の定価118,000円)。カラーこそ異なりますがパネルデザインはよく似ています。
内蔵エフェクトについて
直列に接続されている「エフェクト1(FX1)」と「エフェクト2(FX2)」の2系統で構成。エフェクト1では12種類、エフェクト2では11種類の中から選ぶことが可能です。
ピアノ/エレピ系に有効なリバーブ、コーラスといった定番の空間系はもちろん、オーバードライブ、フェイザー、ロータリースピーカー、オートパン、ワウなども備えていますね。
KORG SGproX, SG-Rack/(株)コルグ 雑誌広告より画像引用
SG-Rackならではの装備
パネル右には「A4」と書かれたボタンが配されていて、これはSGproXでは見られない操作子です。これは何かというと、MIDIキーボードやシーケンサーを本機に接続しなくても「A4(→88鍵MIDIキーボードのほぼ中央に位置する “ラ(A)”)」の音を鳴らしてくれるというもの。
MIDI的に補足すると、ノート・ナンバー69(=A4)の音を、ベロシティ127のNote On情報を受信した時と同じように、その時選択しているプログラムなりパフォーマンスの音色で発音するというもの。これはSG-Rack単品での発音チェックが簡単に行えるといった感じですね。
なおラック化されたことにより、スライダー類は場所を取らないツマミ型に変更されています。また(5バンドの)グラフィック・イコライザーも省略されました。これは致し方ないところですが、文字の大きな見やすいディスプレイがSGproXから継承されている点は評価したいですね。
個人的つぶやき
SG proXは僕も所有していてある程度音色キャラクターも把握しているつもりなのですが、やっぱりバンド(→特にハードめなロック)に混ざった時によく聴こえてくるといった印象ですね(特にピアノ音色)。実際僕もB'zコピバンで多用させて頂きました。
伝統の “KORG SGピアノ”をこの低価格・コンパクトさで持ち運べるというのは当時としては驚きでしたし、他に自分好みのマスター・キーボード(MIDIピアノ鍵盤)を持っている人にとっては、本機を気軽に足してピアノ音色を中心に強化が図れたといったところですね。
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仕様
■音源方式:aiスクエア・シンセシス
■波形メモリー:24MB(PCM)
■最大同時発音数:64音
■内蔵音色
プログラム・メモリー:64(A01~D16)
パフォーマンス・メモリー:64(A01~D16)
■内蔵エフェクト:デジタル・マルチエフェクト×2(エフェクト1→12種、エフェクト2→11種)
■外形寸法:482(W)×45(H)×264(D)mm
■重量:2.8kg
■発売当時の価格:75,000円(税別)
■発売開始年:1997年