【Vol.312】NOVATION BassStation Rack ~1Uになったベーステ[1995年]
2018/11/28
今回ご紹介する一台はNOVATION(ノベーション)の「BassStation Rack」というシンセ・ベース音源モジュールです。日本での発売は1995年、定価は79,800円(税別)でした。うーん、、これも個人的には非常に懐かしい機種ですね。。
本機リリースの前年にはキーボード版の「BassStation」というものが出ていて、それの中身をコンパクトな1Uサイズに収めたモジュール版といったところ。キーボード版は以前本ブログでも記事にさせて頂きました。
関連記事:「NOVATION BassStation (Keyboard) ~ベース・シンセサイザー[1994年]」
基本的な構造は「BassStation」を踏襲した感じになっているので、じゃあそちらの記事を読んでくださいってことなのですが、それだと余りに手抜き(汗)なので、Rack版だけに見られる仕様なんかを中心に書き進めてみたいと思います。
概要
当時のRoland TB-303ブームを意識した初代BassStationの基本仕様を継承しつつ、さらに発展させた機能を追加し、マーケットからの要求(→ラックマウント)にも応えた形となったベース音源モジュール。同時発音数は1(モノフォニック)
仕様
構成は2オシレーター、1フィルター、2エンベロープ、LFO。これらはMIDIで制御可能です。
オシレーター1/2の波形はどちらも矩形波(パルス波)、ノコギリ波から選択可能。うーん、これは若干少ない印象を受けなくもないですが、ベース専用だし効きの良い2種類のフィルターも内蔵されているし、まあ何とかなるかもと思います。
そのフィルター・セクションですが、カットオフ、レゾナンス、モジュレーション・デプス(→LFOとエンベロープ)が設定可能。12dB/octのフィルター2基が直列となっており、12dB/octと24dB/octが選択可能になっています。
NOVATION BassStation Rack, BassStation/(有)セレクト・インターナショナル 雑誌広告より画像引用
ラックバージョンでの改良点
音色プログラム数の増加
キーボードバージョンではわずか7だった音色プログラムが、ラックバージョンでは100に拡張されています。
DAコンバーターの改良
ラック版の方はより正確かつ高速なDAコンバーター・システムを採用しているとのこと。これによりオーディオ・パスのコントロール電圧が安定し、必要なアナログ値がより早く得られるようになっています。サウンドとしては、ラック版の方がボリュームやフィルターのエンベロープ(→アタック・タイム)が速く、立ち上がりの力強いパンチのある出音につながるといったところでしょうか。
ざっくり補足すると、キーボード/ラック版はどちらもアナログのオーディオ・パスを使用しているのですが、そのパスのコントロールにはデジタルのDAコンバーター(デジ→アナ変換)回路が使われているのであって、ラック版ではそのDAコンバーターの処理能力が上がったということなのですね。
オシレーター・シンク対応
オシレーター1から2へシンク(同期)を掛けることができるようになりました。元々キーボード版においても、その「分厚い」「粘っこい」ベース・サウンドには定評があったのですが(※TB-303に近いかはさておき)、それにさらに攻撃的な音色変化を施せるといった感じです。
CV/GATE端子装備
本機リアパネルには、MIDI IN/OUT端子とは別に「CV IN」「GATE IN」/「CV OUT」「GATE OUT」端子を備えており、本機だけでMIDI/CVコンバーターとして機能させることもできました。
これにより、古いアナログシンセからBass Stationをコントロールしたり、Bass Stationを通じてアナログシンセをMIDIでコントロールすることができます。 これはラック版ならではの装備でありメリットですね。
アナログ入力端子装備
外部音源を取り込んでフィルタリングするための端子(EXTERNAL AUDIO INPUT)が装備されました。
操作性について
前述したように本機のプリセットプログラム数は多く、呼び出したプログラムを、即座にパネル上のノブにて調整(リアルタイムコントロール)するといった使い方がオーソドックスだったかと思います。
本体にはLED(7セグメント×2)も装備されており確認もしやすいのですが、ゴム製のテンキーの部分は非常に小さく(細かく)て押しにくかった記憶があります。でもまあメインでコントロール(操作)するのはノブの方だし、さほど問題ないと言えるでしょう。ちなみに全てのノブ設定はMIDI送信/受信が可能となっています。
Super BassStationについて
1997年頃に発売された “BassStationシリーズ”の3代目。名前からは「Rack」の文字が取れていますが、全体的なデザインはまんまBassStation Rackを踏襲しているといった感じです(一部色使いは変更されている)。定価は98,000円でした。
2メイン・オシレーター仕様という点では前2モデルと同じくなのですが、さらに低音部を補強するサブ・オシレーターやホワイトノイズが追加。これら増設された音源部をまとめるべくミキサー・セクションも刷新されていますね。
他にもプログラム数が200に倍増してたり、コーラス/ディストーションが追加されたり、クロック・アウト端子が設置されたりと、より高度な音色作りにも対応できるよう様々なバージョンアップが図られています。
つぶやき
当時勤務していた楽器店にて、本機とMAB-303を並べて聴き比べをした記憶はありますが、音色の印象はあまり残っていませんね。。いじっていて面白かったのはBassStation Rackの方だったと思います(あいまい)。
手弾き用途(→ライブ使用)の含みを持たせたキーボード版と異なり、このラック版では当時のアシッドなテクノ/ハウス向けのトラック作り用音源としての使用がメインだったのでしょう。個人的には鍵盤が付いている(BassStation Keyboard)方が愛着があったかなー。
関連記事(ローランドTB-303 近似コンセプト機):
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仕様(BassStation RACK)
■最大同時発音数:1音
■フィルター部:-12dB/oct、-24dB/oct選択可能、レゾナンス発振可能
■音色プログラム数:100(ファクトリープリセット60+ユーザー40)
■外形寸法:483(W)×44(H)×100(D)mm
■重量:2.0kg未満
■発売当時の価格:79,800円
■発売開始年:1995年