【Vol.293】KAWAI es1 ~全6色展開の2000年代初頭デジタル・ピアノ[2000年]
2018/11/26
今回ご紹介するキーボードは、河合楽器の「es1」というデジタル・ピアノです。発売は2000年、当時の価格は135,000円(税抜)でした。本体にスピーカーを内蔵しており買ってすぐに音を鳴らすことができます。なおスタンドは付属していません(→オプションにはある)
2000年代初頭といえば、日本国内では坂本龍一の『energy flow』(1999年)が大ヒットした余韻がまだ残っていて、各社も力を入れ電子ピアノの新製品が数多くリリースされた時期でもありました。ちょっとしたポピュラー・ピアノ・ブームのこの時代、本機es1はどのような機種として登場したのでしょう。
まずはデザイン
発売時のカラー・ラインナップは以下2種類でした。
・ブラック
・バイオレット&シルバー
ブラックは昔ながらの全身黒色といった感じであるのに対し、バイオレット&シルバーはシルバー基調(差し色的に青系のパネルが使用されている)の、当時としては斬新といえるおしゃれな外観。さらに翌2001年には以下4色のカラー・バリエーションが追加されました。
・マリンブルー&シルバー
・グリーン&シルバー
・オレンジ&シルバー
・リップ&シルバー
電子ピアノの分野でこれほどカラフルな色展開がされたのはおそらく本機が初めてだったと思います。まあはっきり言ってその頃のiMacに影響を受けまくったというのは見え見えですけどね(笑)。当時このような多様なカラー展開は様々な分野の商品でも出回っていたわけで、それが電子ピアノでも採用されたというのも必然の成り行きだったのかもしれません。
なおフロントパネルの素材は剛性の高いアルミ製となっていて、耐衝撃性に加えて質感もいいですね。安価なプラスチックと比べると若干の高級感が漂います。
鍵盤部について
ピアノ鍵盤部は同社の『アドバンスト・ハンマー・アクションII』という技術を採用。これは鍵盤の戻りにバネを一切使わず、重力と反発力により鍵盤アクションを行うというシステムらしいです。鍵盤を強く叩いた時には重く感じるなど、グランド・ピアノのタッチに近い、ピアノメーカーならではの良い作りだと思います。
あとKAWAIの鍵盤全体に言えることですが、黒鍵の手前側カドの “削り”がやや大きいのが特徴的です。角ばってなくて丸いカーブ状になっているといった感じ。個人的には、ガチガチに角ばった黒鍵よりもこちらの方が弾きやすそう(→ミス減りそう)な気がします。
ちなみに、タッチの強さによる音の大きさを調節する「タッチ・カーブ」は4種類の中から選ぶことができます。
es1/(株)河合楽器製作所 雑誌広告より画像引用
音について
ステレオ・サンプリングされた8種類の(基本)音色が用意されています。以下ご参照。
●クラシックグランド●モダンピアノ●エレクトリックピアノ●オルガン●ハープシコード●ビブラフォン●ストリングス●クワイヤ/パッド
上記音色はパネル上に独立したボタンが設置されているので、音色切替は分かりやすく行えますね。なお各音色にはそれぞれ1つずつ「Variation(バリエーション)」が用意されているので、実質的な内蔵音色数は全16音色といったところです。
“クラシックグランド”が本機における「顔」的なピアノ音色と言えるでしょう。同社のコンサート・グランドピアノEXをサンプリングしたのではないかと思われる柔らかく繊細な響きといった感じ。これはクラシック曲の演奏に合いそうですね。
(別売りの)オプション類について
以下のオプションが用意されていました(※椅子、ヘッドフォンは割愛)
固定式専用スタンド HM-1 (当時の定価:20,000円)
2本ペダル F-2r (当時の定価:6,000円)
ワイド譜面立て WMR-1 (当時の定価:5,000円)
専用スタンドはシルバー&ブラックのツートンカラーとなっていて、デザインも “逆Y形”となっていてちょっとだけ個性的です。なおペダルは本体に標準で付いてくるのですが、ソフトペダル+ダンパーペダル仕様の本格的なデザインの2本ペダルを望む人はこちら、という感じ。
そして専用のワイド譜面立て(WMR-1)は非常に実用的な作りになっていて、標準で付いてくる譜面立てよりも+約22cmもの横幅をサポートしてくれます。付属のものは “線”で譜面を支えるのですが、こちらは “(横長の)面”で支えてくれるといった感じ。素材はアクリル製でありそのため若干お高いのですが使い勝手は大幅に向上すると思います。
es1/(株)河合楽器製作所 雑誌広告より画像引用
その他の機能
レッスンに便利な2トラック仕様のレコーダー機能、鍵盤1つ押すだけで内蔵曲の演奏(鑑賞)が楽しめる「コンサート・マジック機能」などがあります。
また演奏効果的には、リバーブ、コーラスなど6種類のエフェクトを搭載していますね。LED(LCD)ディスプレイがないので若干の使いにくさは否めませんが、電子ピアノならではのメトロノーム機能やトランスポーズ(移調)機能も備えています。ヘッドフォン端子を2つ備えているところもGOODです。
つぶやき的な
老舗ピアノメーカーならではの基本的な作りの高さを押さえつつ、当時流行の多色展開をしたところなんかは、まさに時代を象徴するデジタル・ピアノといった感じですね(ちなみに前述のenergy flowも本機にデモ曲として収録されている)。
88鍵ピアノタッチとしては比較的軽量(18.3kg)であったためライブでの使用もアリだったと思います。セールス的にもよかったらしく、本機の後にも「es1 SYLPHIE」、「es2」、「es1 Perla」などの後継機が登場しました。
個人的には『ブラックはいらかなったんじゃない?』と感じなくもないです。なんかブラックだけ浮いてますよね。。別機種に見えます。
仕様
■鍵盤数:88鍵(アドバンスト・ハンマー・アクションII)
■音源:ステレオ・サンプリング音源
■最大同時発音数:32音
■プリセット:8音色×2バリエーション
■スピーカー:(12cm×8cm)×2基 ■出力:7W×2
■外形寸法:1354(W)×127(H)×312(D)mm
■重量:18.3kg
■発売当時の価格:135,000円(税抜)
■発売開始年:2000年