【Vol.288】CLAVIA Nord Electro(初代機) ~【その3】鍵盤とか見た目とかRack版とか
2018/11/26
これまで2回に分けて、CLAVIA Nord Electro(初代機)のオルガンセクションとピアノセクションについて記事にさせて頂きましたが、今回はその他の項目について言及してみたいと思います。たまたま『NordElectro 無印』とかでググって本記事に最初にたどり着いた方は、ぜひ以下記事に先に目を通して頂くことをお勧めします(笑)
関連記事:
「CLAVIA Nord Electro(初代機) ~【その1】オルガンセクションについて」
「CLAVIA Nord Electro(初代機) ~【その2】ピアノセクションについて」
今回は、上記2記事で説明しきれなかったNord Electroの鍵盤部および外観、またラック版のNord Electro Rackについてもちょっとだけ触れてみたいと思います。
名古屋市内のHARD OFF店にて撮影
鍵盤部
鍵盤は、いわゆる “シンセ鍵盤”によく見られる薄いペコペコした作りではなく、前面(手前)が角ばったオルガンのウォーターフォール鍵盤っぽい構造となっています(61/73鍵共)。なお、以前本ブログでも紹介したFATAR製の鍵盤を採用していますね。
関連記事:「FATAR(ファタール) ~信頼の鍵盤メーカー」
本機の鍵盤タッチはピアノタッチという感じではなく、「セミ・ウェイテッド鍵盤」というのがまさにしっくりくる感じなのですが、意外とピアノ(エレピ)音色でも十分な感触とレスポンスを感じることができます。いわゆるピアノ・アクションを搭載した本格的デジタル・ピアノと比べると全体的に軽めの作りとなっていますが、ピアノ音色(特にエレピ系)で弾いても案外と違和感はないですね。ベロシティ(→鍵盤を押す速さ)の違いによる音色の変化が細かく追従しているといった印象です。
開発者(CLAVIA DMIの創業者)であるハンス・ノーデリウス氏曰く、オルガン/ピアノを両方弾いた際にどちらでも理想的な演奏感を実現するために試行錯誤を繰り返し、いわば「中間」といったこのような鍵盤部が採用となったそうですね。
前記事の冒頭で述べたように、本機はオルガン音色とピアノ音色を高い次元で再現した「二刀流」のような仕様なのですが、鍵盤部に関しては若干オルガン寄りといった個人的印象です。
外観
サイドパネルには、スウェーデンで採れるBjork(ビョーク)という木材を採用。アイスランドの世界的女性シンガーと同名ですね。これをレッド・チェリーでフィニッシュし、本体パネルの色と合わせています。
初代および2代目(→Electro2)はこのサイドパネルが丸みを帯びた形になっており、やや角ばっている現行のモデル(5シリーズ)とは見た目が異なります。ただし実際のところ立てかけた時に安定性がなくなるので、ライブ・キーボードディストが使用する前提と考えたらやや不親切な感じ。とはいえ、ライブホールで遠目からでも分かるので『electroの初期型だ!』ということをすぐに認識することができます(笑)
本体重量について
Sixty One(61鍵モデル)は7.8kg、Seventy Three(73鍵モデル)は9.4kgと、ライブ時でも無理なく運べる軽量ボディ。
うーむ。。個人的に思うに、ライブ・キーボーディストにとって持ち運ぶ鍵盤の重さというのは、音の良さや操作性の良さ、あるいはタッチの良さなどと並んで非常に重要な要素なんですよ! ということで、この軽さも本機の良さを語る上で欠かせない要素の一つと言えるでしょう。
Nord Electro Rackについて
2002年1月のNAMM Winter Showで初お目見えしたNord Electroのラック版。4Uサイズでありもちろんラックマウントも可能ですが、本体には傾斜が設けられており、テーブルに置いた際に操作しやすい角度になります。
外観はキーボード版Electroのコントローラー部分だけを切り取っただけといった印象ですね。。横幅も割とあります。4Uということもありさほどコンパクト性を強調するほどではないと思うのですが、もちろん鍵盤がない分可搬性に優れていますし、キーボード版と違和感なく同じ操作ができるのはよいことだと思います。
まとめ的な
往年のアナログシンセをアナログモデリング技術で90年代半ばに蘇らせた同社の「nordlead」と同様、本機の登場はいわゆる本格派の “プレイヤー指向”のキーボーディストにとって大きな衝撃でした。もちろん当時のオールインワン・デジタルシンセでも『オルガン音色もピアノ音色も鳴らせる(+その他の様々な音色も)』というのは当たり前でしたが、両方を高いレベルで実現していた音源はほぼ皆無でした。特に本機のオルガン・セクションの出来(ロータリー・シミュレーター含む)は、当時のデジタルのオルガン専用機すらも脅かすレベルだったと言えるでしょう。しかもこの軽さ!
当時はパソコンの進化と共にソフトシンセの技術も大きく発展していた時代であり、ハードウェア・キーボードならではの領域もソフトシンセに押し込まれつつありました。そんな時、“人間の手で演奏される”ことを前提とした本機の登場は、ハードウェア・キーボードならではの存在感をアピールするのに一役買ったと思います。
完全につぶやき
この頃のElectro(現行のElectro 5でもそうだけど)は、国産の一般的なキーボードと比べると「やや高価」な設定ということもあり、認知度もさほど高くなかったことから、まだまだ一般のアマチュア・キーボーディストで手に入れている人は少ない時代でした。今だと学生キーボーディストだろうがElectroの所有率は結構高いと思うのですが(個人的見解)、皆さん若いのにお金持ってるんですね。。
仕様
■鍵盤:61鍵/73鍵(両機ともセミウェイテッド/ベロシティ・シンシティブ対応)
■オルガンセクション:
ドローバー数:9(8段階のLEDから構成されるバー・グラフ・タイプ)
パーカッション:2nd/3rd
ビブラート:3種(V1~V3)
コーラス:3種(C1~C3)
■ピアノセクション:
内蔵タイプ:5種(Rhod, Wur, Clav, El.Grand, Ac.Grand) ※ただし最初期のバージョン
PRESENCE機能付き(→パラメトリックEQ)
■内蔵エフェクト:
MODURATIONS(Tremolo, Pan, RingMod, Wa-wah, Wa-wah2, Autowah)
EFFECTS(Flanger, Flanger2, Phaser, Phaser2, Chorus, Chorus2)
■外形寸法:900(W)×78(H)×290(D)mm ※Sixty One
■重量:7.8kg(Sixty One)、9.4kg(Seventy Three)
■発売当初の価格:240,000円(Sixty One)、280,000円(Seventy Three) ※いずれも税抜
■発売開始年:2001年初頭頃