1970~80年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】
【Vol.81】YAMAHA TQ5 ~斬新なデザインのトーン・ジェネレータ―[1988年]
2018/11/25
今回ご紹介するハード音源は、YAMAHAの「トーンジェネレーター・TQ5」です。発売は1988年。以前本ブログでも紹介したデジタルピアノ「PF1500/PF1200」とつなげて使ってもよい、音色拡張用モジュールであり8トラックのシーケンサーでもあります。EOS B200のモジュールタイプという捉え方もできるかもしれません。
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「YAMAHA EOS B200 ~EOSにスピーカーが付いたよ![1988年]」
まずはそのデザイン!
ボタン類、LCDなど、デザインの全てが傾(かし)いでいます。非常に斬新ですね! モジュレーションホイールなどが傾いているものはたまに見かけますが、全てが傾いているものはこのTQ5の他に見たことがありません。
これは同年に同社から発売された「PF1500/PF1200」の左上に空いているスペースに置いて使ってくださいという意図が見え見えですね。おそらく本機の設置位置や手を伸ばす角度から、入念に「傾き角度」を計算してデザインしたのでしょう。
ターゲットを絞った商品?
本機のキャッチコピーは「ピアノをオーケストラにするTQ5」となっています。“ストリングスやフルートの音も弾いてみたい、華麗なオーケストラとアンサンブルができたら…”とも書かれており、電子ピアノ・PF1500(PF1200)を買った人に向けて、「オーケストラ自動演奏の装置ですよ!一緒に買ってくださいね! 楽しみが広がりますよ~」みたいな戦略だったのでしょう。
スペック的な(音源方面)
4オペ/8アルゴリズムのFM音源による100種類のプリセットサウンドを内蔵しています。とはいえ「4オペ/8アルゴリズム」の部分はあまり大きく書かれておらず、(シンセ方面にあまり詳しくない)ピアノ奏者向けにプロモーションされていたという感じですね。
もちろんオーケストラ系の音色だけではなく、ギター、ベース、パーカッション、変わったSEなど、(ピアノ音源の補強用として)一通りの音色を揃えています。
シーケンサー部門
8トラック、8音ポリ、約10,000音(8ソング)をメモリー可能です。入力は、ノーマル(リアルタイム)/ステップ/外部MIDIの3通りで可能であり、トラック/小節/音符の単位で編集可能です。
また本機には「イージーエディット機能」というものが装備されています。これは各音楽ジャンルの代表的な楽器編成を7種類のパート・タイプとして記憶するもので、アンサンブル曲の多重録音が簡単に行えるというものです。なおエディットした音は外部カードに保存できます。
まとめ的な
いわゆる「シンセサイザーに詳しくない」「シンセサイズ自体にあまり興味がない」人向けの音源/シーケンサーといったところでしょうか。カンタン操作でトラックを作成し、オーケストラをバックにピアノ伴奏をしたい、という人にはうってつけだったのかもしれません。まさにそういった購買者を狙いうちにするかのように発売された商品ですが。。
ちなみに本機・TQ5ですが、“音源内蔵シーケンサー”としては(ほぼ)史上初めて登場した、割と記念すべきマシンなんですよね。何か見た目の奇抜さで損をしているような気がしてなりませんが(笑)
TQ5/ヤマハ(株) 雑誌広告より画像引用
つぶやき的な
なお本機には、液晶ディスプレイが時刻表示になる「時計機能」も搭載されています。演奏や録音以外の時に使ってくださいという案内でした。今となっては何てことはない機能ですね。
もうなんというか、80年代初頭に流行した任天堂の「ゲーム&ウォッチ」みたいな売り方だなーと感心してしまったのは僕だけでしょうか。。(→当時、子供たちは “時計としても使えるから”という理由で親にねだっていた)
↑任天堂のゲーム&ウォッチといえばこんな感じのもの。20代以下の世代はきっと知らないんだろうなぁ。。
仕様
■音源:FM音源(4オペレータ/8アルゴリズム)
■最大同時発音数:8
■プリセット音色:100プリセット/100ユーザー音色/カード音色
■エフェクト:リバーブ(ホール/ルーム/プレート)、ディレイ、ディレイL/R、ステレオエコー、ディストーション+リバーブ、ディストーション+エコー、ゲートリバーブ、リバースゲート
■シーケンサー:8トラック(メモリー=約10,000ノート、8曲)
■外形寸法:280(W)×70(H)×235(D)mm
■重量:1.5kg
■発売当時の価格:65,000円
■発売開始年:1988年