【Vol.64】Roland XP-10 ~アルペジエーター搭載・普及型シンセ[1995年頃]
2018/11/25
今回は1995年発売のRolandのシンセサイザー・「XP-10」のお話です。XP-50(オールインワン・シンセ)に続くローランドXPシリーズのシンセであり、当時としては驚きの低価格・69,800円(税別)で発売されました。なおシーケンサーは付いていません。
個人的には、本機を知人に借りてかなり使い込んだ思い出があります。約5kgと軽かったのも非常に助かりましたね。どのような機種だったのでしょうか。
音色について
かのJV-1080(音源モジュール)をベースとしワークステーション・タイプとして発売されたのがXP-50なのですが、XP-10ではXP-50からの音色継承というよりかは、GM/GS音源として力を入れた新しい音色群を備えています。
個人的には、GM音源としては同社のSC-55系に近い印象を受けましたし、追加された新音色群としては、ローランドのビンテージ・ライブラリー系が充実していたと記憶しています。
XP-10/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
キーボード・モード(X-DUALモード)について
本機のキーボード・モードとは、演奏する際、鍵盤上にどのようにトーン(音色)を並べて使うかを定めるモードのことです。「SINGLEモード」だと単音、「DUALモード」だと2音重ね、「SPLITモード」だと鍵盤域左右振り分け、といった感じですね。ここまではよくある感じです。
そして「X-DUALモード」という一見謎のモードも搭載されていました。これは、パネル上にある2本のスライダーにあらかじめトーンをアサインしておき、2つのトーンをスライダーで変化させることにより、モーフィングなど未知の音色を作り出せるという、意外と画期的なものでした。
アルペジエーター復活!
そもそもアルペジエーターというと、「コードを弾くと、設定しておいたテンポとパターンに乗って分散和音(=アルペジオ)にしてくれる機能」のことです。これは元々、昔の一部アナログシンセに搭載されていた機能で、シーケンサーの発展と共に廃れていったという過去があります。
それが90年代半ば、突如本機に搭載されたのです。しかもアルペジエーターの基本となる「スタイル」だけで30種類、そのそれぞれに対して最高33パターンの「モチーフ」が搭載されており、アナログ時代のそれと比較すると非常に高機能なアルペジエーターが装備されていました。しかもMIDI送信も可能ですよ!
これはもう当時の僕にとって絶好のおもちゃですよ(笑)。目新しくて、夢中になって遊んだことを覚えています。
個人的感想
音は当時のGM音源といった感じで、“ライブで立つ音”というよりかは、自宅で気軽に音作り・演奏を楽しむ、という感じだったのではないでしょうか。実際ライブでも何度か使ってみたのですが(→借り物なのに)、出音以前に、LCDバックライトが付いていなかったのでちょっと難儀したことを覚えています。暗いところで光らない液晶画面って、ライブでは意外と困ります(笑)
でもPC接続端子も標準装備していてDTMにも即対応できたし、この価格を考えると全体的にハイ・コストパフォーマンス・シンセと言えたのではないでしょうか。
つぶやき的な
アルペジエーターについては、今どきのシンセだと当たり前のように搭載されていますが、当時は「近い将来くるダンス/フロア音楽(制作)ブーム」の流れにいち早く目を付けた、先見の明に富んだ機能搭載だったと思います。
そう考えると、シンセ界における90年代末~2000年代初頭のいわば「アルペジエーター(搭載)・ブーム」の草分けとなる一台といえるのかも。本機の発売当時はそれほど注目されなかったけど。。
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「Roland JV-1080 ~90年代の人気音源モジュール(前編)[1994年]」
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「Roland XP-80 ~XP-50をリファインした76鍵仕様シンセ[1996年]」
仕様
■鍵盤数:61(ベロシティ付)
■最大同時発音数:28音
■パート数:16パート
■本体メモリー:【トーン】プリセット338、ユーザー256 【ドラム】プリセット16、ユーザー20 【パフォーマンス】プリセット64、ユーザー64
■ディスプレイ:16桁2行(LCD・バックライト無)
■外形寸法:1034(W)×94(H)×296(D)mm
■重量:5.0kg
■発売当時の価格:69,800円(税別)
■発売開始年:1995年末頃