【Vol.387】GENERAL MUSIC PROMEGA3 ~操作性に優れたプロ仕様デジタルピアノ[2002年頃]
2018/12/10
今回ご紹介するキーボードは、GENERAL MUSICの「PROMEGA3」というデジタルピアノです。日本での発売は2002年頃。発売当初の定価は298,000円でした(のちに値下げ)。
本機は、国内では音楽機材通販大手で知られるサウンドハウスが当時担当しており、キーマガやサンレコの広告にもよく出ていたので名前だけでも見たことがある人もいるかと思います。半面、楽器店の店頭にはほぼ並ばなかったので実機を操作したことのある人は少ないでしょう。
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この耳慣れないGENERAL MUSICというのはイタリアのメーカーであり、「GEM」という略称でも知られていました。そしてリック・ウェイクマン(イエス等)が一時期マスター・キーボード(あるいはステージピアノ)として使用していたことでも(一部では)知られていますね。
概要
GENERAL MUSIC社が独自開発した「DRAKE(Dsp Risk Advanced Keyboard Engine)」というDPSチップを搭載。88鍵ハンマーアクション搭載のステージピアノであり、アフタータッチも装備。8バンドのグラフィック・イコライザーを備え、4つの独立した “サウンド・モジュール”を搭載した高級エレクトロニック・ピアノという位置付けでした。同時発音数は320音(!)
4つのサウンド・モジュール
本機のパネルは大まかに音色ごとの “モジュール”が配されており、それが横に4つ並んだレイアウトが採用されています。往年のアナログシンセにたとえるとオーバーハイム4Voiceみたいな感じでしょうか。。以下はその各モジュールです。
・Pianos
・Vintage Keys
・Orchestra/PAD
・Bass/Other
本機の “顔”とも言えるPianosモジュールは、「グランド(1/2)」「アップライト」「CPグランド」などを始め、「ジャズ」「ロック」「ダンス」「テクノ」といった音楽ジャンル名でも用意されているのがちょっとユニーク。
ちなみに「グランド1」はスタインウェイのグランドから、「グランド2」はファツィオリ(※イタリアのピアノブランド)のコンサートグランドからサンプリングしてあるそうですよ。
なおエレピ方面はPianosではなくVintage Keysの方に収められていますね。Rhodes系が3~4種、Wurlitzer系が2種といったところです。あとFMとは書かれていませんが、DX7のようなFMエレピ音色は2種類用意されているようです。
各モジュールの操作について
各モジュールごとに15の音色から選べるようになっています。よってプリセット音色は15×4モジュールの合計60種類。
なおピアノに限らず各モジュールの音色変更は、つまみ(本機ではバーチャル・ポットといいます)を回して選ぶだけというシンプル設計。つまみの現在位置が周囲の赤いLEDで灯るところなんかは、現代のKORG GRANDSTAGEやRoland RD-2000にも通ずる感じですね。デザインにも先進性が見られます。
これら各モジュールは発音のON/OFF切り替えがボタン一つで可能であり、それぞれのモジュールから選んだ音色を同時に鳴らすこともできます。なお本機には128種類(プリセット64+ユーザー64)の「パフォーマンス・メモリー」が内蔵されており、後述するEQなどでエディットした音色を保存し、設定をワンタッチで丸ごと呼び出すことが可能。
あとは、「OCTAVE」(→オクターブを±8でアップ/ダウンできる)、「TO LEFT」(→ワンタッチでそのモジュールをスプリットの左側に割り当てられる)などのボタンも各モジュール・セクションごとに用意されています。これらは4モジュール全てに共通しているので操作は分かりやすいですね。
ムービング・フェーダー搭載!
本機の決定的な特徴点として、各モジュールごとに配されたフェーダーが「ムービング・フェーダー」となっている点が挙げられます。
これはいわゆるデジタルミキサーなどに見られる「記憶したパラメーターの位置に、モーターによりフェーダーが自動的に移動する(動く)」というもの。いやこれは実際の動画を見たら結構鳥肌ものですよ!(笑)
各種パラメーターの数値データを内部でメモリーしてくれるのは80年代以降のシンセでは当たり前ですが、音色を変更するごとにフェーダーが律義に物理移動する様は感動すら覚えます。そしてこの手のムービング・フェーダーが採用されている電子鍵盤楽器は、このPROMEGA3が最初で最後なのではないかと記憶しています(もし他にもあったら教えてくださいませ)
なお本機では、このスライダーは一般に各セクションごとのボリューム調整をするために使います(他にもパラメーター類の調節もできるそう)
8バンドEQ搭載!
パネル右上には8バンドのイコライザーが確認できます。なおこのEQはスライダーではなくつまみ方式。
各バンドは、即座に反応するLEDバーグラフにより操作性・視認性は抜群ですね。こちらにもON/OFFボタンがあり、ワンタッチで全てのEQをキャンセルできるようになっています。あるいはRESETボタンを押すことにより一発でフラットな特性に戻すこともできますね。
つまみごとの周波数バンドは63Hz、125Hz、250Hz、500Hz、1kHz、2kHz、4kHz、8kHzで、±10dBのカットまたはブーストが可能です。
内蔵エフェクトについて
本機には各サウンドセクションに適用される、2つの独立したエフェクト・プロセッサを搭載しています。内容は15種類のリバーブおよび、「PROEFX」と呼ばれる汎用15エフェクトで、ピアノメインと考えれば十分といったところ。
マスター・キーボードとして
外部音源を4つのMIDIゾーンに割り当てることが可能で、本機をMIDIマスター・コントローラーとしての使用も可能。鍵盤部はアフタータッチにも対応しており、もちろんピッチベンド、モジュレーション・ホイール(本機での名称はモジュレーション・ジョグダイヤル)も装備しています。
PROMEGA3全体で言えることですが、様々な操作がパネル上で簡単にアクセスできるようにデザインされており、とにかく操作性が高いといった印象ですね。あと作りが重厚で、本格的な音作り・演奏に対応するプロ仕様の一台といったところです。
つぶやき的な
本機の前身とも言える同社のデジタルピアノ「Pro2」は芳醇なピアノサウンドが特徴で、一時期キース・エマーソンがピアノ用として使用していたことでも知られています。また冒頭でも触れましたが、本機PROMEGA3はリック・ウェイクマンが愛用していたということで有名です(2002年のイエスのツアーでも使用)。
日本人にとってはちょっと馴染み薄いGENERAL MUSIC社のキーボードですが、一方でキーボード界の大御所がしれっと使ってたりして、実は機材マニアの盲点的なメーカーだったりします(笑)。そういえば僕が以前勤めていた(有)安田商店でも、90年代には同社のS2/S3といったシンセを扱っていたんですよね。。そちらはまたの機会に紹介してみましょう。
仕様
■鍵盤数:88鍵(ハンマーアクション搭載。アフタータッチ付き)
■最大同時発音数:320音
■内蔵音色数:60(15×4セクション)
■パフォーマンスメモリー:128種(64プリセット+64ユーザー)
■内蔵エフェクト:15リバーブ、15エフェクト
■外形寸法:1350(W)×190(H)×410(D)mm
■重量:25kg
■発売当時の価格:298,000円(税別)
■発売開始年:2002年頃