【Vol.315】CHARLIE LAB Digitar(デジター) ~6本の弦をつま弾いてギターサウンドを再現[1997年頃]
2018/11/28
今回取り上げる電子機器は、CHARLIE LABから発売されたMIDIギター・コントローラー「Digitar(デジター)」という機種です。日本発売は1997年頃、当時の国内定価は48,500円。
今日 “MIDIコントローラー”といえばいわゆる鍵盤が付いている(※音源は普通搭載していない)ものが思い浮かばれますね。一般的にはARTURIAやM-AUDIOなどからリリースされているDTM向けの製品群が有名です。とはいえウィンド・シンセ・コントローラー(→いわゆる電子サックス)などのように、必ずしも鍵盤の形態をしていないものもあったりするのです。
今回紹介する「Digitar(デジター)」はギターように6本の弦を持ち、鍵盤とMIDI接続して鍵盤上にてギターサウンドを再現するMIDIギター・コントローラーなのです。斬新だば。
概要
キーボーディストでもギタリスト感覚で簡単にギター・バッキングが可能になるMIDIコントローラー。鍵盤で押さえたコードをギターっぽく発音させるという斬新なコンセプトでした。なお本体に音源は内蔵しておらず、実際にギターサウンドを鳴らすにはMIDI音源(→シンセ内蔵のギター音色)とつなげることになります。
スタイルとしては、片手でキーボードのコードを押さえ、同時にもう片方の手で本機の弦を弾くという感じ。本機・Digitarを肩から吊り下げて(あるいは腰ベルトに装着して)使うのが一般的でした。
コントローラーおよび発音について
横幅およそ15cm、縦幅およそ10cmの箱状のコントローラーには、一般的なギターのように6本の弦が張られており、この弦をつまびく(弾く)ことにより演奏情報をシンセとやり取りします(MIDIインプット/アウトプットとも16チャンネルの選択が可能)。大きさで言えばほぼ文庫本サイズですね。厚みは約4cmあるので大河小説といったところ(笑)
ギターと決定的に異なる点は、弦を押さえる(弦上の)位置は無関係であること。ギターの場合だと弦長が長いほど低音、短いほど高音が鳴るわけであり、弦を押さえる位置(→フレット)により音程を作り出しています。本機Digitarでは弦を押さえて指板と接触させるということはせず、「弦を弾いたか(振動させたか)、否か」の情報をやり取りします(ベロシティ情報は送信可能)。
じゃあどうやって音程(コード)を付けるかというと、それはMIDIでつなげた鍵盤側から。鍵盤を弾くとDigitarが入力された約600のコードを自動認識し、そのコードを6本の弦に振り分け、弦を弾くと音が出るという仕組みになっています。なおコードはいわゆるテンションコードや、dim、augなど幅広くカバーしていますね。
デンマークのおっちゃんが奏でるデモ映像。ちなみに上記映像の鍵盤はYAMAHA Tyros5というもので、日本では未発売。主にヨーロッパで出回っているプロ向けの高価(日本円でおよそ70万円)なポータブル・キーボードです。
ユニット構成について
本体セットにはDigitarのメイン・ユニットと共に、いわゆる電源ユニット(DG-10)も含まれています。この電源ユニットには電源周りはもちろんMIDI周りの端子も集約されており、付属のモジュラーケーブルでメイン・ユニットと接続します。
なのでDigitarのメイン・ユニット単品では使えないという感じですね。その分メインの方は軽くて使いやすいとも言えます。
実際の演奏…
ベロシティは本機だけでも検出可能。本物のギターのようにピッキングによる強弱も付けられますね。このベロシティはキーボード/Digitarのどちらを採用するかをDigitarにて選択できるようになっています。左利き/右利きの切り替えなんかもできる仕様になっていてこの辺りはよく配慮されています。
なおメイン・ユニットは小さく軽いので、ベルトなどで体にできるだけ密着させた方がよいでしょう。実際、ストラップで吊り下げただけだとストローク中にずれてきたりして物理的な不安定感は否めない感じですね。
CHARLIE LAB Digitar/バルコム(株) 雑誌広告より画像引用
まとめ&所感
それまでも弦が張られた「MIDIギター・コントローラー」や「ギターシンセ」というものは出回っていたのですが、あくまでもギタリストがMIDI音源を鳴らすというギタリスト目線のものが中心。当然ギターの演奏方法やコードを知らない人にとっては全くもって弾けないというシロモノでした。
本機ではコード・ワークは鍵盤から行うため、「俺は鍵盤しか弾けん!」という僕のようなキーボードオンリーラブ的なキーボーディストにとって、新たな可能性を開いてくれる斬新なコントローラーだったわけですね。キーボードでコードを押さえると自動でギターっぽいコード感に変換してくれるので、弦側でコードを意識することなく手軽にギター演奏ができるといったところです。
まあ本機が楽器業界界隈での一大ブームになったかというとそうでもないのですが(笑)、目の付け所は非常に面白いと言えるでしょう。実際、本機をギターの打ち込みとして活用していたというプロミュージシャンもいたそうですよ。
ちなみに本機には、鍵盤も一緒にくっつけちゃった「Splitboard」あるいは「Splitboard K61」というシンセも登場しました。そちらの記事は別途記述してみたので、興味のある方は以下リンクからどうぞです。
関連記事:
「CHARLIE LAB Splitboard K61 ~“Digitar”でギタリスト気分を味わう![2001年頃]」
「CHARLIE LAB Split Board ~鍵盤部がまっぷたつに!?[2001年頃]」
仕様
■有効ノートナンバー:送信16~127/受信24~127
■ディスプレイ:LED(7セグメント×4桁)
■接続端子:MIDI IN/OUT/THRU
■外形寸法
Digitarメインユニット:155(W)×40(H)×95(D)mm
DG-10(電源ユニット):100(W)×50(H)×100(D)mm
■重量:Digitar 0.36kg DG-10 0.66kg
■発売当時の価格:48,500円(税別)
■発売開始年:1997年頃