バンドアンサンブルにおける、ピアノの「低音(左手)」部は聴こえない?
2018/11/25
僕は長年ロック寄りのバンドで鍵盤を弾いてきているのですが、ピアノ音色の場合、どうしても周りのバンド音(轟音!)に負けてしまい、聴こえなくなるなんてこともあります。僕の場合、音作りをしているせいもあってか右手(→比較的高い周波数の音域)はまあまあ聴こえてくるのですが、低音部は埋もれることが多いですね。
これはライブ映像などから耳コピをしようとする際にも気付かされます。「メロディライン(→右手)は聴こえるのに、ベースライン(→左手)が全く聴き取れない!」といった感じですね。これは、同時に異なる二つの音波が耳に届く時、弱い音波は強い音波に打ち消されてしまうという「(周波数)マスキング効果」という現象が起こるためです。
まあ公衆トイレなどに設置されている「音姫」(→トイレ用擬音装置)もそんな感じのものですよね。より大きな音を発することによって、周囲に聴かれたくない音をマスキング(隠す)ために使われます。全くの余談ですが「音姫」の名称はTOTOの登録商標だそうですよ。
バンド内ピアノサウンドにおけるマスキング
上の画像は、一般的な鍵域の88鍵ピアノを図にしたものです。最低音は「ラ(A0)」、最高音は「シ(B7)」ですね。さてここに、バンドサウンドにおける「エレキベース」の音域をざっくりと記してみましょう。なおこの場合のエレキベースとは、4弦(24フレット)のごく一般的なものだとします。
これはモロ、ピアノの左手(低音部)の周波数とかぶってますね! ちなみに、さらに下の音域だとかぶらないかというとそうではなくて、今度はバスドラムの周波数帯とかぶってきます。まあそれ以前に、一番左の鍵盤なんてそうそう弾かないですけどね。。
ライブでは、PAさんに「低域の〇〇ヘルツ周辺の音、▲▲デジベル上げて!」などとリクエストすることは可能ですが、そうなると低音域がぶつかって「単にうるさい」だけの音場になってしまいがちなので、根本的な対応策とも言えないでしょう。バンド全体の音バランスも崩れてしまいがちです。
身もふたもない結論ですが、特にピアノの低音域は、爆音バンドサウンドに混ざった時には余り聴こえないものだと最初から認識しておいた方がいいと思います。それでもライブでピアノで目立ちたい!と思うならば、PAさんをいかに味方に付けるかが大きなポイントになってきます(笑)
考え方を変えてみる
とはいえ、「大量の曲を短期間で覚えなくてはいけない!」という引っ張りだこキーボーディストさんにとっては、「とりあえず右手パートだけでも最後まで弾けるようにしておく」というのもありだと思います。一般的に「ピアノは両手で弾くもの(→それゆえに難しい)」というイメージが強いと思うのですが、片手だけだったら案外誰でも(かつ短時間で)弾けるようになると思うのですよね、個人的には。。
スタジオでの音合わせにしても、最初の段階だったら他メンバーも(ピアノの左手を省略してるなんて)気付かないことが多いですし、逆に「すごくいいピアノのベースライン考えてきたんだよね!」と鼻息荒く臨んでも、他メンバーにはやはり全く気付かれないことが多いです。。
「この曲は時間がなくてBメロの途中までしか完璧にできてない」と言うよりは、「この曲は時間がなくて(一曲通して)右手パートしか完璧にできてない」という言い訳の方が、まだ他バンドメンバーにとって納得してもらいやすいです。いやほんと
これはDTMでのピアノ・パート作りでも言えるかもしれませんが、ピアノ未経験者がピアノのベースラインを考えるというのは結構難しいと思います。単純にルート(根音)を置いていくだけだったら簡単ですが、エレキベースのラインとどう絡ませるかなどと考え出すとハマってしまいがちです。。そんな時でも、「とりあえず右手パート」を作っておき、あとからバランスを取って足したり引いたりするのもいいかなと。
曲を覚える時間がない、あるいは頭でっかちで先に進まないくらいなら、「最初は片手だけでしかピアノは弾けません(キリッ)」と開き直るくらいの方が気も楽になるかもしれませんよ(笑)