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1990年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.381】YAMAHA VL1 ~【前半】世界初のVA音源を搭載した新世代シンセサイザー[1993年]

2018/07/01

 さて今回ご紹介するシンセは、YAMAHAの「VL1」というモデルでございます。発売は1993年で、当時の定価は470,000円(税別)。49鍵仕様で同時発音数は2音。

 

YAMAHA VL1

 

 これは何かというと、当時世界初となる「VA(バーチャル・アコースティック)音源」を搭載した全く新方式のシンセサイザーだったのです。この物理モデル音源はヤマハとしては実に10年ぶりとなる新方式であり、発表当時は熱い注目を集めました。ちなみにVL1のLは “リード(Lead)”の頭文字だそうで、その名の通りリード系楽器のシミュレーションが得意といったところです。
 
 
 なおVL1はのちにバージョンアップしている(→Version2)のですが、今回はリリース当初のVersion1を基準に記事を展開してみたいと思います。
 
 
 

VL1概要

 PCM音源方式のデジタル・シンセが全盛を極めていた1993年当時、実際の楽器と同様の発音構造(および物理特性)をモデリングした、全く新しい発音方式である「VA(バーチャル・アコースティック)音源」を搭載。
 
 
 つまり息を吹き込んだり、弓で弦をこすったりすることなどの “振動”に相当する信号を入力することにより、疑似的に振動をシミュレーションして発音させるという仕組み。従来の一般的なPCMシンセのように、メモリーに記憶されている波形を加工していく音作りの手法とは全く異なるといった感じですね。
 
 
 また、従来の弦・管楽器の徹底的なリアルシミュレーションにとどまらず、「サックスのマウスピースにバイオリンの胴をくっつける」などといった、現実ではありえないバーチャル楽器の音色を作り出すこともできました。
 
 
 

音源方式について

 VL1に採用されている音源方式は「S/VA【Self oscillation type/VA Synthesis system】」と呼ばれるもの。これは小難しく言うと、“一定の圧力を与え続けることにより発振を得るタイプの楽器を物理モデルとして設計する”ものであり、簡単に言えばバイオリンなどの擦弦楽器や、サックスやトランペットなどの管楽器の発音構造をモデル化したものです。
 
 
 従来のPCMシンセでは難しかった “音色が自然に変化する”といったことを、本機ではフィジカル(物理)モデリングおよび高速演算で可能にしています。従来のように発振音を疑似的に再現したりといった方法論とは全く異なり、ある音からある音への移動音のフレーズを自然に表現することが可能といったところですね。これは当時円熟期を迎えようとしていたサンプラーでもほぼ再現不可能なものだったのです。
 
 
 そんなわけで従来のデジタルシンセとは一線を画した音源仕様となっており、当時主流だったGMにはもちろん非対応。ピアノの音もあったかもしれませんが、同時発音数は2音だけなので実質的にはリード系専用のキーボードといったところです。

 

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コントローラー部について

 イニシャルおよびアフタータッチ付きの49鍵鍵盤。ピッチベンダー(ホイール)、モジュレーションホイール2基、コンティニュアス・スライダーも2基搭載した、使い勝手よいコントロール系統を備えています。そしてブレス・コントローラー(同社のBC2)にも対応。これは息を吹き込むことでパラメーターの増減がリアルタイムにできるということで、特にサックスなどの管楽器のシミュレーションに威力を発揮します。
 
なおBC2および、フットコントローラーであるFC7は本体に標準で付属していました。
 
 
 関連記事:「YAMAHA CS01(/CS01II) ~ブレスコントローラー搭載! ミニ鍵盤の80年代アナログシンセ[1982年]
 
 
 ブレス・コントロールに加え、ベンダーやモジュレーションで表情を付けることによりさらにリアルな演奏もできるそう。ちなみにVL1ではブレス・コントローラーを吹かないと音が出ないプリセットもたくさん入っていますね。よって楽器店の店頭などでは音を確認しにくいというケースもありました。
 
 
 ちなみにVL1の後継機・VL7では、ブレス・コントローラーを使わずに演奏ができるノーブレス・ボイスというボイスが搭載されています。
 
 
 

ここまでのまとめ&かんそう

 この時代というと “バーチャル・リアリティ(仮想現実)”がトレンドとなっており、家庭用ゲーム機である「バーチャルボーイ」(1995年)なども登場して、世間一般において “バーチャル”の単語は広く知れ渡りつつありました(※ただしバーチャルボーイといえば今日では任天堂の “黒歴史ハード”として語られることが多いw)
 
 
 さて音源版バーチャル・リアリティと言えるかもしれない本機ですが、やはり47万円という定価は一般人にとってはややお高めといったところ。。当時は20万円もあれば結構高性能なオールインワン・シンセが手に入る時代でしたし、キーボーディストのソロ用と考えた場合でもminimoog(中古)がほぼ買えてしまうという価格でした。そのため一部のプロミュージシャンを除きあまり普及しなかったように思います。
 
 
 でも浅倉大介氏がいまだに愛用していることでも知られ(→同社のショルダーキーボード・KX5などと併用)、同社のこの路線はのちにVP1、VL1、VL1-mなどといった派生モデル(後継機)も登場したことから、一定の成功を収めたといってもいいかもしれません。
 
 
 というわけで前半記事は終了。後半は、本機の心臓部とも言える音源構成(およびモディファイア)について言及してみたいと思います。
 
 
 続きの記事→「YAMAHA VL1 ~【後半】新開発のバーチャル・アコースティック・シンセ[1993年]
 
 

仕様(Version1)
■鍵盤:49鍵(イニシャル/アフタータッチ対応)
■最大同時発音数:2音
■演奏モード:モノ、ポリ、ユニゾン
■音源:S/VA方式
■プリセット音色数:128インターナルボイス(16ボイス×8バンド)
■モディファイア:ハーモニクス・エンハンサー、インパルス・エキスパンダー、レゾネーター、5バンド・イコライザー、ダイナミック・フィルター
■エフェクト:モジュレーション・エフェクト(フランジャー、ピッチ・チェンジ、ディストーション、フィードバック・ディレイ、リバーブ)
■メモリー:3.5インチFDD(2HD/2DD)
■外形寸法:914(W)×105(H)×380(D)mm
■重量:12.5kg
■発売当時の価格:470,000円(税別)
■発売開始年:1993年

 

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