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テキスト




KAWAI 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.304】TEISCO S-110F(/S-60F) ~TEISCOブランドの個性派アナログシンセ[1980年頃]

2018/02/20

 今回はひときわマニアックなキーボードを紹介してみましょう(笑)。1980年頃にTEISCO(テスコ)から発売された「S-110F」というシンセサイザーです。発売当初の定価は127,000円。

 

TEISCO S-110F

 

 1977年に発売されたアナログ・シンセサイザー「S-100F」の後続機と見て概ね間違いないでしょう。前身のS-100Fは、当時95,000円という10万円を切る低価格でその名を広めた1VCOのモノフォニック・シンセだったのですが、S-110Fでは2VCO・デュオフォニック(同時発音数2)とバージョンアップが見られます。では詳しく見ていきましょう。
 
 
 

【はじめに】TEISCO(テスコ)ってそもそも何?

 前身も含めると1940年代から存在していた国内の老舗楽器メーカー(ブランド)であり、1960年代の世界的なエレキギター・ブームの時には国内ギターメーカーの雄として名を馳せました。電子楽器部門では、60年代に電子オルガン開発で知られていた河合楽器製作所(以下カワイ)と業務提携を結び、のちにカワイの電子楽器部門のブランド名としてシンセサイザー/電子オルガンなどの製品に冠せられることになりました。
 
 
 この辺りの提携関係の詳細はちょっと複雑なのですが(そもそも僕自身よく知らない)、キーボーディストとしては「TEISCO(テスコ)とは1960~80年代中頃にかけてカワイの電子楽器(の一部)に冠せられていたブランド名」と認識しておけばとりあえずいいと思います。今回のS-110Fもその中の一台です。
 
 
 

S-110F仕様

 基本構成は2VCO→1VCF→1VCA→2EGの、“2ボイス・アナログシンセ”。ノイズやリング・モジュレーター(→VCO I/II)も備えています。鍵盤数は37ですが、トランスポーズ機能により61鍵相当の音域をカバー。あとポルタメント(3段階モードセレクター付き)もかけられますね。
 
 
 各セクションは整然とブロック分けされている上に、信号の流れを示す三角の矢印型LEDなどもパネルにあり点灯します。またパネルの上部には、変調度やフィルター・バンクのレベルの変化量をLEDメーターで表示されるようになっていて、全体的に操作が非常に分かりやすい仕様になっていると言えると思います。
 
 
 

8ポイントのフィルター・バンク搭載

 自然楽器特有のフォルマント(→音色のくせ)を作り出すため、このクラスとしては初となる “8ポイント・フィックスド・フィルターバンク”を装備。パネル右上部にある8つのツマミですね。
 
 
 これは、250、350、500、700、1K、1.4K、2K、2.8KHzの各周波数上に固定されたバンドパス・フィルターといった感じであり、アコースティック楽器特有の複雑な響き・ニュアンスを再現するための機能だそうです。
 
 
 (ローパス)フィルターというと24dB/octにせよ12dB/octにせよばっさりとカットするイメージですが、これは周波数帯によって微妙な音色を作り込めるといった感じでしょうか。なお各ポイントの周波数は、一般的なグラフィック・イコライザーとは異なり、人間の聴覚に最も感じる帯域に集中しているそうです。
 
 

 

 

個性的な「タッチ・センシティブ・モジュレーション」

 鍵盤左側にある「TOUCH SENSITIVE MOD.」セクションには、3つの指盤(フィンガー・コントローラー)が備えられています。各指盤は2つのポジション(→合計6ポジション)があり、演奏中に押すことにより以下のような操作が可能となるというもの。

・VIB(ビブラート)およびWOW WOW(ワウ)
・VCFのアップ/ダウン
・VCOのアップ/ダウン

 
 本機にはピッチ・ベンドやモジュレーション・ホイールは見られませんが、その代わりにビブラート/ワウおよび、VCFのカットオフ周波数、VCOI/IIのピッチを、このセンサー付きコントローラーによりフィンガー操作できるといった感じですね。ギターっぽいチョーキング奏法などライブで使っても面白そう。。
 
 
 今日のシンセにはあまり見られない非常に個性的なコントローラーですが、ARP ODYSSEY Rev.3のそれに若干近いと捉えることもできます(※1
 

TEISCO S-110F(advertisement)
S-110F/TEISCO CO.,LTD. 雑誌広告より画像引用
 
 
 

姉妹機・S-60Fについて

TEISCO S-60F

 

 S-110Fと同時発売された32鍵仕様のローコスト・モデル。当時の定価は74,000円。オシレーターは1VCOとなっており他の機能も若干簡略化されていますが、基本的な操作感はS-110F譲りの、コスパの高いベーシックモデルといったところでしょう。ハイパス・フィルターを搭載しており、外部オーディオ信号を取り込む入力端子も備えています。
 
 
 見た目的には鍵盤左側のコントローラー類がいくつか省略され横幅も狭く、今どきのお手頃価格帯のアナログシンセに近い雰囲気となっていますね。
 
 
 

つぶやき的な

 プログラマブル(→作った音色を保存できる)には対応していなかったそうですが、他にもLFO波形を三角波・パルス波で連続的に変調ができたりと、当時のこの価格帯のシンセとしては多彩な音作りができたといった感じですね。僕は実機の音出しをしたことはありませんが、(動画サイトで見る限り)太く温かい音色、エッジの効いた音色変化など、非常に存在感のある一台なんじゃないでしょうか。
 
 
 

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※1 …本機はARPのライセンス製作という説もあるが真偽のほどは不明。

仕様(S-110F)
■鍵盤数:37鍵
■最大同時発音数:2音
■構成:2VCO, 1VCF, 1VCA, 2EG
■外形寸法:855(W)×110(H)×400(D)mm
■重量:13kg
■発売当時の価格:127,000円
■発売開始年:1980年頃

 

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