エビングハウスの忘却曲線から効率のよい曲の記憶法を考える ~忘れるタイミングで、覚える!
2018/11/25
バンドマンの場合、「あと○日で△曲も覚えなくてはいけない!」という状況になることも多いかと思います。まあ通常の暗記もの(テストなど)に比べれば、いわゆる “引き出し”が多いプレイヤーだったらさほど慌てたりはしないかもしれません。事前にコード進行などを記した楽譜さえ作っておけば、その場で何とかなるというケースも多いと思います。
とはいえ「勝手にアレンジすることが許されない」、いわゆる “決め”のフレーズがふんだんに盛り込まれた曲などもあります。またピアノの発表会などでは基本的に譜面通りに弾くことが多いですよね。こういったケースでもバリバリ初見でいける人はいいのですが、僕みたいな凡人だとやはり事前に入念な練習が必要になってきます。1~2曲ならまだしも、短期間(短時間)で10曲以上ともなると結構大変です。。
そんなわけで、今回は「曲を効率的に覚える」ノウハウについて、人間の脳が持つ記憶・忘却のメカニズムを交え少し書いてみたいと思います。もちろんテスト勉強など、暗記系全般についても当てはまることなので色々と応用が利きそうです。
まず始めに、覚えたことを効率よく定着させたいならば、やみくもに練習を重ねる前に ”忘却曲線”というものを知っておいた方がよいです。以下、有名なものを紹介してみます。
エビングハウスの忘却曲線について
ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスさんがこの研究を行ったので、「エビングハウスの忘却曲線」などと呼ばれています。エビちゃんは研究の結果、時間経過による記憶の定着率をグラフ化した「人間の忘却曲線」を提唱しました。
一生懸命記憶(譜読み・勉強・練習)したのに、しばらく時間が経つとすっかり忘れている、なんて経験をした人も多いと思います。上記のグラフを見ると、時間経過と共に以下のような忘却状態になることが分かります。
20分後…42%忘れている
1時間後…56%忘れている
1日後 …74%忘れている
1週間後…77%忘れている
1ヶ月後…79%忘れている
もちろん個人差は多少あるかと思いますが、体感上「あーそうかも!」と納得の人も多いでしょう。ポイントは、忘却は経過時間に正比例して減少していくのではなく、大きく減少するタイミングがあるということです。
面白いのが「1日後」も「1週間後」も「1ヶ月後」もさほど大差がないことですね。このことから、“1日以内”での復習が非常に重要ということが読み解けます。
タイミングよく復習することで、記憶を効率よく定着化させる!
学校の勉強にしても、何度何度も復習してようやく記憶に定着しますよね。ただそのタイミングがまずいと、初めから何度も覚え直しという非効率さを生んでしまいます。ではどのタイミングで復習するのが忘却率を抑えるのに効率的とされるのでしょう。
タイミング① 30分~1時間後に復習する
上記の忘却曲線を見るに、数十分後には大きく忘却に至ってしまうことが分かります。なので最初に復習するタイミングとしては、覚えてから30分~1時間後を目安に復習すると、忘却率の減少を大幅に抑えることができます。このポイントが、のちのちの “記憶の長期定着”の状態になるまでの期間短縮につながってきます。
タイミング② 寝る前に復習する
これは日々の帰宅時間が遅い人にとっては難しいかもしれません(→タイミング①とかぶるため)。余裕のない人は省略してもいいと思います。
なお、一晩寝たらかえって記憶が定着しているなんてことを経験した人もいるのではないでしょうか。これは脳のパーツの一つである「海馬(かいば)」が、寝ている間に情報を整理してくれるからだそうです。海馬は “一時的に記憶を保存する場所”という説があり、一度脳への刺激を遮断することにより、より活発に刺激(復習)を受けやすくなるとのことです。
寝る前に復習するというのは、海馬が情報を整理する前に「これは必要な情報だから忘却しないでね~」と念を押しておく作業みたいなものでしょうか。なお、仮に徹夜で延々練習したとしても、(長期的に見た場合)非常に効率の悪い作業となってしまいますので睡眠はしっかり取りましょう。脳を休ませること、大事。
タイミング③ 翌日にもう一度復習する
1日後(24時間後)にやってくる忘却は損失が大きいですね。タイミング①の復習をしなかった場合、実に74%も脳から記憶が蒸発してしまう感じです。ここは必ず押さえておきたいタイミングでしょう。
タイミング④ 6~7日後に復習する
前述のタイミングでみっちり練習しておけば、このブランクでもかなり定着していると思います。あとは2週間後、1ヶ月後と期間を空けても定着率としてはさほど損失していないと思います。全体的なポイントとしては、徐々に復習する間隔を長くしていっても問題ないことです。
楽器演奏者の場合
そうはいってもピアノとかの場合だと、1週間のブランクがあったりすると指が思うように動いてくれなくなるケースも多いです。いわゆる “譜面の暗記”とは別に、指をなまらせない日々の練習は別途続けていくことが好ましいですね。
音楽的なまとめ的な
冒頭で述べた「あと○日で△曲も覚えなくてはいけない!」といったケースでは、1日1曲に固執せず「8小節進んだら次の曲、さらに次の曲…」といった感じでその日のうちに数曲をローテーションしていくのが効果的だと考えます。
ただし、「今から○時間後に復習するのがベスト」といって余りにガチガチにスケジュールを組んでしまうと、それが崩れてしまった時にぷつりとモチベーションの糸まで切れてしまうかもしれません。「とりあえずその日のうちの復習だけは押さえる、あとは気の向いた時にでも」と軽く構えていた方が心の健康にはいいかもしれません。
そうはいっても「本番まであと○日」などという明確な締め切りがあると、不安で練習せずにはいられないのですが。。(汗)