【Vol.286】CLAVIA Nord Electro(初代機) ~【その1】オルガンセクションについて[2001年頃]
2018/11/26
お待たせしました! 今回ご紹介するキーボードは、CLAVIA DMI(以下CLAVIA)の「Nord Electro(無印)」です。日本での発売は2001年初頭頃。CLAVIAといえば当時はモリダイラ楽器が代理店を務めていました(※2016年11月1日以降はヤマハ)
いわゆる初代ノード・エレクトロであり、同シリーズは現在でも続く非常に人気の高いキーボード・シリーズとして有名です。この初代機では、61(Sixty One)と73(Seventy Three)という鍵盤数の違いによる2つのモデルが存在しました。
Nord Electroシリーズは個人的には2→3HP→4Dと愛用していて(3HPと4Dは現在でも所有)、これまで多くのステージで大活躍してくれました。バンドで使用頻度の高いオルガン/ピアノ(エレピ)の2大音色が、共に抜群のクオリティで鳴らせる、しかも軽いということで、これは今回取り上げる初代機から変わっていない基本仕様と言えますね。
なおNord Electroの説明は長くなることが分かっているので(笑)、今回は大きくオルガン/ピアノに分けられた本機のセクションから、オルガン部分に着目して記事を進行していきたいと思います。
オルガン・セクション
音源部分では、同社のnordlead(シンセサイザー)で培ってきたモデリング技術を採用。ドローバーは9本で、8段階のLEDから構成されるバー・グラフ・タイプとなっています。原理的にはこの9本のドローバー(16'~1')を使って倍音を合成していく、いわゆるトーンホイール方式のオルガンをシミュレートしたものです。
物理ドローバーはなく、各LEDグラフ・バーの下には2つのボタンがあり、どちらか一方のボタンを押して倍音ごとのレベルを増減させることができます。問題なのはそのレスポンス(押した際の)ですが、意外と違和感なく反応してくれるというのが個人的印象。演奏中にドローバー・ボタンをリアルタイム操作して音色を変化させる時でも滑らかに追従してくれます。
この言わばデジタル・ドローバーは、軽量化、省スペース化のために採用されたらしいのですが、デジタルならではの「プリセットを変更した時に設定を目で確認できる」という大きなメリットがあります。機械式ドローバーだと現在のところ、デジタルレコーディングミキサーのようなムービング・フェーダーみたいな機種はありませんし(→もしそんなものがあったらコストと重量が大幅に跳ね上がる)、このデジタル・ドローバーは実用的かつ面白い仕様だと感じます。
パーカッション/ビブラート
オルガンならではのパーカッションは2nd(2次倍音)、3rd(3次倍音)が選択可能。いわゆるレガートで弾いた時にはパーカッション効果が付かない仕様となっており、この辺は本家B3に似ています。パーカッションのディケイ・タイムはSLOW/FASTのどちらかを選べますね。
また3種のコーラス(C1~C3)および、3種のビブラート(V1~V3)が選択できます。
オルガン音色についてのこぼれ話
オルガン・サウンドのモデリングはHAMMOND B3を基に行ったとされています(→マニュアルにも書かれている)が、開発開始時にはHAMMOND A100(※1)を徹底的に研究した上でモデリングを進めていったとのことですよ。
この頃は当時最新の技術によってトーンホイールをデジタルで再現した「バーチャル・トーンホイール方式」のオルガンがいくつか出ていたのですが、本機の音色はデジタルっぽさがあまり見られずキンキン響く感じではなかったですね。普通に使いやすいと思います。
エフェクト部について
パネル上にあるエフェクト・セクションはオルガン/ピアノ系共通となっています。
MODULATIONS
いわゆるモジュレーション系/フィルター系エフェクトを集めたセクション。本機では、Tremolo, Pan, RingMod, Wa-wah, Wa-wah2, Autowahの6種を、ボタンを切り替えることによってチョイス可能です。まあこれはどちらかというとピアノ系音色向きですね。
EFFECTS
Flanger, Flanger2, Phaser, Phaser2, Chorus, Chorus2の全6種。こちらも比較的汎用性の高いオーソドックスなエフェクト群といったところ。
OVERDRIVE
真空管による歪み(オーバードライブ)をシミュレートした “汚し系”エフェクト。ハードなオルガン演奏はもちろん、薄く掛ければロック寄りのピアノ音色にもなじみます。
ROTARY SPEAKER
LESILIEスピーカーをモデルとし、回転スピードや低域用のローターなどの特性をシミュレートしたもの。「FAST」ボタンを押すたびにSLOW/FASTが切り替わります。また「STOP」ボタンで回転を止めることもできます。
レスリー・スピード(本機で言うところのロータリー・スピード)の切り替えはオルガン演奏の醍醐味の一つであると思うのですが、この回転感、実によく再現されていると思います。惜しいのはこの「FAST」ボタンが本体やや右側に設置されていること。基本的に右手で演奏しつつ頻繁に左手でSLOW/FASTを切り替えることを考えるとちょっと使いにくいです(ただし後のモデルでは改善されている)。
なおこのROTARY SPEAKERはエレピ系音色に掛けても面白いですね。お試しあれ。
記事は続きます。。。
というわけでオルガン・セクションのお話はこれにておしまい。続きの記事は以下です。
続き→「CLAVIA Nord Electro(初代機) ~【その2】ピアノセクションについて」
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※1 HAMMOND A100 …B3およびC3のバリエーションとも言える機種で、本体にアンプやスピーカー、スプリング・リバーブなどを内蔵した家庭向けモデル。筐体はB3などに比べスリムになったが、内蔵スピーカーを装備しているため重く、ロックやジャズのライブで使われたケースは少なかった。
仕様
■鍵盤:61鍵/73鍵(両機ともセミウェイテッド/ベロシティ・センシティブ対応)
■オルガンセクション:
ドローバー数:9(8段階のLEDから構成されるバー・グラフ・タイプ)
パーカッション:2nd/3rd
ビブラート:3種(V1~V3)
コーラス:3種(C1~C3)
■ピアノセクション:
内蔵タイプ:5種(Rhod, Wur, Clav, El.Grand, Ac.Grand) ※ただし最初期のバージョン
PRESENCE機能付き(→パラメトリックEQ)
■内蔵エフェクト:
MODURATIONS(Tremolo, Pan, RingMod, Wa-wah, Wa-wah2, Autowah)
EFFECTS(Flanger, Flanger2, Phaser, Phaser2, Chorus, Chorus2)
■外形寸法:900(W)×78(H)×290(D)mm ※Sixty One
■重量:7.8kg(Sixty One)、9.4kg(Seventy Three)
■発売当初の価格:240,000円(Sixty One)、280,000円(Seventy Three) ※いずれも税抜
■発売開始年:2001年初頭頃