1970~80年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】
【Vol.141】YAMAHA QX1 ~ヤマハの本格的シーケンサー・シリーズ「QX」第1号機[1984年]
2018/11/25
今回ご紹介するのはヤマハの「QX1」というマシンです。発売は1984年で、価格は480,000円。いわゆるシーケンサー専用機(ハードシーケンサー)であり、同社が出した本格的シーケンサーシリーズ「QX」の第1号機でもあります。
当時はMIDIが電子楽器のシーンに登場して間もない時代だったのですが、本機はいち早くMIDIに対応した超本格デジタル・シーケンサーとなっています。なお音源は内蔵していません。
特徴
基本的な音符データ(音の高さ、音の長さ、音量など)に加え、各種コントローラー情報(例:ピッチベンド、モジュレーション、サステインべダル、音色チェンジ)など、総合的な演奏データをMIDI記録することができるデジタル・シーケンサーです。
トラック数は8でありもちろん完全ポリフォニック。パネル右前面部には5.25インチ(2DD)のディスクドライブを搭載し、汎用のフロッピーディスクにデータを書き込んでいきます。フロッピー1枚につき、32バンク(=32曲)、8チェイン(=8曲を連続して演奏する)、ノート情報にして約80,000音ものデータが記憶可能。
なお、QX1の同時発音数には制限はありません。また音符分解能は、当時としては驚愕の「4分音符=384」となっています。
分解能について
音符分解能は、一般に数字が大きいほど細かい演奏情報が記録出来るため、シーケンサーのスペックの中でも重要な項目の一つと言えます。QX1では「4分音符=384」となっていて、これは当時としてはとんでもなく優れた数字でした。ちょっとしたリズムのタメ、ツッコミなども記憶可能であり、実際プロの現場などでは、一曲丸々リアルタイム演奏してメモリーし、あとからエディットするといった使われ方もされたそうです。
入力(メモリー)方式について
MIDI鍵盤とつなげて演奏データをそのまま記憶する「リアルタイム方式」と、QX1本体の入力キーを使って打ち込む「エディット方式」(→一般的にはステップ入力と呼ばれる)の、大きく分けて2つの方式があります。他にも、パンチ・イン入力なども対応しています。
MIDI方面
本体背面には、MIDI IN(×1)、MIDI THRU(×1)および、独立した8つものMIDI OUT端子を備えています。これは今見ても結構なインパクトですね。。これにより、最大8台のMIDI機器を接続して同期演奏させることが可能となります。
そういえば、以前本ブログでも紹介した「C1」という音楽専用コンピューターにも8MIDI OUT端子が装備されていました。QX1の「完全プロ仕様」といえる設計思想は、のちのコンピューター・C1にも受け継がれたという感じでしょうか。
関連記事:「YAMAHA MUSIC COMPUTER 「C1」 ~80年代の音楽専用コンピューター![1988年]」
5.25インチディスクドライブについて
当時パソコン方面の主流でもあったいわゆる「5インチフロッピーディスク(2DD)」を採用しています。なおQX1では、フロッピーディスクを本体に入れていないと全く使えないという仕様になっています。おそらくフロッピーに直接データを書いているのではないかと思われますが、本体メモリが(どの程度)あるのかは謎です。。おそらくバッファメモリ的な感じでごく少量な感じだったと想像できます。
音源の相棒的存在・TXシリーズについて
QX1は音源を内蔵していなかったため、実際に音を鳴らすには外部音源が必要となってきます。そこでヤマハさんが音源パートナーとして指名していたのが、同社の「TX816」や「TX116」といったFM音源モジュール。これらTXは要するに「シンセサイザー・DX7」の鍵盤を取り除いた音源部のみのユニットであり、QX1は実際TXシリーズとの連携を高めた設計となっています。
関連記事:「YAMAHA TX816 ~DX7が8台分収まっちゃった!?モジュール[1984年]」
つぶやき的な
そんな感じで、QXシリーズのデビュー作にしていきなり究極のMIDIシーケンサーとして君臨していたのがこのQX1ですね。プロ仕様の高価な機材ではありましたが、その性能・装備も桁違いだったと言えるでしょう。
ちなみに写真では分かりにくいかもしれないですが、QX1はとにかく本体がデカいんですよ! 横幅が約52cm、奥行きは約33cm。つまり横幅は1Uとか2Uラックのそれ(48.2cm)と比較してさらに数センチも長いんですよね。。高さも10cmほどあるし、今見ると軍事用の暗号解読機のような物々しさを感じます(笑)
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仕様
■メモリー容量:8トラック、32バンク、8チェイン、最大80,000音
■同時発音数:∞(制限なし)
■分解能:1/384
■搭載ディスクドライブ:5.25インチ(2DD)
■入力方法:リアルタイム、エディット(→いわゆるステップ)、パンチ・イン/アウト
■外形寸法:519(W)×105(H)×329(D)mm
■重量:7.5kg
■発売当時の価格:480,000円
■発売開始年:1984年