CASIO 【ショルダーキーボード】 楽器・機材【Vol.〇〇】
【Vol.108】CASIO AZ-1 ~カシオが出した“本気の”ショルダー・キーボード[1986年]
2018/11/25
今回ご紹介するキーボードは、カシオが1986年に発売した、ショルダー・タイプの「AZ-1」です。発売時の価格は69,800円。国内では(若き日の)難波弘之さんが使用していたイメージが強いですね。
今から30年以上前のものですが、国産のMIDI・ショルダー・コントローラーとしては後発の部類に入ります。ショルダー・キーボードって意外と長い歴史を持つんですね。。
基本スペック
41鍵の標準スケール鍵盤、イニシャル・タッチおよびアフター・タッチ付き。重量は3.8kg(電池除く)、内蔵音源「なし」の、純粋なMIDIコントローラーです。音色チェンジは16バンク×8=合計128と、当時の水準から見れば多数の音色プログラムを制御可能となっていました。
もちろん、ピッチ・ベンド・ホイール、オクターブ・シフト、サスティン・スイッチ、ポルタメント、ソロなど、ショルダー・キーボードとしての必要十分な装備は一通り揃えています。
AZ-1ならではの特徴
2種類の異なるMIDIチャンネルを同時にコントロールできる「デュアル・モード」を搭載しています。本機はチャンネルA、チャンネルBの2つのモードを備えていて、複数の音源からMIDIチャンネル1~16まで自由に割り当てることができます。
また、接続機器の様々な機能を、AZ-1の5つのコントローラー(ホイール×2、スイッチ×2、スライダー×1)に対して任意に定義できる、「デファイン機能」(デファイナブル・コントローラー)を搭載していました。これにより、接続している音源側で受信できる様々な「メッセージ」を、各コントローラーに自由にレイアウトし、手元で制御することが可能となります。
この「メッセージ」の中には『CZ-1 MODE』というものもあり、同社のCZ-1との相性の良さもアピールしていますね。
設計思想は高かったのだけど…
搭載機能の充実ぶりは前述した通りなのですが、軽量化の代償なのか “作りの弱さ”が若干見られました(→剛性が低い)。また、ネック部の3つのホイールの間隔はやや遠くて、3つのホイールを同時に操作するのにはちょっと無理がありました。
メーカーとしては、“同社のCZシリーズ、できれば高級機のCZ-1を音源にしてのセット使い”を想定していたと思われます(→実際、CZ-1との親和性は高かった)。とはいえCZ-1は売れ行き的には伸び悩んでおり、本機の機能を十分に発揮していたプレイヤーは限られていたのかもしれません。
個人的かんそう
「国産三大シンセメーカー」の後発にて設計されたショルダー・キーボードだけあって、“おいしい取り”的な、練りに練った仕様といった感じだったと思います。とはいえ本体質感のイマイチな感じと、カシオトーンに代表されるチープなイメージが本機にも影を落とし、結果的にあまりメジャーな機種になれなかった、という感じでしょうか。。
ちなみに同社の「CZ-101」というシンセでもストラップを取り付ければショルダー・キーボードとしても機能しました。当時の小型シンセによく見られた仕様ですね。それと比べれば本機は本格的な作りになっていますよ!
関連記事:「CASIO CZ-101 ~PD音源方式を採用した本格派シンセサイザー」
おまけ
ネックの先の「フック」みたいな形状は、手が棹からすっぽ抜けるのにも役立っています。片手で高々と掲げたり(→ギタリストがキメでよくやる)、ワイヤレスMIDIだったらぶん回すのにも意外と都合がいいと思われます。でも派手なパフォーマンスをやる前には、安全性は十分に確認しておきましょうね!
仕様
■鍵盤:41鍵(イニシャル/アフター・タッチ対応)
■音色チェンジ数:128(16バンク×8)
■ホイール:ピッチ・ベンド、デファイナブルI、デファイナブルII
■ON/OFFキー:ポルタメント、サステイン、ソロ、デファイナブルI、デファイナブルII
■スライダー:デファイナブル、オクターブ・シフト
■電源:乾電池/カーバッテリー/AC100V(※3電源方式)
■外形寸法:1118(W)×63(H)×235(D)mm
■重量:3.8kg
■発売当時の価格:69,800円
■発売年:1986年