【書籍】『すべてのJ-POPはパクリである【現代ポップス論考】』(マキタスポーツ著)
2018/11/24
今回ご紹介する本は、マキタスポーツ著の『すべてのJ-POPはパクリである【現代ポップス論考】』です。初版は2014年1月。
著者のマキタスポーツさんはミュージシャンであり芸人であり俳優でもあり、多彩な顔を持っていますね。本書の他にもいくつか著作があり、コラムニストとしても活動されているそうです。
本書はJ-POPについての細かな分析を、多くの顔を持つ著者ならではの視点で分かりやすく説明してくれています。タイトルこそやや挑発的というか刺激的ですが、本書を読み終えたあとに個人的に感じたのは「なるほどね感」であり、“パクリ”というタイトルのキーワードから、“オリジナリティーとは何か?”を説くうまい流れになっていると感じました。
本書は以下の4章からなっています。
第1章 ヒット曲の法則
・ヒット曲を生み出す時代背景
・カノン進行は一発屋を生む? etc...
第2章 なぜCDが売れなくなったのか?
・ファッション化する音楽
・AKB48の曲がヒットする2つの理由
・ももクロのジャンクさは確信犯
・ジャニーズという「ジャンルのすごさ」 etc...
第3章 モノマネから発するオリジナリティー
・作詞作曲モノマネはオリジナルなものを生み出す
・オリジネイタータイプとフォロワータイプ etc...
第4章 日本のポップスはすべてノベルティー・ソングだ
・「ノベルティー・ソング」とは何か
・パクリ論争などバカバカしい etc...
第1章の「ヒット曲の法則」は、やや音楽的な側面からアプローチしていて、これは実際楽曲制作をしているアーティストにとっても参考になるのではないでしょうか。またここで触れられる「作詞作曲メソッドのものまね的アプローチ」というのは、説得力があり面白いです。
第2章の「なぜCDが売れなくなったのか?」では、90年代に爆発的にCDが売れた時代を「異常だった」とバッサリ斬っているのがよかったですね(ほんとそう思うわ~)。そして今の時代にCDが売れている「アイドル」「ジャニーズ」「アニメ」「ビジュアル」の4部門についての細かな分析・解説に移行します。
第3章は「モノマネから発するオリジナリティー」。ここからは著者のオリジナルの主観の比率が高くなりますね。「モノマネからのアプローチ」という考え方は、まさに芸人の顔を持つ著者ならではの発想といえるでしょう。
第4章は「日本のポップスはすべてノベルティー・ソングだ」。この本を通じて著者が一番言いたかったことはこの章に凝縮されているのではないでしょうか。「より多くの人々が心地よいと思うメロディーのパターンは出尽くした」から始まり、「元ネタを引用・解釈して新しいものを作っていく」という考えは、確かに他のジャンルでも適用できるような気もします。
つぶやき的な
「パクリか、パクリじゃないかという論争はそもそもナンセンスなものではないか?」という説を、独自の解析の元、説得力を持って提示してくれます。受け手により様々な捉え方ができると思いますが、個人的には面白くてためになったという感じです。
内容は若干マニアックな表記もありますが、クリエイターとして音楽を制作・発表する側の人にとっても、リスナーとして音楽を楽しむ人にとっても、思わず「納得」の内容だと思いますよ。
なお、ほんとは「すべてのJ-POPはノベルティー・ソングである」という題名にするのが著者の真意に拠るところではあったのでしょうが、“引き”を強くするために本タイトルになったのかもしれませんね。。