中古ピアノはどこへ行く?
2018/11/23
『ピアノ売ってちょうだい~』というのは某有名ピアノ買取業者のCMの一説。テレビCMでもがんがん流しているくらいだから、さぞかし流通量が多いのでしょう。ちなみに新品のピアノのテレビCMはほとんど流れませんね。
上記のCMは有名過ぎますが、「中古ピアノ買い取ります」という新聞広告等もよく見かけます。買取をするからにはその後の「販売」があるはずですが、重くて音が大きくて高価な「本物のピアノ」を必要としている日本の一般家庭がどれだけあるでしょう。特に都心では、近隣への音量配慮、必要に応じて部屋の工事など、クリアしなければいけない問題がいくつかあるはずです。
改めていくつかの中古ピアノ買取業者のHPを読み込んでみたところ、非常に興味深いことが分かりました。とかいって案外世間一般の常識だったりして。。まとめてみましたのでどうぞ。
日本でピアノが普及した時代背景
日本では高度経済成長期に、子供の音感情操教育の一環で、どの一般家庭でもピアノがよく売れた時代がありました。当時は弾く人もいないのに購入したというケースもあったみたいです。一種のブームですね。
しかし80年代初頭をピークに日本のピアノブームは終焉を迎え、その後徐々に使われなくなったピアノは大きな黒い調度品となり、果てはただのトロフィー置き場と化すなど(笑)、非常に肩身の狭い思いをしてきました。
海外の昔のピアノ事情
日本の高度経済成長期、近隣のアジア諸国にもピアノ・メーカーはもちろんありましたが、そこは今も昔も高品質の “メイドインジャパン”。実直な作りの日本製ピアノには人気が集まりました。とはいえ新品はあまりに高価であったために、巨大な日本製中古ピアノの市場が形成され始めたという感じです。
この頃の中古ピアノの輸出先を見ると、中国、マレーシア、インドネシアなど、広く東南アジア全域にわたっていました。なおその頃は、主に現地の学校とか公共の施設に設置されることが多かったみたいですね。
世界的な材料(木材)不足問題
「ハカランダ」って聞いたことありませんか?。かつてピアノでは響板に使われてたりしました。このハカランダ材ですが非常に高価で、無差別伐採の危機から守るために、ワシントン条約(※1)の輸出禁止品目に指定されました。世界中でハカランダを使用したギターの価格が高騰した過去は、おじさんギタリストからすればよく知っていることだと思います。
またかつて白鍵に使われていた象牙も、この条約の輸出禁止対象品目です。禁止品目ではなくても、ピアノに多く使われている無垢の木材などの入手が難しくなる状況があるようです。
そのように日本でも価格以外のことを理由に、別の意味での中古ピアノ市場が形成されてきます。
そして中古ピアノは世界へ
買い取られた中古ピアノはメンテナンスされたのち、海上コンテナ詰められて、アジアのみにとどまらず世界数十ヶ国に送り届けられています。
感想
中古ピアノはもちろん国内流通もされますが、輸出量の方が圧倒的に多いらしいです。誰にも弾かれることなく部屋の片隅で数十年も放置されているよりも、ピアノにとってもピアノを待っている世界の人々にとっても幸せなのだろうと思ったりします。
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※1 ワシントン条約… 正式名称は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」。希少な野生動植物の国際的な取引を規制する条約であり、1975年7月1日より効力発生。英文表記の頭文字を取ってCITES(サイテス)とも呼ばれる。