【雑誌】『キーボード・マガジン・プロフェッショナル』NO.3&4(リットーミュージック発行)
2018/11/26
今回ご紹介する雑誌は、『キーボード・マガジン・プロフェッショナル』のNO.3およびNO.4です。発行はリットーミュージック。キーボード・マガジンの別冊として、1987~88年にかけて計4冊発行されたうちの2冊です。当時の定価は各1,500円。
この雑誌は以前本ブログで『【雑誌】『キーボード・マガジン・プロフェッショナル』(リットーミュージック発行)』として取り上げたことがあるのですが、このNO.3およびNO.4は「総力特集 サンプリングのすべて(前編/後編)」となっていて、ややコンセプチュアルな2冊ということで別途記事にさせて頂きました。
ちなみに表紙を飾ったのは向谷実氏(→NO.3。当時CASIOPEA)、小室哲哉氏(→NO.4)で、当時国内を代表する売れっ子キーボーディスト2人といった感じですね。なお『キーボード・マガジン・プロフェッショナル』自体がどのような雑誌だったのかは、以前の記事から必要に応じ確認してみてください。
そもそもサンプリング(サンプラー)とは
サンプラーとはひとことで言うと、「世の中に溢れるあらゆる音を素材として取り込み、それらの音に “音楽的な”様々な修正を加えた上で、音程を付けて再生できる機器」といったところです。そしてその “音を素材として収録する”という行為が、広義の “サンプリング”という行為であると言えます。
当時はまだシンセサイザーの内蔵音源では、ピアノやストリングスなどに代表される生音系楽器の音をリアルに近い音色・ニュアンスで鳴らすのが難しいという時代でした。そこでこのサンプラーというマシンを使うことにより、上記のような生楽器の音だろうが、他機種からもらったシンセの音色だろうがペットの鳴き声だろうが、鍵盤で音程付きで再生することが可能となったわけです。
初登場した70年代後半頃には1,000万円以上もしていた大型システムのサンプリング・マシンでしたが、技術の向上およびパーツの低価格化により各社も力を入れ、1987~88年頃にはコンパクトで高性能なサンプリング・システムが概ね30~40万円未満で揃うようになりました。これはアマチュアでも手の届く価格帯であり、その頃のサンプラー市場は大いに盛り上がりを見せたといった感じですね。
サンプリングの実際
音を収録するという行為は、録音機器やマイクがあれば誰でもできることです(→このように個人が手作業でサンプリングすることをユーザー・サンプリングと言いました)。ただし “音楽的に使える”素材集めおよび編集(修正)は、当時の一般的なユーザーからすれば非常に手間がかかり難易度の高いものでした。
そこでメーカー(あるいはソフト制作業者)は、各サンプリング・マシン専用の高品位な音色ライブラリーをフロッピー・ディスクなりCDで供給し、ユーザーはそれらをお金を払って手に入れる(音色を買う)というのが実際のところは一般的だったのです。プロでも、市販の音色ライブラリーをほとんどそのまま(あるいは多少のエディットで)使っていたケースが多かったそうです。
NO.3(総力特集 サンプリングのすべて ~前編)の特色
NO.3はサンプラー(サンプリング・マシン)というハードウェア目線を中心に展開された特集でした。冒頭こそサンプリングに関する基礎知識の記述がありましたが、その後は当時の各メーカーごとの最新ハードウェアについて、細かな操作ノウハウの紹介がされています。取り上げられた各社サンプラーは大まかに以下。
・Roland S-50/S-550
・KORG DSM-1
・CASIO FZ-10M
・AKAI S900
・ENSONIQ EPS
・E-mu Emulator III
上記機種は以前本ブログでも紹介させて頂いたものもいくつかありますね。またNO.3では、上記6機種を比較のために試聴・試奏したレポートなども書かれています。
関連記事:
「Roland S-50 ~「サンプリング未来型」と銘打たれた86年製ローランド…」
「AKAI S900 ~世界中に広まったアカイ・サンプラーの定番機[1986年]」
「E-mu Emulator III(EIII) ~イミュレーター・シリーズの3代目[1988年頃]」
NO.4(総力特集 サンプリングのすべて ~後編)の特色
上記6機種の音色データやそれをストックしたディスク(→音色ライブラリー)に焦点を絞った内容となっています。もちろんハードウェア構成のおさらいなども書かれているので、上記サンプリング・マシンのユーザーならば本誌だけでも十分読み応えはあると思います。
まとめ的な
前述したようにサンプリング・マシンとは「音素材を収録し加工・編集後、音源として使う(ための機器)」というのが元々の意味なのですが、音質や操作性に関するフォーマットは各社統一しておらず、メーカーや機種、あるいは音色ライブラリーのラインナップによる「個性」がそれぞれ出ていました。そこでこのNO.3とNO.4では各社の代表モデルによる “違い”を詳細に記述してあるといったところですね。
NO.4では特に、「事実上サンプリング・マシンとは、使える音色ライブラリーをいかに備えているかによる」というユーザーからのニーズに端的に応えた形となっているという感じでしょうか。。
こういった別冊誌を2号に分けて出版しちゃうほど、当時は “サンプリング”という言葉がミュージシャン/キーボーディストにとってホットワードだったことが伺い知れます。
関連記事:「【雑誌】『キーボード・マガジン・プロフェッショナル』(リットーミュージック発行)」
キーボード・マガジン別冊誌『キーボード・マガジン・プロフェッショナル』(NO.3およびNO.4)
■発行所:株式会社リットーミュージック
■発行日:
NO.3:1988年4月30日
NO.4:1988年7月31日
■当時の定価:各1,500円