1970~80年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】
【Vol.305】YAMAHA QX21(/QX7) ~80年代半ばの低価格MIDIシーケンサー[1985年]
2018/11/28
今回はヤマハのデジタル・シーケンス・レコーダー「QX21」という機種を紹介してみたいと思います。発売は1985年、定価は45,000円。MIDI端子を装備したシンセサイザーやリズムマシンなどと接続して録音・自動演奏システムを構築することができるという、MIDIシーケンサー/レコーダーといったところですね。音源は内蔵していません。
以前本ブログでも「QX1」(1984年)というプロ仕様のシーケンサーを取り上げたことがあるのですが、それの翌年にリリースされたハイコストパフォーマンス・モデルといった感じでしょうか。否、型名や発売時期こそ近いですが、こちらは最初から初心者向けの作りと言っていいでしょう。ちなみに同社のTX7などと似通ったデザインになっていますね。
概要
2トラック(各16音ポリフォニック)仕様のMIDIシーケンサー。分解能は4分音符=96。最大約8,100音の記憶が可能で、入力方法もリアルタイム/ステップの両方に対応します。
入力方法
リアルタイム入力は、一般的なMIDIキーボードと接続し鍵盤を演奏・録音していくというごく普通のスタイル(後からのクオンタイズも可能)。またMIDIチャンネルの指定を始め、キー・ベロシティ、アフタータッチ、ベンダーなどのMIDIデータ情報を受け取るかどうかを個別に設定もできます。
ステップ入力でも、基本的にMIDIキーボードを接続して行います。よく見ればパネル上に配されているボタンも非常に少ないですね。。まずは音符の長さを指示し、次に音符をMIDI鍵盤で入力するという手順です(ただし休符はRX21本体から入力)。
ちなみに本機のステップ入力では全音符とか二分音符は直接打ち込むことはできず、最も長い音符である四分音符をタイでつなげるという操作になります。なるほどそうきましたか。。ちなみにゲートタイム(※実際に鳴る音の長さ)は80%もしくは100%のどちらかを選択するという仕様になっています。
トラックへの録音について
本機では2つのトラックがありますが、録音およびエディットができるのは「トラック1」のみ。よって録音をすると必ずトラック1にデータが記録されます。じゃあトラック2は何のためにあるのか?というと、トラック1にて録音・エディットしたデータの移し場所として使用します。
完成したトラック1のデータはトラック2に移動し、そして新たに(空になった)トラック1でデータを作り、トラック2にミックスしていくという手法。レコード時にMIDIチャンネルを指定して “オーバーダビング→トラックダウン”を繰り返すことにより、一台でマルチトラックのMIDIレコーダーとして使用できるといった感じですね。
補足・トラック間でできる編集機能
EXCHANGE(→トラック1と2を入れ替える)、CHAIN(→トラック1のデータをトラック2のデータの後に連結させる)、INSERT(→トラック1のデータをトラック2の任意の小節位置に挿入する)などの機能があります。
また、“第3のトラック”と見ることもできる・テンポラリバッファ(データの一時メモリー領域)も備えているそうですよ。
データメモリーについて
本体内にバックアップ用電池を内蔵しており、電源を落としてもデータはメモリーされます。データが増えてきた際には、背面のCASSETTE端子からカセットレコーダー(データレコーダー)に接続し、テープメディアに保存も可能です。
余談的な
本機QX21の前にはよく似た形および仕様の「QX7」という機種がありまして、この2台の違いは何だろうと当時のカタログ等を見比べてみたのですが、違いは見られませんでした。以下はWikipedia情報です。
QX7
1985年発売。価格は78000円。本体にデータバックアップ機能が無く、電源を切ったまま数日放置するとデータが消失した。発売して間もなく、同じスペックのままバックアップ電池を備えたQX21へ移行。
※出典: 「ヤマハ・QXシリーズ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ソースとしては若干信頼性に欠ける部分もあるWikipediaですが、まあおそらくそういうことなのでしょう。
QX7/ヤマハ(株) 雑誌広告より画像引用
なおQX7の発売当初の定価は78,000円であり、そのわずか数か月後に発売されたQX21では45,000円となっています。うーむ、、この劇的なコストダウンは何だったのでしょうか。。
個人的つぶやき
QX1があまりに一般人にとって手の届かないプロモデル(→定価480,000円)だったのに、QX7やQX21ではその反動なのか極端に手に入れやすくなったという印象ですね。なお現在でも本機やTX7などはハードオフのジャンク品の定番としてしばしば目にすることができます。
音とは全く関係ありませんが、“80年代半ばの個人向け音楽制作現場”を再現VTRで作る際、DX7に本機を2~3台足しておけばぐっとそれっぽく見えますよ。制作会社のスタッフさんにとってご参考までに(笑)
関連記事:「YAMAHA QX1 ~ヤマハの本格的シーケンサー・シリーズ「QX」第1号機」
仕様
■メモリー容量:24Kバイト
キーベロシティ無し→約8,100音
キーベロシティ有り→約6,000音
■録音トラック数:2(各16音ポリフォニック)
■入力方法:リアルタイム/ステップ
■外形寸法:351(W)×50(H)×241(D)mm
■重量:2.3kg
■発売当時の価格:45,000円
■発売開始年:1985年