【Vol.213】Roland JW-50 ~統合的シンセサイザー・ワークステーション、一部斜めってます[1992年]
2018/11/26
今回ご紹介するキーボードは、ローランドのワークステーション・「JW-50」です。1992年発売で当時の定価は195,000円。これは何かと言うと、豊富な音色を内蔵し、簡単操作の本格的シーケンサーを搭載、さらにバッキング機能までも備えた統合的シンセサイザー・ワークステーションといった趣きの一台ですね。
鍵盤+シンセ音源+シーケンサーといういわゆる「オール・イン・ワン型」のシンセサイザーに加え、自動バッキング機能まで内包しちゃったということもあり、この一台のみで曲を作りまくったという人も多かったのではないでしょうか。本機はポストプロ用の本格的な機材というわけではなく、むしろ気軽にプリプロ用として使用するのが正解だと思います。
JW-50/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
音源部について
同社のJV-80(1992年)に代表される音源素材・PCMウェーブフォームを内蔵した、いわゆるリアル音色を目指した音源部を搭載。音色の基本単位といえる「トーン」は、プリセット128/ユーザー128で、ドラムセットも9種内蔵しています。
トーンには「ソース(・トーン)」(→波形を加工したもの)というのも含まれており、各ソース・トーンは「バリエーション」と呼ばれる裏トーンもいくつか持っています。これにより総プリセット・トーン数は317(+ユーザー128)という、当時としてはなかなかの音色数を誇っていました。
全体的な音色の印象としては、ハイクラスのシンセ音源で見られるような音ヌケの良さはあまり見られませんが、幅広いジャンルに対応しているので作曲する分にはさほど不満はない、といった感じでしょうか。なおソース・トーンについてはDTMを意識した感じの作りですね。
音色エディットについて
本機は “イージー・エディット”をうたっており、扱えるエディット・パラメーターも8つのみとなっています(カットオフ、レゾナンス、アタック、ディケイ、リリース、ビブラート×3)。エディット自体は容易で、必要最小限のオペレーションで好みの音に近付くよう設定されているといった印象ですね。
まあJW-50はどちらかというと作曲ツールとしての機能に重きが置かれているようなコンセプトの製品なので、音源部はほぼプレイバック・サンプラーと割り切ってもいいかもしれません。
シーケンサー・セクション
同社のシーケンサー単体機・「MC-50」クラスの機能を搭載。本体メモリー約46,000音、分解能は四分音符=120、全16トラック仕様であり、リアルタイム/ステップ/ループなどのモードでレコーディングが行えます。またマイクロスコープ・エディット機能により細かな編集もOK。テンキーやダイヤルも装備されているので全体的な使い勝手はよいですね。本機のシーケンサー部はこのJW-50の心臓部と言ってもいいかもしれません。
また本体パネル中央にある8本のフェーダーにより、各トラックのボリュームやパンをリアルタイムで調整可能なのもちょっと便利です(→コンピュ・ミキサーと呼ばれていた)
なお本機はGSスタンダードおよびSMF(スタンダードMIDIファイル)に対応しています。3.5インチFDDも内蔵しているため、外部ファイルをメディアから気軽にロードしたり、作った曲をセーブすることも簡単です。
バッキング機能
コードとスタイルを指定すれば、リズム、ベースといったバッキングを自動作成してくれるという機能。スタイルは計90種類を内蔵し、コード進行も様々なパターンのものがあらかじめ用意されています。PLAYボタンを押せばとりあえずパターンが鳴りますし、ディスプレイ下にあるファンクションキー(F1~F5)を切り替えることにより、あらかじめ設定されたスタイルをブロックごとに変更可能となっています。
なおコード進行は鍵盤からではなくフェーダーを使って入力するという、ちょっと変わった仕様になってます。インテリジェント・キーボードを長年作り続けてきたローランドさんが、本機開発当時はこの入力方法がBESTと判断して採用したのでしょう。変わっているとか言いますまい。。
関連記事(ローランドのインテリジェント・キーボード):
「Roland E-20/E-10 ~シンセサイザーと自動伴奏の融合[1988年]」
個人的かんそう
そんなJW-50ですが、直系の後続機種がリリースされることはなく、JWシリーズとしてはこれ一台となっています。実際、セールス的にはあまり振るわなかったらしいです。なおローランドの電子鍵盤楽器の系譜としては「インテリジェント・キーボード」ではなく「シンセサイザー」の部類に入ってるんですよね、これ。
うーん、何といえばいいんですかねー、個人的にはデザインがダサいというのもあるんじゃないかなーと思うのです。人の好みはそれぞれですが、この手の “一部斜めのデザイン”というのはパネル上のスペース的にも無駄を生みがちだし、思ったよりもカッコよくないと感じるのは僕だけでしょうか。。しかもこれ61鍵で横幅も短いので、斜めにする必然性があったのかというのも謎です。
当時の本格的な製品ラインナップ(JV-80、JV-1000等)からすれば音源部も劣るし、バッキング機能も外部から新しいスタイルを追加しないとワンパターンになりがち。そして195,000円という決して安くはない価格設定は、全体的に中途半端な仕上がりになっちゃったというイメージが拭えないです。個人的には、ですよ。。
関連記事:
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仕様
■鍵盤数:61鍵(ベロシティ/アフタータッチ付き)
■最大同時発音数:24音
■パート数:16マルチ・ティンバー
■トーン:プリセット128種、ユーザー128種、ソース・トーン(GSキャピタル128、GSバリエーション61、MT-32トーン128)
■ドラム・セット:ドラム・セット9種、SFXセット1種
■内蔵エフェクト:リバーブ、コーラス
■シーケンサー本体メモリ:約46,000音、999小節、8ソング
■外形寸法:997(W)×115(H)×377(D)mm
■重量:7.5kg
■価格:195,000円(税抜)
■発売開始年:1992年