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SEQUENTIAL CURCUITS 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.391】S.C.I. PROPHET 2000(/2002) ~シーケンシャル初のサンプラー[1985年]

2018/11/28

 

 

 はい今回ご紹介するなつかし機材は、Sequential Circuits社(以下S.C.I)が1985年に発売したサンプラー「PROPHET 2000」です。当時の国内定価は980,000円でした。なお2000の方は鍵盤付きモデル、2002はそれのラックマウントモデルとなっています。
 
 ちなみに同名のMTB(マウンテンバイク)も存在するっぽいのですが、この記事で取り上げるのは当然電子楽器の方ですよ!

 

 

 1985年のサンプラー市場といえば、AKAI S612やENSONIQ Mirageなど、50万円以下の低価格帯モデル(そうはいっても庶民には十分高価だったが)が次々登場し、サンプラーがより身近になった年とも言えますね。
 
 
 関連記事:
 「AKAI S612 ~アカイ・サンプラー「S」の元祖[1985年]
 「ENSONIQ Mirage (DSK-8) ~「幻想」ではない、黎明期サンプラーの…[1985年]
 
 
 そして本機は、あのアナログシンセの名機・PROPHET-5を生み出したS.C.I.が手掛けた初の(デジタル)サンプラーといったところです。MIDIも装備してますね。では早速、PROPHET 2000の方を基準にしつつ以下に内容を記してみましょう。
 
 
 

まずは外観!

 標準サイズの61鍵盤を搭載。そして何といっても特徴的なのが、薄膜スイッチ(メンブレン・スイッチ)を採用したパネル上のボタン類ですね。当時流行していたフラットなボタン・デザインは、80年代半ばのデジタル・キーボードのど真ん中といったデザインです。
 
このキーボードは、VCAとVCFに働くベロシティ・センシティブ・タイプとなっています。
 
 
 

サンプリング基本性能

 量子化ビット数は12ビット。サンプリング周波数は 15.625kHz、31.250kHz、41.667kHzの中から選択可能です。まあ何ともキリの悪い数字ではありますね。。ここでの最大41.667kHzというのは、当時のサンプラーの性能としては非常に優れていた数字といったところです。
 
 
 なお気になるサンプリング・タイムは、15.625kHzで約16秒、31.250kHzで約8秒、41.667kHzで約10秒だったそう。
 
 
 高周波を含むワイドレンジな金属音などは41kHzで短時間サンプリングして、高周波をあまり含まない音は周波数を落としてサンプリングするとメモリーの節約になったと思われます。そう、この頃のメモリーは非常に高価であり、ユーザー側もいかにその限られたメモリー内でやりくりするかを必死に工夫していたという感じですね(笑)
 
 
 

そのメモリーについて

 標準でA/Bバンク合わせて256Kバイト(128K×2)のRAMを内蔵。なおメモリーは拡張でき、拡張次第で上記のサンプリング・タイムが2倍/4倍まで伸びたそうです。
 
 
 また外部記憶装置として3.5インチFDD(片面倍密度・1DD)を搭載し、一般的な安価なフロッピーディスクにストアしていくこともできました。

 

 

 

サンプリング機能についての補足

 本機では最大16ポイントまでのマルチ・サンプリングが可能。当時で言えば、広い鍵域を持つピアノ音色をリアルに鳴らすために効果的に使えたと思われます。これら16種類のサウンドを組み合わせた12種のプログラム・データは、上記の3.5インチFDDに保存することもできました。
 
 
 他にも、複数の異なる波形を重ねてプレイするスタック・モードや、ディレイ、デチューン、リバースなどの機能も備えていました。あとアルペジエーターも内蔵してますね。
 
 
 

実はサウンド・ウェーブも搭載!

 本機は基本的にサンプラーのカテゴリーですが、サンプリング・サウンドとは別にウェーブテーブルを搭載しており、それまでの伝統的なシンセ・サウンドも創出することが可能でした。もちろんサンプリング・サウンドとの組み合わせによるプログラムも可能。
 
 
 これらサウンドは、サンプリング/ウェーブテーブル共に、VCFおよびVCA、あるいはEG(ADSR)パラメーターによる独自のサウンド作りが行えました。
 
 
 

PROPHET 2002について

 
 PROPHET 2000がセールス的に好調だったため、(PROPHET 2000の)最初のリリースから数ケ月後に発売されたラックマウント・バージョン。国内定価は850,000円でした。
 
 
 3Uのラックサイズには、鍵盤を除いたPROPHET 2000のほぼ全ての機能が網羅されています。2000よりもメモリー領域が拡張されていたという文献もあったのですが、確認のしようがなくちょっと不明ですね。ご参考までに。
 
 
 

おまけ・PROPHET 3000について

 
 1987年に発売されたラック型ステレオサンプラー。本機ではサンプラーのビット数が16に増えており、外部LCDディスプレイ付きコントローラーを採用するなど先進的なデザインも持っていました。
 
 
 とはいえ既にその頃はS.C.I.の経営が思わしくなく、同社の倒産直前にごくわずかな数量のみ製造されたそうです(同年、YAMAHAがSequentialを買収することになる)
 


S.C.I. Prophet 2000/(株)モリダイラ楽器 雑誌広告より画像引用
 
 
 

つぶやき的

 個人的には、90年代に勤めていたシンセ専門店にて本機が長期間(中古)在庫として残っていたのが記憶に残っていますね。面倒そうだったのであんまり触らなかったけど。。
 
 
 なお本機のVCF、VCAはアナログ回路を採用しており、見た目の近未来デジタルっぽさ(笑)を裏切る、暖かみのあるサウンドには定評があったそうです。時代がデジタルに向かう過渡期にリリースされた、ちょっとアナログライクなデジタル・サンプラーということで個性的な一台といったところでしょうか。
 

仕様
PROPHET 2000

■鍵盤:61鍵(ベロシティ・センシティブ、スプリット&レイヤブル)
■ボイス数:8ボイス(各2デジタルオシレーター、VCA、2ADSR)
■メモリー:256K RAM内蔵/3.5インチ1DD搭載(片面倍密度)
■サンプリング周波数:15.625kHz、31.250kHz、41.667kHz
■量子化ビット数:12ビット
■外形寸法:1105(W)×104(H)×317(D)mm
■重量:14.5kg
■発売当時の価格:980,000円
■発売開始年:1985年

 

PROPHET 2002
■外形寸法:480(W)×130(H)×290(D)mm
■重量:10.5kg
■発売当時の価格:850,000円
■発売開始年:1985年

 

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