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その他メーカー 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.369】NEC PC-6001 ~パピコン、ぱっ![1981年]

2018/11/28

 

 

 今回はちょっと趣向を変えて、個人的に思い出深い昔のパソコンを紹介してみたいと思います。NEC(当時の新日本電気)が1981年に発売した家庭向けパソコン「PC-6001」です。メーカー希望小売価格は89,800円(本体)

 

NEC PC-6001

 

 8ビット機のいわゆる入門機の位置付けですが、当時の家庭用ホビーパソコンとしては画期的だった、三重和音のPSG音源、9色のカラー表示、ひらがな表示などに対応していました。『パピコン』という愛称はことさら有名です(自分の中では)
 
 
 
本ブログでも以前、“音楽制作向けコンピューター”ということでいくつかパソコンを紹介させて頂いたのですが、今回のPC-6001はいわゆる “音楽特化型”ではなくホビー全般に使えたパソコンですね。とはいえ本ブログらしく音楽的視点でまとめてみたいと思います。
 
 
 

はじめに・NEC PC-6001 “パピコン”について

 キーボード+本体が一体化された筐体となっており、本体定価は89,800円。当時のパソコン(マイコン)としては比較的お手頃価格でした。ただしこれはあくまで本体のみでの価格であり、必要なオプションは別途買い揃える必要がありました。以下は一例。
 

CRTディスプレイ …画面表示させるためのモニタ。PC-6000シリーズの純正オプションとしては、当時カラー・ディスプレイの他にも廉価なグリーン・ディスプレイが用意されていました。

データレコーダ …音楽用として大量に出回っていたテープレコーダーを利用して、カセットテープにデータを書き込むというもの。自作したBASICプログラムなどをセーブしたり、市販のソフトをロードするなどこれもほぼ必須の周辺機器。ちなみに市販のゲームソフトのロードには毎回30~50分ほど読み込ませる必要がありました。

プリンタ …PC-6000シリーズの純正品としては、音符も印刷できる40桁・専用サーマルプリンタ「PC-6021」というのがあって、価格は49,800円。他にも4色まで対応したカラープリンターもありました。

 
 
 ここまでが “パソコン一式”としての標準的なセットといったところでしょうか。まあ家庭用テレビでも一応見れましたし、プリンタも必須じゃないかもだけど、これら純正セットを一度に購入するとなると15万以上にはなったわけで、当時の子どもがお年玉で買えるような金額じゃなかったですね。

NEC PC-6001(advertisement)
PC-6000シリーズ/新日本電気株式会社(NEC) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

で本題。音楽的に何ができたか?

 本機の右側面部にはROMカートリッジ・スロットが用意されており、そこにオプションの『ミュージックエディタ』(※1)というカートリッジを差し込むと、パソコンのキーボードが音楽キーボードに変身します。後述するプログラミングをすることなく電子キーボードのような使い方ができたということですね。
 
 
 PC-6001の広告にも何パターンかあったのですが、音楽好きにとっては興味深い文章が見られる広告もありますね。
 

楽器にもなるパーソナルコンピュータ、パピコン。
シンセサイザー機構を内蔵して、UFOの音から波の音、オルガンやドラムの音まで
あらゆる音づくりを楽しめます。三重和音までの自動演奏も可能。

別売のミュージックエディタを使えば、むずかしい
プログラミングなしで、即キーボードに変身します。
パピコンシンセで、あなたもシンセサイザーミュージシャン。

 ※NEC パーソナルコンピュータ PC-6001 広告より引用

 
 おっと! これはシンセサイザーとしても使えたというこのなのでしょうか!? この辺りはちょっと未確認であり、今後研究?していきたいと思います。
 
 
 ちなみにPC-6001に搭載されていたサウンドチップは「PSG AY-3-8910」というものであり、矩形波(いわゆるピコピコ音)が3系統、ノイズ(いわゆるザーザー音)が1系統、およびエンベロープ発生装置が1系統内蔵されているというもの。
 
このエンベロープが「シンセサイザー機構」の鍵を握っているっぽいですね。。
 

NEC PC-6001(advertisement)
PC-6000シリーズ/新日本電気株式会社(NEC) 雑誌広告より画像引用

 

 

 

サードパーティからリリースされた音楽創作ソフト

 キーボードマガジンでおなじみのリットーミュージックからも、PC-6001用音楽制作向けソフトパッケージがリリースされています。いずれも定価3,000円であり、カセットテープ(1本)+マニュアル本という内容となっています。
 
 
■ミュージック・ハーモナイザー 3VOICES
 作曲したメロディを入力すると、コンピューターがいくつかのコード/伴奏を提示してくれるというソフト。これはお手軽伴奏生成ソフトといったところでしょうか。同時に3声の譜面をディスプレイ表示し、プリントアウトも可能。専用オーバーレイ・シート付属。
 
 
■ミュージック・プロセッサー 3VOICES
 3声による作曲や編曲を2段ピアノ譜でディスプレイ表示。複雑なフレーズもプログラミングによりコンピューター再生できるというソフト。譜面の修正および、転調・移調も簡単操作。専用オーバーレイ・シート付属。
 
おお! これはまさにDTMソフト(の元祖)と言ってもいい内容かもしれないですね。
 
 
■ミュージック・プレイヤー 3VOICES
 付属の伴奏データ集の中から任意のフレーズを選び、メロディとコードネームを入力するとコンピューターが3声の曲に仕上げてくれるというもの。小節の挿入やコピー/削除など、多彩な編集機能を備えたこれまたDTMっぽい内容ですね。
 


(株)リットーミュージック 雑誌広告より画像引用
 
 
 

おまけ・市販ソフトを使わずに自作のメロディを鳴らす!

 PC-6001にはN60-BASICというプログラム言語が搭載されており、手動でプログラミングして音の自動演奏が可能でした。ここでは「PLAY」コマンドを使います。前述したように三重奏まで可能。
 

10 PLAY "T120S13O5CDEFGAB"
20 END

 
 上記はデモ用の超絶簡単プログラム(笑)。冒頭の「T」がテンポ、次の「S」がエンベロープ形状の設定、「O(オー)」がオクターブ、そしてその後の “CDEFGAB”が音階になります。あと、音量や音の長さ、休符の設定なんかもプログラミングできますね。
 
このように組んだBASICは「RUNコマンド」(もしくはF5)で実行します。なつかしー
 
 
 

個人的おもいで

 本機は僕が小学生の頃に発売されたものであり、当時すがやみつる著の『こんにちはマイコン』を熟読していた僕は、親に嫌われるほどしつこつおねだりしたことを思い出します(笑)
 
 
 結局買ってはもらえなかったのですが、お金持ちの同級生が買っていて、これ目当てでよく家に遊びに行ったりしました。ちなみにその友達はのちにPC-8801mkIISRも所有していて、それを1か月単位で貸してくれたりして今思うと本当に感謝なのです。ありがとうかずくん!
 
 
 先行発売されていた「PC-8001」(1979年)はサウンドに関してはBEEP音(周波数固定)のみでした。本機PC-6001は音楽的なクリエーションが可能となった、国内最初期の個人向けパソコンといったところでしょうか。
 
 
 
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 「YAMAHA MUSIC COMPUTER 「CX5」 ~元祖・ミュージックコンピューター
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※1 ミュージックエディタ …型番は「PC-6005 PCS-6141R」。定価は9,800円。なお “PC-6005”という型番はオプションROMカートリッジ全般に付けられていた共通の番号であり、実はちょっと紛らわしかった。そのあとに続く “PCS-…”というのがソフトごとに異なる品番のようなもの。

仕様
■OS:N60-BASIC
■メモリ:RAM16キロバイト(最大32キロバイト)
■サウンドチップ:PSG AY-3-8910(矩形波発生装置3系統、ノイズ発生装置1系統、エンベロープ発生装置1系統)
■グラフィック
 テキストモード:32桁×16行 2画面(RAM拡張時は最大4画面)
 グラフィックモード:256×192ドット(2色) または 128×192ドット(4色) 1画面(RAM拡張時は最大3画面)
■外形寸法:416(W)×90(H)×273(D)mm
■重量:約4.3kg
■発売当時の価格:89,800円(本体)
■発売年:1981年11月

 

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