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1970~80年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.354】Roland EP-10/EP-30 ~電子式ピアノ黎明期のローランド2機種 [1973~74年]

2018/11/28

 

 

 今回は、ローランドが会社設立当初に発売した2種類のキーボードについて取り上げてみましょう。黎明期の国産電子式ピアノ「EP-10」(1973年)および「EP-30」(1974年)です。うーん、相当昔の機種ですね。ちなみにローランドの設立は1972年のこと。
 
 
 

EP-10

Roland EP-10

 

 1973年に発売されたローランド初(※日本初の説も)となる純電子発振式ピアノ。鍵盤数は61鍵で、当時の定価は135,000円でした(免税価格125,000円)。スピーカーは内蔵していません。
 
 
 

内蔵音色/操作系について

 EP-10の内蔵音色は全4種類。音色切替スイッチには、独立した「ピアノI」「ピアノII」「ハープシコードI」「ハープシコードII」のスイッチが設けられており、いわゆるスイッチの同時押しも可能。当時のカタログ等には、2つ以上のスイッチを同時に押すことによって “ユニークな”音色が得られると書かれてますね(笑)
 
 
 操作系も超絶シンプルで、パネル上には上記の音色ボタンの他にはボリュームコントローラー(つまみ)のみというデザイン。逆にこのシンプルさが非常にスリム/コンパクトな筐体を実現しており、持ち運びの感便さにつながっていると言えるでしょう。当時流行していた2段電子オルガンの上に置いて演奏、といった使い方もできたかも。
 
 
そしてダンパーペダル(DP-1)が標準で付いてきました。
 
 
 

EP-30

Roland EP-30

 

 EP-10の翌年(1974年)に発売されたモデル。同じく61鍵ですが、EP-10との大きな違いは鍵盤タッチにより強弱を検出できるいわゆる “タッチ・センス”を搭載している点。これを搭載したのはEP-30が世界初らしいですよ。
 
 
 まあ今となっては当たり前すぎるほど当たり前な機能(機構)なのですが、当時の電子式キーボードとしては、タッチの強弱によって音量を変化させることができるというのは非常に画期的な技術だったわけです。音楽的にも表現の幅が大きく広がったという感じですね。もちろんダンパーペダル(DP-1)も標準付属。
 
 
 またヘッドフォン端子も装備されたため、夜間での練習(音出し)でも便利に使えたといったところですね。
 
 
 

内蔵音色/機能について

 EP-10と同じく「ピアノI」「ピアノII」「ハープシコードI」「ハープシコードII」の4音色を装備。EP-30ではさらに、低音部の19鍵を、「ベース切替スイッチ」によりワンタッチでベース音色に切り替えることが可能。
 
 
 またビブラート・スイッチも装備しており、ワンタッチでビブラート効果を得ることができました。ビブラートは、デプス(→深さ)とレート(→速さ)を独立つまみでコントロールすることも可能です。
 
 
 あと、本体はトランク型のケースに組み込んでいるため持ち運びがしやすいという利点もありました。

 

 

 

個人的かんそう

 ローランド初、日本最初期の電子式ピアノということで、現在の同社のフラッグシップ・ステージピアノである「RD-2000」の源流をとことんさかのぼると、最後にはこのEP-10/EP-30にたどり着くといった感じです。
 
 
 電子ピアノといっても当時は移調機能(キートランスポーズ/オクターブシフト)も無し、オート・アルペジオ機能も無し。選べる音色もごくわずかであり、本物のピアノとは似ても似つかない音色キャラクター。。
 
 
 とはいえダンパーペダル(DP-1)や譜面立て(※EP-30のみ)を標準で付けたりと、“商品としての電子ピアノ”としての原型はここから始まったのかなという感じですね。
 
 
 

余談

 当時の国産電子鍵盤といえばオルガンが主流であり、ピアノ音色はもちろんハープシコードの音色も鍵盤一つで鳴らせるというのはちょっと目新しいポイントでした。
 
 
 その頃の音楽シーンで言えば、スティーヴィ・ワンダーの『迷信』(1972年)や、エマーソン、レイク&パーマーの『ナット・ロッカー』(※1)に代表される、クラビネットをフィーチャーしたナンバーがヒットしてたりしました。EP-10およびEP-30のハープシコード音色は、それらクラビに似ているということで、代用音色として使っていた人も少なからずいたそうですよ。
 
 
 
 関連記事:「Roland EP-09 ~オート・アルペジオ機能を電子ピアノとして初搭載
 

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※1 …EL&P「ナットロッカー」のバンドスコアは、キーボード・マガジン2016Summer号に掲載されている。

仕様(EP-10)
■鍵盤数:61鍵(F1~F6)
■内蔵音色:ピアノI、ピアノII、ハープシコードI、ハープシコードII
■付属品:ペダル(DP-1)、2.5m接続コード(ピンプラグアダプター付き)
■外形寸法:1030(W)×105(H)×285(D)mm
■重量:10kg(本体)
■価格:135,000円(免税価格125,000円)
■発売開始年:1973年
 

仕様(EP-30)
■鍵盤数:61鍵(F1~F6)
■内蔵音色:ピアノI、ピアノII、ハープシコードI、ハープシコードII
■切替スイッチ:音色切替スイッチ、ベース切替スイッチ、ビブラートスイッチ
■付属品:ペダル(DP-1)、譜面立て、2.5m接続コード(ピンプラグアダプター付き)
■外形寸法:910(W)×182(H)×350(D)mm
■重量:14.5kg(本体)
■価格:180,000円(免税価格167,000円)
■発売開始年:1974年

 

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