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E-mu 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.352】E-mu MORPHEUS(モフェウス) ~Z-Planeフィルターを初搭載したPCMシンセモジュール[1993年]

2018/11/28

 

 

 今回はE-mu Systemsの「MORPHEUS(モフェウス)」という音源モジュールを取り上げてみましょう。発表は1993年で、日本での発売は翌1994年。価格は220,000円でした。

 

E-mu MORPHEUS

 

 その頃のE-muの1U音源モジュールといえばProteusシリーズやVintage Keysが有名なのですが、本機Morpheusでは初めて、(E-mu言うところの)“音のモーフィング”を可能にした「Z-Plane」テクノロジーを採用したシンセサイザーとして注目を集めました。
 
 
 

基本スペック

 波形容量8MB。プリセット数はRAMで128音色、ROMで128音色、さらにカードにより128音色となっており、Proteus /1からするとほぼ倍の数値にスペックアップ。シンセ・エンジンはいわゆるPCM音源方式であり、管楽器、弦楽器、ギターなどの楽器音から、効果音として使えるSFX的な音色も備えています。
 
 
 これら音色は16マルチ・ティンバーに振り分けられ、6つの独立したアウトプット(ステレオ×3系統)に自由にアサイン可能となっています。なお同時発音数は32。この辺りはProteusシリーズに同じですね。
 
 
 

Z-Planeフィルター搭載!

 本機に採用されている「Z-Planeテクノロジー」とは、搭載された14基のZ-Planeフィルターにより、異なる波形間の中間値を連続的にモデリングしていくという方式。例えばクラリネットからディストーション・ギターへと次第に変容していくといったように(→モーフィング)、斬新なサウンド変化を生み出すことができます。
 
 
 この独特なフィルターは、6つのパラメトリック・イコライザーおよび1つのローパス・フィルターを組み合わせたものだそうです。うーん、、だったら『これはフィルターじゃなくてEQの一種じゃないんかい?』と思ってしまうのですが、本機の取扱説明書では “パラメトリック・フィルター”とか記述されてるし、E-muさん的にはそうゆうことだったのでしょう(謎)
 
 
 この辺りは個人的にも理解しきれていない部分もあるのですが、おおむねフィルターの特性をリアルタイム変化させることにより音色の連続的変化を実現していると捉えてよさそうです。前述の例でいうと、クラリネット的な倍音構成からディストーション・ギター的な倍音構成へと変化している感じと言いましょうか。
 
 
 となるとですよ、このZ-Planeフィルターの元々の正体はイコライザーであるため、元々含まれている倍音が少ない波形(フルート音色などに代表される三角波など)は、イコライザーにてブースト/カットさせようがあまり音色変化はないということになりますね。本機のモーフィングを堪能するには、ノコギリ波に代表されるような高音域の倍音成分を多く含んだ音色をチョイスするとよいと思います(ちょっと難しくなってすみません。。)

 

 

 

エフェクター内蔵!

 2系統(A/B)のデジタル・エフェクターを搭載。これはProteusシリーズでは見られなかった装備であり、本機のセールスポイントの一つであったと思います。
 
 
 「A」系統ではリバーブを始めとしたいわゆる空間系、「B」系統では空間系に加えリング・モジュレーターも用意されています。逆にエフェクティングによる積極的な音作りはこのリング・モジュレーターだけと言ってもよく、本機の内蔵エフェクターは基本的に音場を整えるためのもの、と捉えた方がよいと思います。
 
 
 

操作性について

 ディスプレイは相変わらずの「16文字×2行」という非常にそっけないもの。前述したフィルター部を駆使すれば非常に凝った音作りも可能になるのですが、いかんせん本体のみでの操作性はよろしくないですね。
 
 
 初期Proteusシリーズ(フィルター機能なし)では、エンベロープやLFOによるモジュレーションによるエディットは慣れればなんとかこなせる、という感じでしたが、本機では複雑なフィルター部が追加されている分、さらに操作が難解化してしまったという感じ。一応、コンピュータ用のエディター/ライブラリアン・ソフト(UNYSIN等)も用意されていたのですが、それらエディター・ソフトがなければ、本機の本格的な音作りは実際のところ不可能と言ってもいいかもですね。。
 
 
 

個人的つぶやき

 80年末~90年初頭にかけてProteusシリーズ、Vintage Keysとヒットを飛ばしてきたE-muが、久しぶりに本腰を入れて手掛けたシンセサイザーといったところですね。のちの同社の音源モジュールでも多く見られた「Z-Plane」フィルターが初お目見えした機種としても名を残しています。
 
 
 ちなみに名前のMorpheusは、モーフィング+プロテウスと見ていいのかな?。プリセットに既存の楽器音を備えている辺りは多少Proteus /1/2/3譲りと言えますが、このモーフィング・フィルターは(倍音構成によっては)相当な変化をもたらしたそうで、元の楽器音の原型をとどめないほどにグチャグチャにすることもできたそうですよ(笑)
 

 
 
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仕様
■音源方式:Z-Planeシンセシス
■最大同時発音数:32音
■メモリ:8MB(16MBまで拡張可)

■データ・エンコーディング:16bitリニア(18bitアウトプットDACs)
■マルチ・ティンバー数:最大16パート
■内蔵音色数:384音色(128RAM、128ROM、128CARD)
■内蔵エフェクト:2系統(ステレオ)
■外形寸法:438(W)×44(H)×216(D)mm
■重量:3.1kg
■発売当時の価格:220,000円
■発売開始年:1994年

 

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