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CASIO 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.349】CASIO VZ-1(/VZ-10M) ~「iPD音源」システムを積んだデジタルシンセ[1988年]

2018/03/11

 今回ご紹介するシンセサイザーは1988年にカシオから発売された「VZ-1」です。発売時の定価は148,000円(のちに改定)。

 

CASIO VZ-1

 

 当時のカシオのシンセといえば、以前本ブログでも取り上げたCZシリーズというのがあったのですが、VZ-1ではそのシリーズ名が刷新されたように中身(特に音源方式)も変化が見られ、当時非常に高度な音作りを可能にしたデジタル・シンセサイザーといったところです。
 
 本記事では、VZ-1と同時期に発売された、VZ-1のラック版・VZ-10Mも簡単に紹介してみたいと思います。
 
 
 

VZ-1概要

 8基の音源回路(モジュール)で1音色を構成するカシオ独自の「iPD音源」を新採用。デジタルならではのクリアなサウンドはもちろん、暖かく厚みのある音作りにも対応した次世代の音源を積んだシンセとして登場しました。最大同時発音数は16。
 
 
 現在のパソコン画面に近い縦横比のフルドットLCDを備え、テキストだけでなくグラフィカルなエンベロープ・カーブなども表示することも可能となっています。
 
 
 61鍵の鍵盤部は、このクラスでは数少ないイニシャルタッチ/アフタータッチの両方に対応。3基のホイールのうち2つには様々なパラメーターの割り当てが可能になっており、コントローラー部でも多くのバージョンアップ点が見られます。
 
 
 

音源方式・「iPD音源」について

 VZ-1の心臓部であり、VZ-1を語る上で欠かせないのがこの「iPD【interactive Phase Distortion】音源」ですね。ちょっと詳しく説明してみましょう。
 
 
 これは「モジュール」(→音源の最小単位)2つがペアとなっており、合計8つのモジュールを組み合わせて音作りを行っていくという感じです(下図参照)
 

 
 なお各モジュールは、サイン波とノコギリ波(全5種)、そしてノイズ波形(全2種)のDCO、そしてまた8ポイントのエンベロープを持ったDCAで構成されています。この小さなモジュール自体でもちょっとしたシンセサイザーといった感じです。これら基本構成の組み合わせだけでも最大648通りも用意されており、さらにそこから音色のバリエーションが作り出せるといったところですね。
 
 
 当時主流となりつつあった一般的なPCM音源方式シンセと比較すると、非常に複雑かつマニアックといった感じの音源部という印象。。それ故に音作りの自由度の高さは相当だったわけで、マニアにとってはたまらない一台といった感じでしょう(笑)
 
 
 

出力モードについて

 そしてモジュールの基本構成(※これをラインという)は、大まかに以下3つの出力モードがあります。
 

■MIXモード

2つのモジュールを並列に合成し出力するモード。音に厚みを持たせたい時向き。

 

■RINGモード

M2の出力でM1をリング変調するモード。金属的な響きが得られます。

 

■PHASEモード

 M1の出力がM2の波形で読み出す位相角となるモードであり、倍音に時間的変化が必要な時などに向いています。このモードはちょっと難しいですね。。以前本ブログで取り上げた「CZ-101」の記事にてPD(※位相角の読み出し速度を歪ませる)について記述してありますので、必要に応じて参照してみてください。
 
 
 関連記事:「CASIO CZ-101 ~PD音源方式を採用した本格派シンセサイザー[1984年]
 
 
 なお上記3つの他に、EXT PHASE(エクスターナル・フェイズ …ラインの出力によってさらに他のラインの変調をかける)というモードもあります。
 

CASIO VZ-1(advertisement)
VZ-1/カシオ計算機(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

各種コントローラーについて

 61鍵の鍵盤部では、8種のベロシティ・カーブの中から好みのものを選ぶことができ、タッチの強弱による音色のコントロールが可能。またこのクラスでは珍しいアフタータッチも対応。鍵盤左部に設置されている2基の「デファイナブル・ホイール」と併せ、アフタータッチとホイールにて様々なパラメーターがリアルタイム・コントロールすることができるといったところです。
 
アフタータッチによるピッチ変化、あるいは音色・音量のコントロールなどはお手の物です。
 
 
 

音色メモリーについて

 すぐに音を出せる64種類の音色がプリセットされています。また同じく64音色が記憶されているインターナル・メモリーのエリアには、作成した音色を記憶させることが可能です。この辺りはCZ-101とかよりも数字的に大幅にアップしていることが確認できますね。

 

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VZ-10Mについて

CASIO VZ-10M

 VZ-1と同時発売された2Uラック・モジュール版。発売当初の定価は119,000円(のちに改定)でした。基本的な仕様はVZ-1に同じです。ラック版ながらVZ-1と同等のグラフィカルLCDを搭載していたのは評価ポイントですね。アウトプットには標準プラグのほか、XLRプラグも搭載しています(※MIXアウトのみ)
 
 
 

つぶやき的な

 当時のシンセ・シーンというと、YAMAHA DX7にはじまるデジタル・シンセが(プロ/アマ問わず)世界的に流行しており、早いアタック感、クリアなサウンド、きらびやかな音色キャラクターなどが広く受け入れられていました。一方で「音の厚さ・暖かさ」においてはアナログシンセに敵わなかった部分もあったりして、デジ/アナのおいしいとこ取りみたいな都合のよいマシンはほぼ存在していませんでした。
 
 
 VZ-1はデジタルならではのよさを生かしつつ、前述したiPD音源によりアナログの良さも再現しようとしたという意味で、非常に意欲的な一台だったと捉えることもできます。機能が充実している割に価格もお手頃でした。
 
 
 出音がいいというのは確かにあって、個人的には「VZというと全面に出てくる(かつ厚みのある)サウンド」というイメージが強いですね。半面、音作りはFM音源同様に一筋縄ではいかなかった敷居の高さがあったと回想します。
 
 
 ただし当時の空気は、難解でマニアックな音源よりもKORG M1(同じく1988年発売)のような分かりやすくてリアルなPCM方式のシンセを求めていたのでしょう。。結果的にM1はこれまた世界的に大ヒットを飛ばし、VZシリーズはひっそりと退場させられたという不憫なイメージだったりします。
 
 
 この先の近未来、PCM路線のシンセが “あまりにリアル過ぎてつまらない”という時代になった時に、本機は脚光を浴びることがあってもいいのかなと個人的には思ったりします。
 
 
 
 関連記事(カシオCZシリーズ):
 「CASIO CZ-101 ~PD音源方式を採用した本格派シンセサイザー[1984年]
 「CASIO CZ-1000 ~CZ-101の標準鍵盤搭載モデル[1985年]
 
 「KORG M1 ~【前編】世界中で記録的大ヒットしたワークステーションタイプ…
 

仕様
■鍵盤:61鍵(イニシャル/アフタータッチ対応)
■音源方式:iPD音源
■最大同時発音数:16音

■音色メモリー:プリセット64音色、インターナル64音色、ROMカード128音色
■モード:ノーマル、コンビネーション、オペレーション・メモリー、マルチ・チャンネル
■ディスプレイ:グラフィックLCD(64×94ドット)  ※バックライト付き
■外形寸法:1060(W)×93(H)×324(D)mm
■重量:12kg
■発売開始年:1988年
■発売当初の価格:137,000円

 

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