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その他メーカー 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.334】S.C.I. Six-Trak(#610) ~マルチレコーダー内蔵の6音ポリシンセ[1984年]

2018/03/11

 今回ご紹介する機材は、SEQUENTIAL CURCUITS Inc.(シーケンシャル・サーキッツ社。以下S.C.I.)から発表された「six-trak」というシンセサイザーです。発売は1984年で、発売当初の国内定価は228,000円でした。

 

S.C.I. Six-Trak(#610)

 

 S.C.I.といえばPROPHET-5(シンセサイザー。日本発売時は約170万円)などが有名なのですが、本機six-trakはプロフィット・シリーズ一連のサウンドを引き継ぎつつもぐっと安価な228,000円という価格を実現。さらに世界初のマルチ・トラック・シーケンサー(6トラック・800音)も搭載しており、一台で音楽制作ができるという昨今のワークステーション・シンセの元祖のような機種でもあります。
 
 
 ちなみに本機の「#610」というのは、当時のS.C.I.社のプロダクトにしばしば付けられていたナンバリング・コードのことです(例:ドラムトラックは#400)
 
 
 

概要

 49鍵仕様のフル・プログラマブル6音ポリフォニック・アナログ・シンセサイザー。MIDIにも対応しています。さらにマルチ・サウンドの6トラック・デジタル・シーケンサーを搭載しており、当時としては「6音ポリシンセ+6Trレコーダー」というハイブリッドな仕様で注目を集めました。
 
 
 

シンセサイザー部

 1ボイス1VCO仕様でありそれが6個収められています。つまり6VCO。オシレーターはノコギリ波、三角波、矩形波の3波形と、加えてノイズも装備。幅広い音作りに対応します。本機をユニゾンモードにすると、当時の低価格帯シンセとしては破格の6VCOユニゾンの強力なサウンドを鳴らすことができました。
 
 
 なおsix-trakに搭載されている音源チップ「CSM3394」は元々アーケードゲーム用に作られたチップなのですが、このCSM3394チップ6個で音源部の全機能をまかなっているそうです。
 
 
 音作りの基本はVCO→VCF→VCAという一般的な流れ。EG(エンベロープ・ジェネレーター)はVCF、VCA個別に掛けることができます。またLFOは三角波と矩形波を持ち、VCFのカットオフ・フリケンシーと矩形波のパルス幅を変調することも可能。これらシンセ部のコントロール・パラメーターは全36種用意されています。
 
 
 

シーケンサー部

 6トラックで、シーケンスの音数は800。各トラックはシンセサイザー部で作った別々の音色でプログラム可能です。まあ今となっては当たり前的な仕様なのですが、当時のポリフォニック・シーケンサーでは同一の音色のシーケンスしかできないものが多かったので、6音をそれぞれ異なったサウンドでプログラムできる(なおかつそれを同時にプレイバックできる)というのは画期的だったのです。
 
 
 これは概ね6トラックのマルチトラック・テープレコーダー(MTR)を内蔵しているようなものですね。つまり、本機では6ボイスのそれぞれに独立した音色を作ることができる上に、それぞれをMTRの1~6トラックとして多重録音ができたといった感じでした。
 
 
 

音色メモリーについて

 プログラムは出荷時に100サウンドがメモリーされており、それらをエディットして作ったオリジナル・サウンドも本体内にメモリーすることができます。

 

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操作性について

 つまみおよびスイッチの数は少なく、パネルトップはいたってシンプルなレイアウトとなっています。テンキーにより本体内にメモリーされているサウンド・プログラムを呼び出すのは容易だとして、オリジナル・サウンドをエディットし倒すというのは若干操作がやりにくいのは否めない感じですね。
 
 
 ただしこれによってコストダウンを実現しているわけであり、「つまみを回す」→「パラメーターナンバーを選びバリューを変更する」という操作に慣れさえすればいいのですけどね。。
 

S.C.I. Six-Trak(#610)(advertisement)
S.C.I. six-trak/モーリス楽器KK 雑誌広告より画像引用
 
 
 

おまけエピソード “100台のシックストラック”

 1984年9月にはキーボーディストの難波弘之さんが、モリダイラ楽器の協力のもと、本機six-trakを100台接続した壮大なライブパフォーマンスを行ったそう。
 
 
 MIDI信号制御を担っていたのは当時のベストセラー「コモドール64」というコンピューター(内のシーケンスソフト)。10台のシンセを10のグループに分け、それぞれオルガン(I,II)、ベース、リードトーン(I,II)、メタリック、ストリングス(I~III)音色を鳴らしていたそうですよ。
 
 
 同じシンセがステージ上で100台も並んだ光景はさぞかし壮観だったことでしょう。。モリダイラ楽器が提供した10チャンネルのMIDIパラボックスで振り分けて100台分鳴らしていたそうで、MIDI信号の遅延を極力抑えたシステムだったそうです。
 
 
 

つぶやき的な

 とまあsix-trakの各セクションの仕様などをざっくりと紹介してみたのですが、本機はあくまでコストを抑えた入門機といった位置付けであり、一般的には “(SCIシンセの中では)変わり種”と見られることが多い機種であります。
 
 
 単体では若干弱くても、他の機材(ドラムトラックス、PROPHET-600、コモドール64など)とMIDI上でシステムアップすることにより大幅な拡張が可能であり、そういう意味で持っておいて損はないシンセと言えたのかもしれません。組み立てが日本国内で行われていたということもあり、比較的安価なのも魅力でした。
 
 
 ■参考文献:「チップチューンのすべて All About Chiptune: ゲーム機から生まれた新しい音楽」 田中治久(hally)著
 
 
 
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仕様
■鍵盤数:49鍵
■同時発音数:6音(ボイス)

■シーケンサー部:6トラック(1ボイス/1トラック ×6)、800音シーケンス
■外形寸法:711(W)×114(H)×305(D)mm
■重量:7.6kg
■発売当時の価格:228,000円
■発売開始年:1984年

 

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