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KAWAI 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.314】KAWAI K5000W ~Advanced Additive音源搭載のワークステーション・シンセ[1996年]

2018/03/10

 今回取り上げるキーボードは、1996年に河合楽器から発売されたデジタル・シンセサイザー「KAWAI K5000W」です。発売当時の定価は218,000円。

 

KAWAI K5000W

 

 同社のK5000シリーズには3つのラインナップがあって、ワークステーション型の「K5000W」、奥深いシンセサイズが可能な「K5000S」、K5000Sのラック版「K5000R」といった感じ。カワイがリリースしたシンセサイザー・シリーズ「K」としては、現在のところこれらが最後の製品となっています
 
 
 90年代中頃といえば、KORG Trinityシリーズなどに代表される「PCM音源方式のワークステーション型シンセ」および、CLAVIA nordleadやRoland JP-8000などに代表される「アナログ・モデリング・シンセ」が主流となっていました。今回取り上げるK5000Wは前者の方であり、K5000Sは後者の方ですね。
 
 
 

K5000W概要

 倍音加算合成方式をさらに発展させた、(当時の)新音源である「アドバンスト・アディティブ【Advanced Additive】」方式を搭載。本機ではこの新音源と、リアルな生楽器系音色を得意とするPCM方式の両方が使用できるハイブリッド音源を採用。
 
 
 また40トラックの本格派シーケンサーと、GMデータの制作および再生にも対応する音色バンクを備え、本機のみでトータルな楽曲制作が可能になる、ソングライター向けワークステーション・シンセといった趣きの一台となっています。
 
 
 

音源部

 本機(K5000S)のアディティブ【Additive】音源は、大まかに以下4つのセクションから構成されています。

DHL(デジタル・ハーモニック・レベル)→倍音ごとのレベルを設定
DHE(デジタル・ハーモニック・エンベロープ)→倍音ごとのエンベロープを設定
DFL(デジタル・フォルマント・フィルター・レベル)→DHLおよびDHEで作られた波形を加工するフォルマント・フィルター
DFE(デジタル・フォルマント・フィルター・エンベロープ)→フォルマント・フィルターのカットオフ・フリケンシーのエンベロープを設定

 
 うーん、、この辺りは細かく説明すると非常に複雑になってしまいますので、のちに執筆する(かもしれない)K5000Sのために、今回は割愛させて頂こうかと思います m(_ _)m。上記はとりあえずオシレーター部(DCO)だけの話であり、そのDCOだけでも音色の時間的変化が可能だったということなのです。
 
 
 このようにしてアディティブ音源部にて生成された波形は、その後DCF(ローパス/ハイパス切替のデジタルフィルター部。レゾナンス付き)を経て、DCAブロックに向かいます。オシレーター部こそ倍音加算方式なのでちょっと難解ですが、大まかにはDCO→DCF→DCAといった一般的な処理過程なので、ある程度シンセサイザーの音作りを理解している人ならばさほど混乱しないでしょう。ちなみに最大同時発音数は64音。
 
 
 なお「フォルマント」辺りについては、本機の祖先とも言うべき「K5」でも出てきた概念であり、そちらの方の記事も必要に応じてご参照ください。
 
 関連記事:「KAWAI K5 ~ARTS音源搭載の3-Dデジタルシンセ[1987年]
 
 
 

シーケンサー部

 40トラック、最大約40,000音の容量。LCD表示はグラフィカルで、当時のPCベースのシーケンス・ソフトを意識した作りとなっています。GM音源搭載でフロッピー・ディスク・ドライブも標準で備えており、市販のGMデータなども取り込んでエディット可能といった感じですね。
 
 
 

作曲支援機能・APG【Auto Phrase Generator】について

 シーケンサーの任意のトラックに記録されたデータからコードを解析し、ユーザーが選んだ選択スタイル(ジャンル)に応じて、各パートのバッキングパターンなどを生成してくれるというもの。上記シーケンサー内に含まれる機能ですね。
 
 
 演奏ジャンルにはテクノ、ダンス、ロック、ポップス、ジャズなどがあり、これらをさらに細分化した合計105種のスタイルの中から好みのものを選んで、バッキングやフィルインをシーケンサーのトラックに貼り付けることができるといった感じ。なおこの機能を使うには、あらかじめシーケンサーの1トラックにコード進行を記録しておく必要があります。
 

KAWAI K5000W(advertisement)
K5000W, K5000S/(株)河合楽器製作所 雑誌広告より画像引用
 
 
 

バージョンアップ版について

本機は段階的にバージョンアップが行われました。
 
「K5000W Ver.3.0」ではEMAGIC社のPC用エディター/ライブラリアンである『SoundDiverK5000』(Win/Mac対応)を標準でバンドル。このソフトを使えば、コンピューターベースで複雑な音作りを行えるようになります。3Dグラフィックス表示や、(フェアライトっぽい)ハンドドローイング機能などを備え、もはやK5000本体のチマチマしたLCDディスプレイには戻れないといったところ(笑)
 
 
 さらにその後発売された「K5000W Power Sounds」ではアドバンスト・アディティブ音色のメモリーが3倍に増えており、これにより音色バンクも大幅に拡張されています(しかも定価も178,000円と下がった!)

 

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まとめ&所感

 ワークステーション・シンセとしては当時主流だったPCM方式に加え、独自の音源方式を採り入れているということで、音作りからトラック制作まで非常に幅広く使える個性派マシンといったところ。PCMならではの鋭く抜けのよいアタック感に、倍音加算ならではのふくよかな音質を足し合わせたりといった感じで、音作りだけでもかなりの作り込みができると思います。また別売りのコントロール・ノブ・ボックス「CB-1」を追加すれば、K5000S並みの操作性も手に入れることもできました。
 
 
 本機は鍵盤の作りの良さ、全体的なデザインの良さなどからもうちょっと評価されていてもよかったと思うのですが、実際は大ヒットとまでは至らなかったようです。シンセサイザー市場に参入しなくなって久しいKAWAIですが、本機のような一筋縄ではいかない骨のあるデジタルシンセがリリースされないものかと、個人的には切望していたりします。
 
 
 

余談的な

 K5000Wは、2003年公開の大ヒット映画『黄泉がえり』(草彅剛、竹内結子主演)でも登場しています。RUI(柴咲コウ)の恋人である金髪のキーボード奏者が、映画の劇中歌である「泪月 -oboro- 」のメロディを、本キーボードを使ってきっちりワンコーラス分弾いていますね(本編47分30秒辺りから1分40秒間ほど)。
 
 
 劇中での音色はピアノですが、実際K5000Wの内蔵音色なのかは未確認です。興味のある方はレンタルビデオ等で借りて確認してみてください。
 
 

 
 関連記事(カワイKシリーズ):
 「KAWAI K3 ~デジタル・ウェイブ・メモリー・シンセサイザー[1986年]
 「KAWAI K5 ~ARTS音源搭載の3-Dデジタルシンセ[1987年]
 

仕様
■鍵盤数:61鍵(イニシャル/アフタータッチ付き)
■音源:Advanced Additive音源
■最大同時発音数:32音
■マルチティンバー・パート数:16パート
■エフェクト:4アルゴリズム 48エフェクトタイプ+7バンドグラフィックEQ
■ウェーブ・セット・メモリー:最大約200
■ドラム・キット・メモリー:12
■シーケンサー・トラック:40トラック+テンポトラック+コードトラック
■ソングデータ
 本体内:2ソング、約40,000音
 3.5'FD内:99ソング、約180,000音
■外形寸法:1060(W)×105(H)×320(D)mm
■重量:12.9kg
■発売当時の価格:218,000円(税別)
■発売開始年:1996年

 

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