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ENSONIQ 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.299】ENSONIQ KT76/KT88 ~本格ピアノ鍵盤搭載のエンソニック・シンセ[1994年]

2018/02/22

 本ブログの読者様からリクエストを頂きまして、今回はエンソニックの「KT76」および「KT88」をご紹介してみたいと思います。末尾の数字はそのまんま鍵盤数による違いですね。先に発売されたのがKT76(1994年)であり、その2~3ヶ月後にKT88がリリースされました。内部仕様は両機とも同じです。

 

ENSONIQ KT88

KT88

 

 このKTはカテゴリーとしては、シーケンサーやエフェクターも内蔵したいわゆる「ワークステーション・シンセ」に属するのですが、その鍵盤の作りの良さ、出音の太さ(存在感)、あるいは両者のバランスの良さなどから、ライブ用ピアノ鍵盤としてバリバリ使っていたという人も多かったのではないでしょうか。ええ僕もよく使わせてもらいました。
 
 
 

鍵盤部について

 同社のワークステーション「KS-32」→「TS-12」譲りのウェイテッド・アクション鍵盤を採用。以前本ブログのTS-12の記事でも力説させて頂きましたが(笑)、本機のタッチは非常によろしく、鍵盤のナチュラルな返り具合やストロークの深さなど、当時出回っていた鍵盤としては最高のタッチを誇っていたと回想します(個人的見解)
 
 
 関連記事:
 「ENSONIQ KS-32 本格ピアノタッチ・76鍵シンセサイザー[1992年]
 「ENSONIQ TS-12 ~TS-10の76鍵ピアノ・タッチ仕様[1994年]
 
 
 

内蔵音色について

 様々な音色を取り揃えた308種類(後述するGM音源含む)の波形を内蔵。鍵盤の作りがいいのでやはりピアノ音色の出来が気になるところではありますが、本機ではベーゼンドルファーやボールドウィンといったブランドのピアノ波形も内蔵しており、やはりピアノ音色は充実しているという印象でした。
 
 
 ただし、個人が単体で演奏する一般的な電子ピアノと比べるとややクセが強い感じ。。ここはやはりバンド・アンサンブルの中で生きてくる音色キャラクターといったところです(EQなどで補正も可能)
 
 
 

GM音源機として

 本機には、TSシリーズには見られなかったGM音源も搭載しており、そのためか同時発音数も当時としては最高水準の64音を実現していました。パネル上にはGMモードに入るための独立した専用ボタンが配されており、市販のGMデータを再生する時でも即座に対応できるといった感じ。
 
 
 標準仕様で64音ポリフォニックというのは、当時DTMのみならず演奏においても大きなアドバンテージで、仮に音色レイヤーによる同時発音数の減少があったとしても、音切れの心配が少なく演奏に集中できる仕様といったところですね。
 
 
 また、この頃のエンソニック・シンセは “いい音”がまだ残っていた時代。GM音色(配列)は各社共通なのですが、エンソニックのサウンド・エンジンを通すと、国産GM音源モジュールとは一線を画す存在感のある音を奏でてくれました(バランスは要調整だけど)。残念な点はマルチティンバー数が8に減っていること。TSシリーズの12を継承しておいて欲しかったところですね。。
 
 
 

外部記憶メディアについて

 本機では外部メディアとしてPCMCIA規格のSRAMカードを採用。当時のノートPCでもよく見られたカード・スロットを1基搭載しています。なお本機で使用できるカード容量は512KBとなっています(※1MBのカードを512KBにフォーマットして使用することも可)。
 
 
 この辺りはフロッピーディスクを採用していたTSシリーズと比べると、コスト的には若干不利といったところ。当時フロッピーで供給されていた市販のGMデータも直接読み込むことはできませんでした。ただしカードのメモリーには(ロード無しで)ダイレクトに本体からアクセス可能というメリットがあり、なおかつフロッピーよりも信頼性が高かったことから、全般的に取り扱いやすかったと見ることもできます。
 
 

 

 

その他

 マスター・キーボードとして使用する際に便利なピッチベンド・ホイールとモジュレーション・ホイールを搭載。この2つのホイールは左手で操作しやすいようちょっと斜めに設置されていて、シンセなどを弾く時に人に優しい角度を提供してくれます(笑)
 
 またバックライト付きのLCDの表示文字も大きく、特に暗いステージ上では非常に見やすいので助かります。
 

ENSONIQ KT76(advertisement)
KT76/エンソニックジャパン・インコーポレイティド 雑誌広告より画像引用
 
 
 

追憶的な

 本機の76鍵モデルは、僕のシンセ専門店勤務時代に長期間展示品として置かれていたということもあり、たまに拝借してステージでも使わせてもらいました(→役得)。大音量でも埋もれない太い出音で、ライブ時(の特にピアノ音色)で大活躍してくれたことを思い出します。
 
 
 ただしKTをワークステーション・シンセとして捉えた場合、必ずしも本機はバランスのよい一台といった感じではなかったですね。価格もKT76で298,000円、KT88で328,000円と、初心者が1台目のオールインワン・シンセとして購入するには若干お高めという価格設定。。そもそも国内で取り扱っているショップもさほど多くはありませんでした。
 
 
 また本記事ではばっさり割愛しちゃったほどの、使いやすい(使える)とは言いにくい内蔵エフェクターやシーケンサーなんかはやや残念ポイントだったりします(→ただしこれは個人的見解。本機のシーケンサーはエンソニック独自の基本仕様を踏襲した形となっており、昔からのエンソニック・シーケンサーのユーザーにとっては使いやすいという一定の評価があった)。
 
 
 でもそれを差し引いて余りある「エンソニックらしい鍵盤と出音の良さ」は、当時の国産シンセ(あるいは国産デジピ)に見られない、独自の個性を放っていた一台といったところですね。
 
 

仕様
■鍵盤数:
 KT76→76鍵  KT88→88鍵(共にウェイテッド・アクション鍵盤)
■内蔵音色数:308種類
■最大同時発音数:64音(8パート・マルチティンバー)
■シーケンサー:16トラック、70シーケンス、30ソング
■外形寸法:
 KT76→ 1282.7(W)×127(H)×396.9(D)mm
 KT88→ 1441.5(W)×127(H)×396.9(D)mm
■重量:KT76→23.13kg  KT88→26.7kg
■発売当時の価格:KT76→298,000円(税別)  KT88→328,000円(税別)
■発売開始年:1994年

 

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