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ENSONIQ 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.269】ENSONIQ SQ-80 ~ポリフォニック・キープレッシャー対応の“クロスウェーブ・シンセ” [1988年頃]

2018/05/07

 今回ご紹介するシンセサイザーはエンソニックの「SQ-80」です。日本での発売は1988年初頭頃で、定価は298,000円でした。以前本ブログでも紹介したESQ-1の上位機種といった趣きであり、8音ポリフォニック、8トラック・シーケンサー内蔵という基本構成は変わっていないものの機能に大幅な増強点が見られますね。

 

ENSONIQ SQ-80

 

 関連記事:「ENSONIQ ESQ-1 ~シーケンサー内蔵・“ワークステーション型シンセ”の草分け[1986年頃]
 
 
 

音源部(クロス・ウェイブ・シンセシス)

 オシレーターは3基装備(OSC1/2/3)していて、各オシレーターには様々な手法で合成された波形(アナログシンセ系、FM系、サンプリングものetc..)が75種類内蔵されています。そしてこれら波形をミックス(あるいはクロスフェード)させて音作りを進めます。メーカーではこの音源部を「クロス・ウェイブ・シンセシス」と銘打っていました。
 
 
 3オシレーターというのは2オシレーターに比べて格段に音色作りの自由度が高いですね。本機の各オシレーターでは音程調整が細かく設定できるので(OCT/SEMI/FINE)、ファイン・チューンをずらして3音分の厚みを出したり、2音デチューン+オクターブ違いといったような使い方もできます。
 
 
 

音作りの流れ

 オシレーターごとに波形を割り当てた後は、それぞれパラレルでDCA(1/2/3)を通過させ、信号を一つにまとめてフィルターを通した上でDCA4に向かいます。
 
 分かりにくいですか? でも大丈夫(笑)、パネルにはそれらボタン類と共に信号の流れが矢印で分かりやすく表記されています。
 
 
 SQ-80には、LFO(1/2/3)やエンベロープ(ENV 1/2/3/4)、ホイール、プレッシャーなど計15種類のモジュレーション・ソースが用意されており、ある程度自由に “モジュレーションの掛け先”を設定することができます(各オシレーター、DCA、フィルターなど。なおENV4はDCA4専用)。
 
 
 

ポリフォニック・キープレッシャー(Poly-key™)対応

 鍵盤は61鍵で、このクラスのシンセとしては初めてポリフォニック・キー・プレッシャー(アフタータッチ)に対応しています。
 
 
 アフタータッチというのはそもそも、鍵盤をさらに深く(強く)押し込むことにより、ビブラートをかけたり音色の変化(フィルターの開閉)などができるという機能です。そういった音色変化は通常だと別のコントローラー(例:モジュレーション・ホイール)で行う必要があるのですが、鍵盤を押さえている指だけでリアルタイム・コントロールが可能ということで、演奏性の幅を広げてくれます。
 
 
 本機の優れている点が、そのアフタータッチ(キー・プレッシャー)が “ポリフォニック”でできること。つまり各鍵独立してこれを掛けられるということです。当時のアフタータッチといえば全鍵一律に掛かってしまうものが多かったのですが、本機は当時の高級機にしか搭載されていたなかった全鍵独立のアフタータッチを搭載しているという点で画期的でした。
 
 
 なお本機では、ポリフォニック・キープレッシャーの対とも言えるチャンネル・プレッシャー(そのMIDIチャンネル全体に共通のプレッシャー信号として出力する)に切り替えることもできます。
 
 
 関連記事:「シンセサイザーの「アフタータッチ」機能について ~現行シンセの対応表も記してみた
 
 
 

操作性について

 ESQ-1譲りの40文字×2行 16セグメントの見やすい蛍光ディスプレイを採用。ディスプレイの上下には、それぞれ5個づつ(計10個)のスイッチが配されており、表示された機能や音色などを一発選択することができます。ライブ時の音色変更はもちろん、エディット時のパラメーターも一度に多くの情報を表示してくれるので重宝します。

 

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シーケンサーについて

 本機では8トラック・マルチ・メモリーが可能なシーケンサー機能を内蔵。まあこれはESQ-1と基本的に変わっていないのですが、本体のみで約20,000音をレコーディングできるという点でESQ-1よりも大きく増強されています(ESQ-1だと本体のみで約2,400音、外部カートリッジで最大10,000音)。
 
 
 入力はリアルタイム/ステップの両方式で可能であり、パンチ・イン/アウト、マージ、コピー、クオンタイズなどのエディットもできます。
 
 
 このように各トラックにオーバーダブしたシーケンスを組み合わせ「ソング」にしていきます。8トラなのでそれほど凝ったことはできないのですが、ちょっとしたアイディアをスケッチするという使い方ならば十分でしょう。ちなみに本機では60シーケンス(1シーケンスは最大999小節)、20ソングまで扱えます。
 
 
 

外部記憶メディアについて

 ESQ-1ではなかった3.5'FDDを標準搭載。対応ディスクは2DDであり、1枚につき880Kバイトの容量を保存できます。上記のシーケンサーで作成したソング・データはもちろんのこと、音色データや、他社も含めたMIDI機器のシステムエクスクルーシブ・データ(音色データやリズムマシンのパターンデータ)も保存できるようになっています。
 

ENSONIQ SQ-80(advertisement)
SQ-80/エンソニックジャパンインコーポレイティド 雑誌広告より画像引用
 
 
 

個人的つぶやき

 出音・操作性はエンソニックらしさが既に本機でほぼ確立されていて、その音の良さ(抜け感・存在感)、鍵盤の作りのよさ、全体的なオペレーションのしやすさなどから、今でも探している人が少なからずいるという話は聞きます。
 
 
 フィルターは1つのみでエフェクターは内蔵していないなど、これ一台で100%カバーできるという感じではありませんが、『シンセサイザーは音色を創造(シンセサイズ)する楽器』という大前提を守った、80年代末におけるデジタルシンセの名モデルだと個人的には思っています。
 
 
 さてここからエンソニックのシンセサイザー(ワークステーション)・ラインは、VFX、SQシリーズ、SD-1、TSシリーズといった感じで黄金期を迎えます。本ブログでもいくつか記述していますので気が向いたら読んでみてくださいませ。
 
 
 
 関連記事:
 「ENSONIQ TS-10 ~ワークステーション、だけどライブに良し![1993年]
 「ENSONIQ TS-12 ~TS-10の76鍵ピアノ・タッチ仕様[1994年]
 

仕様
■鍵盤:61鍵(イニシャルタッチ、ポリフォニック・キープレッシャー対応)
■最大同時発音数:8音
■プログラム・メモリー:インターナル×40、カートリッジ×80
■シーケンサー部
 トラック数:8(各トラック最大8音ポリフォニック)
 メモリー:シーケンス最大60、ソング最大20、容量約20,000音
■外形寸法:980(W)×90(H)×340(D)mm
■重量:13kg
■発売当時の価格:298,000円
■発売開始年:1988年初頭頃

 

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