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Oberheim 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.262】Oberheim OB-X ~OBERHEIMサウンドが詰まったアナログ・ポリシンセ[1979年]

2018/11/26

 

 

 今回ご紹介するシンセサイザーはOberheim(オーバーハイム)の「OB-X」です。発売は1979年で、シーケンシャル・サーキッツのPROPHET-5の対抗馬的な機種として発売された、オーバーハイム渾身のプログラマー内蔵ポリフォニック・シンセサイザーです。ちなみにこの場合のプログラマーとは “プログラマブル”の意味であり、自分で設定した音色プログラムを32まで本体内にメモリー可能ということです。

 

Oberheim OB-X

 

 オーバーハイムの(初期)OBシリーズといえば、独特のコシの入ったシンセ・ブラスをはじめとする唯一無二の音色群で、現在でもファンが多いことで知られています。本機OB-Xはどのような機種だったのでしょう。
 
 
 

概要

 完全プログラマブルを実現したアナログ・ポリフォニック・マシンであり、ボイス・カードの搭載枚数により4/6/8音のボイス数を選択可能。価格はボイス数により異なり、4音で1,800,000円、6音で2,100,000円、8音で2,400,000円でした(いずれも日本での発売時の価格)。
 
 
 PROPHET-5などと共に70年代後半~80年代にかけて活躍した、プロユース向けの本格ポリフォニック・シンセサイザーの一台といったところです。余談ですがOB-Xの “X”とは、カードの搭載数で同時発音数が変わる(増やせる)ということで “X”だそうです。
 
 
 

補足・オーバーハイムシンセとSEMについて

 オーバーハイムのシンセサイザーはOB-1を除けば全てポリフォニックであり、同社の初期シンセ「2Voice」「4Voice」などはその台数分のモノフォニック・シンセをそのまんま搭載していました。ちなみにその一台ごとのユニットは “シンセサイザー・エキスパンダー・モジュール【SEM】”と呼ばれています。
 
 
 OB-Xでは、この完全独立の物理ユニット・SEMをカード化(→これをボイス・カードと言います)して内蔵し、コントロール・パネルを共通にし操作系を統一したという感じですね。
 

Oberheim OB-X(advertisement)
Oberheim OB-X/宝商株式会社 雑誌広告より画像引用
 
 
 

基本スペック

 (1ボイスにつき)2VCO、LFO、フィルター、2エンベロープという基本仕様。心臓部にはデジタル回路のCPUを搭載しています。
 
 
 オシレーターはノコギリ波かパルス波のどちらかを選択可能。オシレーター・シンク(→もう一方のオシレーターを周波数変調できるクロス・モジュレーション)もできます。ピッチ・ベンドをオシレーター2のみに掛かるようにするというモードなどもありますね。
 
 
 フィルターはローパスのみでレゾナンスはなく、変化も緩やかで発振もしません。エンベロープはADSRタイプのものがVCFとVCA用に各々1基ずつ搭載されています。

 

 

 

コントローラーについて

 本機のレバー式ピッチベンドは動作がちょっと独特で、手前に倒した時にベンド・アップの効果が得られます。一般的なシンセのピッチ・ホイールだと奥側に倒した時にベンド・アップするのが普通ですよね。。
 
 
 この独特の仕様は、ギターのチョーキングが手前にアップした時にピッチも上がるということを踏まえたものらしいですよ。
 
 
 

オート・チューン機能

 本機には、スイッチ一つで自動的にチューニングをしてくれるという「クイック・オートチューン機能」を内蔵。1ボイスにつき2VCOなので、Maxで16個ものVCOを1秒でA=440Hzに合わせてくれるそうで、これはちょっとした便利機能と言えるかもしれません(ただし電源投入時に自動的に動作するわけではない)
 
 
 なお、当時の8bitマイコンにもよく搭載されていたCPU・「Z-80マイクロプロセッサ」が、このオートチューニングでも機能しているとのことですよ。
 

Oberheim OB-X
 Oberheim OB-X ※Wurly'sさんにて撮影
 
 
 

個人的つぶやき

 というわけで駆け足でOB-Xのスペック的項目をつらつらと書いてみたのですが、本機の “音の良さ”はあまり伝わらないですよね。。当時のセールス的な観点や知名度から言えばややPROPHET-5の後塵を拝す形になった感は否めませんが、OB-Xではユニゾンも簡単にONにできますし、独特な分厚いシンセ・ブラスをはじめ、ポリフォニックを生かした音色を十分に堪能することができると思います(さらにポルタメントもポリフォニックで作動する!)
 
 
 さてこのOB-Xは、さらに機能を充実させた後継機の「OB-Xa」へと続きます。OB-Xaといえば、知ってる人は知っているヴァン・ヘイレンの『ジャンプ』でも使われたことで有名ですよね。
 
 
 
 関連記事(オーバーハイムOBシリーズ):
 「Oberheim OB-1 ~フォースは君と共にある[1978年頃]
 「Oberheim OB-Xa ~ヴァン・ヘイレンの『ジャンプ(Jump)』のシンセ音はこれ
 「Oberheim OB-Mx ~MIDIアナログ・シンセ・モジュール、そして5Uの威圧感!
 

仕様
■鍵盤数:61鍵
■最大同時発音数:4/6/8音(ボイスカード搭載枚数により異なる)
■コントロール:ポルタメント、OSC2デチューン、ユニゾンSW
■モジュレーション:レイト、SW×3(サイン,スクエア,S/H)、デプス、SW×3(OSC1/2,フィルター)、デプス、SW×2(OSC1/2)
■OSC:フリケンシー×2、パルス幅×2、SW×6(ソー×2、パルス×2、X変調、シンクロ)
■外形寸法:1050(W)×170(H)×560(D)mm
■重量:25kg
■発売当時の価格:1,800,000円(4音)、2,100,000円(6音)、2,400,000円(8音)
■発売開始年:1979年

 

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