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1990年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.261】YAMAHA S80 ~ピアノプレイヤーのためのシンセサイザー[1999年]

2018/11/26

 

 

 今回ご紹介するキーボードは、ヤマハが1999年に発売したシンセサイザー・「S80」です。本体価格は198,000円(税別)。同社のSシリーズというのは、多くのモデルで88鍵ピアノタッチ鍵盤を採用し、中身はシンセサイザーという基本仕様で主に2000年代に展開されたシリーズです。

 

YAMAHA S80

 

 そしてそのSシリーズ初号機であるモデルが今回の「S80」。ヤマハさんの公式HPでも「デジタルピアノ/ステージピアノ」のカテゴリーではなく、「シンセサイザー」にカテゴライズされていますね。
 
 
 

S80概要

 同社のハイエンド・ステージピアノP-500と同等の88鍵・ピアノタッチ鍵盤を採用したシンセサイザー。この鍵盤種はメーカーではAE鍵盤と呼んでおり、鋭いレスポンスと繊細な表現力を併せ持った、当時のヤマハさんとしてはハイクラスの電子ピアノに多く採用された鍵盤でした。本機ではアフタータッチも付いています。
 
 
 ピアノ系をはじめとした様々な音色を内蔵しており、各種プラグイン・ボード(オプション)で音源を追加することも可能。またTo Host端子を標準装備し、本機とPCをつないでの音楽制作をサポートするいくつかのソフトウェアも付属されていました。
 
 
 

仕様(音源、音色など)

 24MBのメモリーを使ったウェーブROMによる256音色をプリセットで内蔵。音源方式は当時のヤマハさんのPCM路線である「AWM2」を採用しています。
 
 19パート・マルチティンバーで同時発音数は64音。なのですが、後述するプラグイン・ボード「PLG150-PF」を1枚装着することにより128音ポリに拡張することができます。なおこのプラグイン・ボードは、本機だと同時に2枚まで装着可能となっています。
 
 
 内蔵音色は、アコースティック/エレクトリックのいわゆる「ピアノ系」が充実した内容となっています。キャラクターは明るい感じのものが多く、『USAテイスト』と当時のヤマハさんが宣伝していたように(笑)、ヨーロピアンなクラシック曲よりもアメリカンなロック/ポップスの方が合わせやすいかなという感じです。
 

YAMAHA S80(advertisement)
S80/ヤマハ(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

プラグイン・ボード(オプション)について

 本機S80には数多くの別売りのプラグイン・ボードがリリースされました。これはヤマハさんでは【Modular Synthesis Plug-in System】と呼んでおり、同社のCS6xなどでも装着することができます。これらプラグイン・ボードは様々な種類がリリースされたのですが、以下、本機種との相性が極めて高かった “ピアノ・ボードPLG150-PF”について言及してみましょう。
 
 
 

PLG150-PF(当時の定価39,800円)

 ピアノ系音色に特化した音源ボード。ステレオサンプリングによる高品位な大容量ウェーブROMを実装し、136音色ものピアノ・サウンドを収録した、完全プロフェッショナル志向(と当時メーカーから謳われていた)ピアノ音源ボードといった感じです。フルコンサートグランドを筆頭とした生ピアノ系だけでなく、DXやCPなど同社のビンテージ・エレピサウンドも収録されています。
 

YAMAHA PLG150-PF
PLG150-PF/ヤマハ(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 
 
また本ボードを装着するだけで、最大同時発音数が64音追加されます。つまりは、S80本体の64音+ボードの64音=128音ポリフォニックが実現するということですね。これだけの発音数があればペダルの余韻などの音切れなどもまず発生しないと思います。
 
 
 S80本体でもピアノ音色を内蔵しているのですが、ポリフォニック数を得るためだけに本ボードを挿すというのもありだったと思います。というか本ボードとS80のピアノ音色はちょっとキャラクターが違っていたそうで、このピアノ・ボードの方をメインで使っていたというプレイヤーもいたという話は聞きました。

 

 

 

オペレーション(操作)について

 S80はシンセサイザーであるので、ピッチホイール、モジュレーションホイールの他にも、音作り/ライブパフォーマンスのためのコントローラー類をいくつか備えています。
 

4本のコントロール・スライダー

 マスターキーボード・モードがONになっている場合、これらスライダーにあらかじめ割り当てておいた機能(コントロール・チェンジ)を制御することが可能。
 
 

5つのアサイナブル・ノブ

 パネル中央部にあるノブ(A/B/Cおよび1/2の計5つ)には、あらかじめアサインしておいた様々な機能をコントロールすることができます。
 
 
 その他、複数の外部音源を演奏したりまとめてMIDIコントロールしたりという、いわゆるMIDIマスター・キーボードとしての機能も見られますね。また多彩なエフェクトやシーケンス・モード(→メモリーカードに保存されているソングファイルを再生するモード)も内蔵しています。
 
 
 

個人的つぶやき

 今から6~7年くらい前、友人の結婚式でピアノ演奏を頼まれた際、会場で用意してくれたデジタルピアノが本機でした。現場では既に「ピアノ音色」に設定されていたので、下手にエフェクトなどはかけず素直に演奏だけしてきたという感じですね(リハーサルもなし)。普通に電子ピアノとして演奏しやすかったことを記憶しています。
 
 
 ちなみにヤマハの当時のラインナップとしては、複数の音源方式を取り入れたハイエンドシンセ「EXシリーズ」、リアルタイム操作が魅力のシンセ「CS6x」、ステージピアノの「P-200」などがありました。
 
 
 S80は、それらカテゴリーとの競合を避けつつ開発が進められた、“ピアノ演奏にめっぽう強いシンセ”というスキマ的な位置付けだったのかもしれません。実際は上記の僕のエピソードのように、電子ピアノとして使用されるケースが多かったのかもしれませんが。。
 
 
 
 関連記事(ヤマハシンセ Sシリーズ):
 「YAMAHA S30 ~「S80」の61鍵版と捉えて概ねよいと思います[2000年]
 「YAMAHA S03 ~S80のサウンドを継承した “ハイコスパシンセ” [2001年]
 

仕様
■鍵盤数:88鍵
■鍵盤種:AE鍵盤(イニシャル/アフター・タッチ付き)
■音源方式:AWM2(Modular Synthesis Plug-in System対応)
■最大同時発音数:64
■波形メモリ:24MB相当(16bitリニア換算)
■音色数:【ノーマルボイス】プリセット256、インターナル128、エクスターナル128
     【ドラムボイス】プリセット8、インターナル2、エクスターナル2
■エフェクト:リバーブ(12タイプ)、コーラス(23タイプ)、インサーション(116タイプ×1系統、PLGインサーション)、マスターEQ(4タイプ)
■外形寸法:1329(W)×157(H)×371(D)mm
■重量:24.3kg
■発売当時の価格:198,000円(税抜)
■発売開始年:1999年

 

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