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1970~80年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.224】Roland JX-8P ~国産アナログシンセの末期に発売された“ダイナミック・シンセサイザー” [1984年頃]

2018/11/26

 

 

 今回ご紹介するのはローランドが1984年末頃に発売した「JX-8P」というシンセサイザーです。当時の定価は228,000円。【DYNAMIC SYNTHESIZER】と銘打たれていました。

 

Roland JX-8P

 

 本機は83年に発売された「JX-3P」の上位機種と見ていいと思うのですが、筐体デザインや音色キャラクターはこれでもかという位変わってますね。共通している箇所といえば、別売りのプログラマー(エディター)・「PG」が用意されていることでしょう。なおJX-8Pのプログラマーは「PG-800」となっていて、JX-3Pの「PG-200」とはまた異なるものです。
 
 
 

JX-8P概要

 61鍵・12DCOのデジタル制御による6音ポリフォニック・シンセサイザー(→1音につき2DCO構成)。ダイナミクス/アフタータッチ機能を搭載しているのが特徴的で、キー・タッチの強弱に応じて、単なる音量変化のみではなく音色変化ももたらします。オシレーターは12DCOですが、フィルターはVCF(×1)、アンプはVCA(×1)とアナログ仕様になっていますね。
 
 
 またオプションの「PG-800」(→後述します)を使えば、エディットはもちろん、新しい音作りにも直感的に対応してくれます。
 

Roland JX-8P(advertisement)
JX-8P/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

音色について

 幅広い音色を64音色(32×2バンク)内蔵。パネル上では1バンク分の32個の音色ボタンが配されており、お目当ての音色をすぐに指定することができます。音色は生楽器音系をはじめ、海外のシンセでよく見られるようなリード音、あるいはSEなどなどを搭載。。本機では特にピアノ、ブラス、打楽器系が充実している印象ですね。
 
 
 本体内には自分で作った音を32音までメモリーができ、さらにJX-3Pでは見られなかった「メモリーカートリッジ」(Roland M-16C)にも記憶可能。このカートリッジにも(1個につき)32音色がメモリーできます。
 
 
 

ダイナミクス&アフタータッチ搭載

 当時、この価格帯のシンセとしては珍しく、ダイナミクスおよびアフタータッチ機能を搭載していました。これにより演奏表現により幅が生まれたといっていいでしょう。
 
 
 本機のダイナミクス機能は、キー・タッチの強弱により音量変化はもちろん、様々なパラメーターに作用させることができるというもの。例えばVCFのエンベロープ・フォロワーに作用させ、カットオフ・ポイントをダイナミック(動的)にコントロールすることもできたという感じです。
 
 
 アフタータッチ機能とは、鍵盤を深く押し込んだ際に設定した効果を得られるというものであり、モジュレーションをかけたり音量レベルを上げたりといった使い方が定番でした。JX-8Pでは「ビブラート」「ブリリアンス」「ボリューム」の3種類から選択できるようになっています(→3つ同時に掛けることは不可)。なおここでの「ブリリアンス」というのは音色を明るくする働きがあり、VCFのカットオフ・ポイントを上げるのと同じような感じです。
 
 
 

パッチ・チェイン機能について

 音色と演奏モードの組み合わせを最大8種類まで記憶し、スイッチによりそれらを素早く呼び出すことができるというライブ・パフォーマンス向けの機能。記憶できるパラメーターは、音色データ、キー・モード(Poly/Unison/Solo)、アフタータッチ、ベンドレンジ、ポルタメント(ON/OFF)、タイムの全6種類。
 
 
 ライブでの曲進行において使用音色を順番に記憶させておくというのはよくやることですが、曲(音色)によってはポルタメントをかけたいとかベンドレンジを変えたいとかありますよね。そういったケースでも音色と同時に設定も呼び出せるので便利です。操作はパネル上の矢印ボタンで次々に切り替えていくといった感じです。

 

 

 

エディット機能、および別売りプログラマー「PG-800」について

 エディットは、まずパネル上のセレクト・ボタンを押して各音の構成パラメーターを呼び出し、バリューを数値(あるいはON/OFF)で細かく設定していくという感じ。この辺りは当時の他社ヒット機(YAMAHA DX7、KORG POLY-800等)の操作系に追従したような恰好となっています。特にデザインや薄膜スイッチ採用なんかはDX7の影響を受けている印象ですね。
 
 
 そして、素早いエディットや音作りを実現してくれるのが別売りのプログラマー「PG-800」(当時の定価28,000円)。当時は「シンセサイザーは音を創造してナンボ」という風潮もあり、このプログラマーにより直感的なパラメーター変化を可能にしました。
 

Roland PG-800

 
 音作りは、JX-3Pでも見られた「クロスモジュレーション」(→金属音的な変調)によって豊富な高調波を含んだ波形を生成することも可能です。ベル系の音色や、倍音を含んだ厚いパッド音色なども簡単に作ることができます。
 

JX-8P + PG-800

JX-8P + PG-800

 

 

つぶやき的な

 発売されたタイミングとしてはYAMAHA DX7の約1年半後といったところでしょうか。時代はすっかりデジタルに舵を切っており、本機JX-8Pはアナログ末期の過渡期に生まれた、80年代におけるローランド最後のアナログシンセサイザーといったところです。
 
 
 柔らかく厚いシンセ・パッド、クロスモジュレーションを用いた独特の金属系サウンド、若干チープだけど味のある(笑)エレピ音など音色群も個性があり、今見ても非常に面白い一台だと個人的には思います。とはいえ当時はやはりDX7(や同社のヒット作D-50)などに呑まれ、世間的にはあまり注目されなかった機種でもあるんですよね。。
 
 
 
 関連記事(ローランドJXシリーズ):
 「Roland JX-3P ~世界初のMIDI規格対応シンセ(のひとつ)[1983年]
 「Roland JX-1 ~エラ張ってます[1991年頃]
 

仕様
■鍵盤:61鍵
■メモリー:プリセット64音色、インターナル32音色、メモリーカートリッジ32音色
■エディット:ネーミング機能、MIDIファンクション、マスター・チューン
■ディスプレイ:16桁×1行 蛍光表示ディスプレイ
■外形寸法:997(W)×92(H)×375(D)mm
■重量:11.5kg
■発売当時の価格:228,000円
■発売年:1984年末

 

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