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1990年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.184】Roland JV-80 ~エキパン「SR-JV80シリーズ」搭載可能の初シンセ[1992年]

2019/01/19

 

 

 今回ご紹介するシンセサイザーはローランドの「JV-80」です。発売されたのは1992年1月で、当時の価格は179,000円。長きにわたってリリースされ、当時デジタルPCMシンセ普及の一翼を担った「JVシリーズ」の初号機であります。

 

Roland JV-80

 

 また、同社のエクスパンション・ボード(以下エキパン)「SR-JV80シリーズ」を搭載可能とした初の製品でもあり、「JV-80というシンセはよく知らないけど、エキパン(SR-JV80シリーズ)なら持ってた」という人も多いかと思います。では細かく記してみましょう。
 
 
 

JV-80の概要

 リアルなPCM音色を搭載しヒットした同社の「Uシリーズ」を発展させ、操作性や音色エディットを大幅に向上させたモデル。パネルには8本のパラメーター・スライダーを備え、扱いやすいシンセとして当時高い人気を獲得していました。
 
なお8パートのマルチティンバーには対応していましたが、シーケンサーは内蔵していません。
 
 
 ちなみにUシリーズでの外部音源供給はカードでしたが、JVからはユーザー自身が物理的に基板を本体に増設する「エクスパンション・ボード(SR-JV80シリーズ)」も採用。同シリーズのボードは後のJVシリーズ(および一部のXP、JDシリーズ)と互換性を持ち、90年代を代表する音源ボードとして多くの現場で使われました。
 
 
 

音源部について

 18bitD/Aコンバータを搭載。内蔵波形はリズムものを含めて、高品位な129波形を搭載しています(→ボードによりさらに波形追加可能)。それらを素材に、定評のある同社のTVF、TVAで音色を組み立てていく流れになっています。
 
 
 なお本機には「FMX機能」という特徴的な機能を搭載しています。これは【Frequency X-Modulation】の略で、往年のJUPITERシリーズに搭載されていた “クロス・モジュレーション”とほぼ同様のものになります。元のウェーブフォームに任意の波形を掛け合わせる(→クロス・モジュレーションする)ことにより、新たな波形を生み出すことができるというもの。
 
 
 原波形にはない倍音を加えてウェーブ自体を劇的に変化させる効果があり、これによりシンセ本来の積極的な音作りを可能にする、という触れ込みでした。実際は、歪み成分が強く出るエフェクト効果が現れ、SE音色としての使用に落ち着くケースが多かったみたいですね。。
 
 
 

音色について

 音色の最小単位は「トーン」(→波形[WG]を、TVF、TVA、LFO、各エンベロープなどで加工したもの)と言います。そしてこのトーンを4つまで組み合わせたものを「パッチ」と言います。ローランド・デジタルシンセとしてはおなじみの名称となっていますね。
 
 
 プリセット音色は幅広い楽器音を網羅しており、ピアノ系やストリングス/ブラス系の音色は当時としてはなかなかの完成度! リズム楽器の音色も充実していました。

 

 

 

8本のスライダー

 パネル左上部に搭載された8本のスライダーにより、様々なパラメーターのコントロールが可能となっています。
 
 例えば、パッチを呼び出している状態で各トーンのピッチ(音程)やフィルターなどをアサインしておき、プレイ中にリアルタイムでそれらを変化させるなどといった使い方ができますね。
 
 
 またエディット・モードでは、関連するパラメーターが最大8つまで表示され、各パラメーターをそれぞれのスライダーに割り当てることができます。例えばレベルを割り当てれば各パートごとの音量をミキサー感覚で操作するといった使い方もでき、他にも感覚的な音作りにも応えてくれるという感じでしょうか。またマルチ・ティンバー演奏時などの操作性も非常に高く、この8本のスライダーで大抵のことは対応可能という感じでした。
 
 
 

拡張性について

 前述したようにエクスパンション・ボード「SR-JV80シリーズ」を搭載可能にした初の機種であり、JV-80では1枚増設することができました。またそれとは別にPCMカード・スロット、DATAカード・スロットも備えており、カードも含めたMax拡張時には、(当時としては)膨大な数の音色を手に入れることができました。
 
 
 関連記事:「Roland SR-JV80-01~06 ~90年代ローランドのエキパン!(その1・初期製品モデル)
 
 
Roland JV-80(advertisement)
JV-80/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用

 
 
 

まとめ的な

 アンサンブルの中でよく混じり合う欠点の少ない音色群、アナログライクな高い操作性と、その内容は発売当初から注目を集めていました。とはいえ後年、JV-80の生産が終了しエキパンのラインナップが充実していくにつれ、「そういえばSR-JV80シリーズの “JV-80”って何だっけ?」と、本体の方が忘れられる存在となってしまった不遇さはありますね(笑)

 
 なお2017年1月27日、「SR-JV80シリーズ」に関して、ローランドから使用中止のお願い告知がHP上で発表されました。使用している電解コンデンサーが経年劣化により、まれに中の電解液が漏れることがあり、もし電解液が漏れ出た場合、最悪の場合には発煙の恐れがありますとのこと。詳細は以下ローランドサイトからご確認ください。
 

エクスパンションボード SR-JV80 シリーズをご愛用のお客様へ
https://www.roland.com/jp/support/support_news/170119/

 
 メーカーが公式HPで告知するほどだから、現在でも一定数の愛用者がいたということでしょうか。。僕も90年代に数枚購入しましたが、今では手元に一つも残っていませんでした。。
 
 
 
 関連記事(ローランドJVシリーズ):
 「Roland JV-35 ~コスパの高かったローランド・JVシンセの一つ[1994年]
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 「Roland JV-1080 ~90年代の人気音源モジュール(前編)[1994年]
 「Roland JV-1010 ~GM音源も内蔵したハーフラック・音源モジュール[1999年]
 

仕様
■鍵盤:61鍵
■最大同時発音数:28音
■内蔵ウェーブフォーム:129種類
■メモリー:パッチ128、パフォーマンス16、リズム・セット1(インターナル、プリセットA/B、DATAカード)
■内蔵エフェクト:コーラス3種、リバーブ8種
■ディスプレイ:40桁×2行(バックライト付)
■外形寸法:978(W)×84(H)×279(D)mm
■重量:6.6kg
■発売当時の価格:178,000円
■発売年:1992年

 

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