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1970~80年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.167】Roland W-30/W-30SC ~何でもありの「ミュージック・ワークステーション」[1989年]

2019/03/24

 

 

 今回ご紹介するキーボードは、1989年にローランドから発売された「W-30」および「W-30SC」というミュージック・ワークステーションです。W-30SCには標準でSCSI(スカジー)ポートが装備されていて、大容量ストレージ(CD-ROMプレイヤー、HDD等)と接続可能になるというものでした。SCSIはパソコンの世界でも長年使われましたよね。

 

Roland W-30
 
 
 
 でその “ミュージック・ワークステーションW-30”とは何者か? というと、「サンプラー」+「16トラックのシーケンサー」+「(サンプルベースの)シンセサイザー」+「61鍵キーボード」という、何でもありのサンプリング・ワークステーションといった趣きです。
 
 
 

概要

 W-30の「ワークステーション」のタイトルは、シンセシス、サンプリング、MIDIシーケンシング機能を一台に内蔵していることに由来しています。本体には3.5'FDDを備え、サンプリングデータの保存や、市販のサウンド・ディスクなどのロードも行えます。各セクションごとに見ていきましょう。

 

Roland W-30/W-30SC(advertisement)
W-30、W-30SC/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用

 
 
 

音源およびシンセシス・セクション

 同社のサンプラー・S-550を受け継ぐ128種類のプリセット・トーンを本体に内蔵。このようにウェーブ・データが内蔵されている点は、同社のサンプラー・「Sシリーズ」と大きく異なる点ですね。
 
 
 TVF、TVA、LFOといったパラメーターも用意されており、シンセサイザーに匹敵する積極的な音作りも可能です。ただし編集したデータは電源を切ると消えてしまうので、ディスクへのセーブが必要です。
 
 
 

サンプラー・セクション

 サンプリング周波数は30kHz/15kHzの2モードとなっていて、サンプリング・タイムは30kHz時で7.2秒(×2バンク)、15kHz時で14.4秒(×2バンク)となっています。サンプリング・ビット数は12ビットとなっていますが、内部D/Aでは16ビットで処理されます。サンプリング性能はほぼ同社のS-330クラスといった感じでしょうか。
 
 
 なおW-30では、膨大にサポートされたS-550/S-330/S-50用のサウンド・ライブラリーデータを読み込むことができます。
 
 
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 「Roland S-50 ~「サンプリング未来型」と銘打たれた86年製ローランド…
 「Roland S-550 ~S-50とアッパーコンパチな2Uサンプラー[1987年]
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シーケンサー・セクション

 同社のシーケンサー専用機・MC-500MKII相当の機能を搭載。1トラックに最大16チャンネルの演奏データを記録するフレーズ・トラックを16基搭載しています。
 
 
 また同社の「SYSシリーズ」といった(S-50、S-550、S-330用の)シーケンス・ソフトで作ったデータを、シーケンサーのソング・データとしてW-30に取り込んで使用することも可能です。

 

 

 

SCSIについて

 W-30SCとSCSI(スカジー)経由でCD-ROMプレイヤーと接続すれば、S-550用などのCD-ROMから好みのサウンド・データを高速でロードすることが可能でした。またHDDとつなげることで、同様に大量のサウンド・データやソング・データが高速に読み書きできるというメリットがありました。
 
 
 ただし、当時はまだSCSI対応の外付けストレージ・デバイスがあまり普及しておらず、どれもまだ高価な時代でしたね。。その頃の外付けHDDの容量は数十メガバイト程度でしたが、庶民にとっては垂涎の的といった感じだったんですよ(笑)
 
 
 なおW-30に専用のSCSIキット・「KW30」(25,000円)を後付けすると、W-30SC相当にすることができました。「SCSIはとりあえず(普及の)様子を見てから…」という人でも、まずはW-30を買っておいて後から増設するという選択もできたということですね。
 
 
 

まとめ的な

 本機は、マスターキーボード、サンプラー、シーケンサーとしてのスペックを1台にまとめ上げちゃったという、まさにその時代の「夢のオールインワン・マシン」といった雰囲気です。各セクションも当時としては完成度が高く、ある程度の知識・経験がないとその価値を発揮することはできなかったでしょう。本格指向の人向けの一台、といった感じですね。
 
 
 なお本機ではシステム・ディスクを起動しないと何も動かない(音が出ない)設計になっており、前述した “プリセット・トーン”も、電源投入後にいきなり音を出すことはできません。この辺りは、やはりサンプラーがベースとなっているという感じでしょうか。。
 
 

仕様
■鍵盤:61鍵(ベロシティ/アフタータッチ対応)
■最大同時発音数:16音(8パート・マルチ・ティンバー)
■音源:DI方式(差分補間方式)
■本体メモリー:ウェーブ・データ 512Kワード(ROM)、512Kワード(RAM)
■信号処理:エクスパンデッド16bit
■サンプラー部:
 サンプリング周波数:30kHz/15kHz
 サンプリング・タイム:7.2秒×2バンク(30kHz時)、14.4秒×2バンク(15kHz時)
■シーケンサー部:
 16フレーズ・トラック(256トラック相当)+1リズム・トラック
 最大同時入出力音数:各128(各トラック合計)
 ソング・データ長:最大9,998小節
 本体メモリー:最大20ソング、約15,000音
■外形寸法:1014(W)×106(H)×301(D)mm
■重量:9.8kg
■発売当時の価格:268,000円(W-30)、285,000円(W-30SC)
■発売年:1989年

 

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