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1990年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.110】Roland DJ-70 ~キーボード付きサンプラー for DJ [1992年]

2018/11/25

 

 

 今回ご紹介するキーボードは、ローランドの「DJ-70」です。発売されたのは1992年。数多く発売されてきたローランドのキーボードにおいて、本機は1~2位を争うくらいの迷機といっていいかもしれません。詳細を見てみますよ。

 

Roland DJ-70
 
 
 

商品コンセプト

 「“DJ” サンプリング・ワークステーション」という、同社において、全く新しいコンセプトの楽器としてクラブ・シーン向けに開発されました。ひときわ目を引くのが、本体右側に鎮座している大きな「スクラッチ・ダイアル」という円盤。これによりサンプル・サウンドを動的に変化させることができるというものでした。
 
 
 また、サンプリング・サウンドのロード中にも演奏が行える「ロード・ホワイル・プレイング機能」なども装備。クラブDJが、他者と差別化を図りたい時の “プラスアルファ”・ギアとして導入することを想定して作られたのかもしれません。
 
 
 

他のローランド製サンプラーとの互換性について

 同社のサンプラー「S-770」「S-750」のサウンド・データをそのまま読み込むことができます。また「S-550」「S-330」「W-30」のデータはコンバート・ロード機能により読み込むことができるなど、同社の豊富な「Sシリーズ」のサウンド・ライブラリーを十分に活用できます。
 
 
 関連記事:
 「Roland S-550 ~S-50とアッパーコンパチな2Uサンプラー[1987年]
 「Roland W-30/W-30SC ~何でもありの「ミュージック・ワークステーション」
 
 
 

価格設定が!

 本機の特筆すべき部分がその「価格」でしょう。定価で360,000円(税抜)でした。前年の1991年に発売された同社のシンセサイザー「JD-800」が300,000円(税抜)だったので、それより6万円も高かったことになります。JD-800は “スライダーとボタンのお化け”みたいな作りであり、そこそこの大きさ・重さでもあったことからそれなりにコストもかかったのでしょう。
 
 
 一方DJ-70は37鍵仕様であり、重量も当時としては軽量な8.6kg。デザインもどことなくおもちゃっぽい。。目にした時の第一印象としては、どことなく “軽い”印象は否めませんね。ネーミングにしても「“JD”の次に出すクラブ向けギアだから “DJ”でいんじゃね?」的な投げやり感が見て取れます(個人的意見です)

 

 

 

ならば肝心のサンプリング機能は?

 となると、その一見強気な価格設定は「中身で勝負しているはず」とも推測できます。人間だって外見が全てじゃないですもんね! 以下、主要スペックの一部を見てみましょう。

DJ-70
■メモリー:標準2MバイトRAM
■音源部:ステレオ16ビット、サンプリング・レイト:44.1/22.05kHz
■サンプリング・タイム:最大22.5秒(44.1kHzモノラル)

 
 うーん、いまいちピンとこないかもしれません。。そこで上記の数字を読み解くにあたり、前年(1991年)に同社から発売されたサンプラー「S-750」(定価:390,000円。鍵盤なしモデル)のスペックと比較してみましょう。
 

Roland S-750

Roland S-750

 

S-750
■メモリー:標準2MバイトRAM(最大18Mバイトまで拡張可能)
■音源部:ステレオ16ビット、サンプリング・レイト:48/44.1/22.05kHz
■サンプリング・タイム:最大22.5秒(44.1kHzモノラル)

 
 この部分に関しては、多少の違いはあれど実はほとんど同じなんですね! なおS-750ではSCSI端子を標準装備しており、大容量外部記憶装置(→外付けHDD)での拡張性を視野に入れて作られています。またRGB端子も備えており、家庭用TVにつなげてマウスで細かく操作できるといった操作性の高さも備えています。この辺りはさすが専用機といった感じでしょう。
 
 
 

改めて「DJ-70」を考える

 S-750の定価39万円を考えると、本機の価格設定はあながち常軌を逸したものではなかったのかもしれません。とはいえ1年後の1993年には、ほぼ同等スペックの「S-760」というサンプラーが約半額の198,000円で出ているため(※1)、ちょうど(パーツの)値下がりが始まる前の時期に発売されてしまったというタイミングの悪さも感じられます。
 
 
 そして、いまいち洗練されていない本体デザイン、拡張性の弱さ、DJユースとしても使いどころが難しい内容(結構場所も取る)、、ということも重なり、結果「値段の高さ」だけが目立ってしまった感はありますね。。
 
 
 
 関連記事:「Roland S-760 ~1Uサイズに凝縮された90年代の高性能サンプラー[1993年]
 
 
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※1 …S-760はのちに148,000円にプライスダウンされている。

仕様
■鍵盤:37鍵(ベロシティ対応)
■コントローラー:スクラッチ・ダイヤル、プレイ・パッド×8
■最大同時発音数:24音
■音源部:ステレオ16ビット、サンプリング・レイト:44.1/22.05kHz
■サンプリング・タイム:最大22.5秒(44.1kHzモノラル)
■メモリー:2MバイトRAMM
■RPSシーケンサー:トラック数 8
■外形寸法:780(W)×126(H)×330(D)mm
■重量:8.6kg
■発売当時の価格:360,000円
■発売年:1992年

 

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