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ENSONIQ 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.66】ENSONIQ Mirage (DSK-8) ~「幻想」ではない、黎明期サンプラーのロー・コスト・モデル[1985年]

2018/11/25

 

 

 今回ご紹介する機材は、ENSONIQのサンプラー「Mirage(ミラージュ)DSK-8」です。発売は1985年で、同じくサンプラーであるAKAI S612よりもわずかに早く日本で発売されました。サンプラーの歴史をひも解くと必ず登場するこの「Mirage」。どのようなものだったのかちょっと見てみましょう。
 

ENSONIQ Mirage
 

 関連記事:「AKAI S612 ~アカイ・サンプラー「S」の元祖[1985年]
 
 
 

発売当時の背景(サンプラー)

 話はちょっとさかのぼります。オーストラリアのフェアライト社から、サンプリング・マシン「Fairlight CMI」が発表されたのが1979年(発売は翌80年)。発売当時の国内価格は約1,200万円と、とんでもなく高価な代物でした。その後、E-muがEmulatorという低価格のサンプラーをリリースしましたがそれでも数百万円したというから、一般の音楽愛好家にとってはまだまだ高嶺の花でした。
 
 
 そんな中、本機は1985年2月の米ウエスタンNAMMショウで出品されます。その後アメリカでは1,600ドル(当時の日本円換算で約40万円)で発売され、同年日本でも販売されるようになりました。
 
 
 なお日本で最初に販売を始めたのはイシバシ楽器です。発売時の初値は定かではありませんが(おおよそ50~100万円)、その後日本ハモンド(株)がエンソニックの日本総代理店となり、「定価398,000円」で国産化Mirageが本格的に発売に至ったという感じです。
 
 
 
 関連記事(Emulator):
 「E-mu Emulator ~普及型サンプリング・マシン(でも数百万円)[1981年頃]
 「E-mu Emulator II ~80年代中期を代表する世界的サンプラー[1984年]
 「E-mu Emulator III(EIII) ~イミュレーター・シリーズの3代目[1988年頃]
 「E-mu EIIIxp ~EmulatorIIIをラック化したハイコスパ・モデル[1993年頃]
 
 
 

 外観は?

 フロントパネルは至ってシンプルですね。左からボリューム・スライダー、次にLED(7セグメント・2桁)ディスプレイを持つコントロール・スイッチ類。その右隣りがテンキー。他にも、コマンドのエンターキー(またはシーケンスのスタートキー)、キャンセルキー(またはシーケンスのストップキー)などが配置されていました。
 
 
 また、現在のシンセサイザーにも見られる、ピッチベンド・ホイールおよびモジュレーション・ホイールも装備しています。その下には3.5インチFDDも備えていました(→フロッピーディスクに音色保存が可能)。
 

ENSONIQ Mirage(advertisement)
ENSONIQ Mirage/日本ハモンド(株) 雑誌広告より画像引用

 
 
 

サンプリング機能は?

 任意の音源を、マイクやライン(オーディオ・イン)にてサンプリング可能です。また波形のループや、アンプ、フィルターのエンベロープを変えることによってサンプリング音を変化させることも可能でした。8音ポリフォニックであり、シーケンサーも内蔵しています。
 
 
 8ビット、最高サンプリング・レートは30kHz(33kHzの説もあり)で、約2秒のサンプリングが可能でした(※ただしレートを下げればもっと長くサンプリングすることもできた)。
 
 
 なおサンプルのループについては、サンプルのスタート・ポイントとエンド・ポイントをしてエンターキーを押すだけです。一つのサンプル・データについて、その時間的長さを256分割(00~FF)し、その中の任意のポイントを選ぶようになっています。
 
 
 鍵盤は任意の位置でスプリットが可能であり、ディスクにメモリーした別々の音色を振り分けることができます。

 

 

 

補足

 本機には、Apple IIeに対応する「MASOS(メーゾス)」というソフト(3.5インチディスクで供給)も別売で用意されていました。これはさらに本格的にサンプリングを目指す人のためのソフトであり、さらに別売のエディティング・システム(Mirage Visual Editing System)を組み合わせることで、TVディスプレイ上にサンプリング音の波形を映し出したり、シンセサイザー部分のパラメーターを画面に映し出したりすることも可能でした。
 
 
 Mirage本体に加え、それらオプションも総額すると100万円弱したそうですが、超高額なフェアライトCMIと近い操作感が得られるというのは、当時としてはかなりお買い得だったのかもしれません。
 
 
 なおMirageシリーズは、鍵盤部を取り除いた「Mirage DMS-8」(1985~86年)、さらに価格を下げ実質的な初代機の後継機となった「Mirage DSK-1」(1986年。ただし日本ではおそらく未発売)があります。
 

ENSONIQ Mirage DSK-1
 Mirage DSK-1。赤ラインが入っているのがポイント。
 
 
 

個人的つぶやき的な

 ロー・コスト・サンプラーの嚆矢となった記念碑的な一台だと思われます。80年代後半の(第1次)サンプラー・ブームの火付け役といった感じでしょうか。。
 
 
 一般人からすればふつうに、楽器に40万円は高いだろというイメージですが、「Fairlight CMIの1,200万円、Emulotor IIの300万円」を見せられたあとでは、「なぁんてお買い得なんでしょう!」と感じざるを得なかったかもしれません(笑)
 
 
 ちなみに90年代末頃、僕は場末の古道具屋みたいな店で一度だけ現物を目にしたことがあります。当然音は出ず、価格もおもちゃみたいな値札が付いていたと記憶しています。
 
 
 
 関連記事:「ENSONIQ Mirage DMS-8 ~ラックになったミラージュ[1985年]」 →DSK-8のラック版

 

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